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すべては、一通の手紙から始まった。
「しんあいなる志貴へ
果たし状
あれを欲するなら某月某日、某所にて我と果し合いにて雌雄を決すべし。如かして後、我を討ち倒すことかないし暁には汝にあれの所有を成さしめん。但し、敗るること有らば、相応の覚悟あるべし。蛇足なるが、何人で来ようともいかなる手段を用いようとも当方は一向にかまわない、屍がただ増えるだけなのだから…
あなたのあおこより」
それに眼を通した志貴は…
あらん限りの仲間を集め、決戦に挑んだ。
もちろん決戦の舞台はあの日の草原…
志貴を中心に10人もの特殊能力者が集っていた。
まさに、女殺しの魔眼炸裂であり、青子の怒りはひそかに頂点に達していた。
もちろん志貴がそんなことに気づくはずもなく事態は悪化の一途をたどるのであるが…
「よく来たわね志貴。逃げ出すものと思っていたわ」
前と同じTシャツにジーンズ。
魔法使いといわれても普通ちょっとない感じ。
何も変わっていない、あのときのままの先生がそこに立って、いた。
「先生こそ、お変わりなく。それにしても周りが見えていないんですか」
「ブルー、あんまり舐めないほうがいいわよ。今が深夜、その上満月って分かってる?」
「魔術ならロアの知識をもつわたしがいますよ、800年の成果はすべてこの身に刻まれています」
「あなたたちは関係有りません!兄さんを守るのは私です」
「あは~、わたしはただの応援ですよ~」
「ご主人様を守るのもメイドの務めです」
「にゃ~☆(マスター大好きです♪)」
「と、遠野君。わたしがんばるね」
「アトラスの錬金術師は勝算なき戦いはしません」
「わ、わたしおそばだいすきです」(秋葉の後ろに逃げ込む)
「ししょー、勝負です」
志貴は一歩前に出ると誠実な瞳で交渉を始めた。
「どうです、先生。穏便にことを収めるためあれを渡してください。これだけの面子をそろえるのに僕もかなりの犠牲を払いました。アルクにはごはん1ヶ月、先輩にはメシアン2回、秋葉にはデート3回、琥珀さんには膝枕4時間、翡翠にはゆびちゅぱ5本、レンには6回(ポッ)、弓塚さんには学食7食、シオンには人気投票8票、晶ちゃんにはやおい同人原稿9ページ、都古ちゃんには地獄タックル10回…もう、もういいでしょう。十分でしょう。あれをわたしてください」
「ふふふっ、甘いのは相変わらずね、志貴。でも後ろのあなたたちこそ私のことが分かってないようね。その程度の報酬で命を無駄にするなんて」
志貴は飽くことなく交渉を続ける。
「いくら先生でもこのメンバー相手ならそう簡単に行かないでしょう、下がってください」
「まあ、そうね。でもそれはまともに殺りあったばあい。そこの錬金術師や埋葬機関なら知ってるのでしょう。わたしは世界に5人しかいない魔法使いだって」
「あら、この状況を何とかできるそんな都合のいい魔法が?わたしの知る魔術系統によるとそんなつごうのいい魔法はありえません。協会の資料によるとあなたの魔法は破壊に関することらしいですが1対多数で使えますか」
「アトラスの蓄えた知識ではその可能性は否定されます」
「魔道元帥ゼルレッチのじいやはそんな魔法はないっていってたもん」
シエルもシオンもアルクも口々に否定の言葉を発する。
しかしいずれの表情も硬く緊張は否定できない。
なぜなら目の前に立つのは最凶の名をほしいままにする「マジックガンナー」こと「ミスブルー」なのだから。
「はんぱな知識で魔法を語らないほうがいいわよ。ありえないことを起こすことを魔法というのよ」
「先生。あれを渡して引いてください」
引き締まった表情で交渉を続けようと食下がる志貴。
しかし青子は無情にも寂しげに微笑み、
「出来ない相談ね。勝てる戦いから逃げるほどバカじゃないわよ」
「そんな」
「もういいでしょう、そんな情けない顔してはじめましょう」
「その意見には賛成よ、ブルー!!!、食らえ、空想具現化!!!」
アルクの声が響くと同時に先生のいた場所は文字どうり「消えた」
「うそ、空想具現化を外した。身体能力は人間のはずよ」
動揺し、きょろきょろと見失った青子を探すアルク。
「どこ狙ってるの、あーぱー。上です、上空なら逃げ場は有りません。秋葉さん!」
