先生が去り、そこには俺だけが残った。
胸騒ぎがする。
周囲にいたはずのエージェント達は既に引き上げたようだ。
「はぁ・・・」
深々とため息を吐く。
終わったのだ。
追いかけられることももうない。
平和・・・とは言い切れないが、普段通りの生活が出来そうだ。
さあ、もう帰ろう・・・
俺は疲れ切った体を引きずるようにして屋敷に戻った。
屋敷の玄関をくぐり・・・
正面玄関前。
俺は足を止めた。
止めなければならなかった。
そこには・・・
秋葉が両手をワキワキと怪しげにさせて出迎えてくれた。
某大会に毎年出場しているグラサンの軍人を思わせる手つきだ。
―――俺、捕まる?
いや、投げられるっ!?
「―――耳が・・・ない」
気付いてくれたか・・・
「隠しているに違いませんよ〜」
琥珀さんがトンデモナイ事を言ってくれた。
キュッピーンッ!!
秋葉の目が光り、髪が赤くなり・・・うねり出す。
次いで琥珀さんの目が光る。
―――考えろ。翡翠がいない。って事は・・・
俺は思いきり左に跳んだ。
「ちっ!」
翡翠は右後方にいた。
「逃がしてしまいましたね〜」
―――三人で組んでやがる・・・
「俺にはもう妙な耳なんて付いてないぞ!」
「無ければ付けるまでです!!」
―――うっわ即答しやがった。
遠野家と本当に縁を切りたくなった瞬間だった。
「兄さん・・・逃げられるとでも?」
秋葉が構えながら距離を縮めてくる。
「志貴、避けなさいっ!」
どこからか声がした。
俺は七夜の血をフルに使い、右後方に跳んだ。
その瞬間・・・
「分身烈○拳!!」
秋葉に何かが撃ち当たる。
秋葉、KO
そして・・・
「デッ○リーレイヴ!!」
おいおい・・・魔術師じゃなかったんですか?
翡翠と琥珀の二人は逃げることも出来ずに瞬殺された。
「先生・・・・・・」
「何?」
さわやかな笑顔だった。
「いえ、先生と別れてからまだ一時間くらいしか経ってませんよ?」
「不服?」
笑顔の中に微かな殺意があった。
「滅相もありません」
逆らっても何の得もない。
あるのは絶対的な死、のみだ。
先生は三人を軽々と担ぎ、屋敷の中に入っていく。
俺はその後を黙って付いていくことしか出来なかった。