「いわれなくても!あなたなどに指図される覚えはありません」
シエルが黒鍵を飛ばす、秋葉が狙いを定め、シオンはエーテルライトを…撃たない。
「いけません、95%の確率で罠です」
「わたしが罠にかかるものですか。そこね、視界に捕え…」
突如として吹き飛ばされ気絶する秋葉。
「はっ、みえる。志貴さんがランドセル…(ぱたん)」
晶ちゃんも余波を受け倒れる。
シエルはかろうじてシオンの忠告に反応し難を逃れる。
「なっ、今のは爆発の空想具現化!まさかブルーも」
ようやく立て直したアルクが状況の最把握のため思考を口にする。
「それはありえません、空想具現化は真祖のポテンシャルでもってはじめて可能な現象。アトラスの名にかけていかに魔法使いといえども不可能」
「なにのんきにおどろいてるんですか、このあーぱー。戦闘員はわたしたちしかいないんです。寝ぼけてないで下さい」
青子はすうっとシエルの後ろをとると手刀を振り下ろしつつ、
「そうそう、肉体派は2人だけなのよ。がんばらないとねえ…ってこの子達もいたわね」
ぴたりと手刀をとめるとすばやく飛びのき体勢を立て直す青子。
「あーん外しちゃった。ごめんね、遠野君。でもほら、このひと美味しそう」
おしい、弓塚さんついに青子のTシャツの脇を掠めた。
青子は立て直しのためバックステップを行うが今度は都古ちゃんが詰める。逃さない。
「チャンス、はあっ、せんしっぽ」
「おっと、危ない、でも隙だらけよ。教えたでしょう。その技は後ろで待たれると弱いって、はいぃ」
きゃうん、都古ちゃんダウン。しかし腰を入れた打撃のため一時的に足が止まる青子。
それを逃すほど百戦錬磨のシエルも処刑姫のアルクも甘くない!!
「チャンス!!シエル、ここでかたをつけるわよ、いっけえ空想具現化!!」
「言われなくても、食らえ第7聖典(インド仕様)」
ついでに割烹着の悪魔も甘くない。
「あは~、わたしの持ってるリモコンのボタンをぽちっとな」
横に走り抜けていく赤い疾風。
タッチの差でいた場所が吹き飛んでいく。
「あなたたちそれで捕えられるつもり?おそいおそい」
青子が攻撃をかわしきって構えなおしたそのとき、何と青子の真上からシオンが襲い掛かる。
「その意見には同感です。でも、ここにかわすのは予測済みです。エーテライト!!
さあ、これであなたの思考はすべて私の予測範囲…
なっ、こ、これはなんという…うそ、でも、
サスペンダー、首輪、半ズボン、涙目、小指…
あ、ああっ6番緊急停止3番、2番…」
「」の知識を垣間見たシオン戦線離脱。ヤバげに痙攣を始める。
「今だ、いかに先生といえど踏みしめる大地が死んでいれば動けないはず」
沈黙を保ち気配を殺し一瞬に賭けていた志貴は、大地に七夜を突き立てて会心の笑みを浮かべる。
「手ごたえありです、先生」
しかし青子は動じる様子もなく
「ならば隣の大地を略奪し私の大地とするまで、猛れ私の赤き命!!」
先生の赤き髪はそれ自体が生き物のようになびき、奪う。
しかしあくまで華麗に。
「あは~、何ですか。わたしの足元さんが変ですよ。動けません~」
「にゃ~(琥珀の頭の上に避難なの)」
ふたたび動きの止まった青子へとシエルは黒鍵の乱射。
同時に左右よりアルク、弓塚が一気に距離を詰める。
「はああっ、黒鍵16連射ぁ~」
懐へと飛び込んだアルクも必殺の切り裂きで勝負に出る。
「もらった、この距離では私のものよ。引き裂いてあげる」
この期に及んでなお、青子は微笑む。微笑みささやく、
「それはどうかしら。でろ、箱の魔物!」
そう、誰もが忘れていた青子の鞄が開くと黒い影絵が踊り出る。
しかし影絵の前には翡翠が立ちはだかり必殺の暗黒翡翠拳で戦闘をはじめる。
「いかせません。はああっ」
どうやら初めて予測が狂ったらしく、同様を見せる青子。
「なっ、こら志貴。あのメイドは反則じゃないの?
って、ちょっとは遠慮しなさいよ。こっちは生身のか弱い乙女よ」
もちろんアルクも弓塚も遊んでなどいない。
ここぞとばかりに猛ラッシュをかけるが、
「ブルー、志貴のために死になさい」
「遠野君の頼みだからね。えへっ、終わったらお詫びに死徒にしてあげるね」
「うそっ、鉄甲作用付きの黒鍵を受け止めて武器にしている。
しかも「あの」あーぱーと弓塚さんを手玉ですって?」
吸血姫2人と拾った黒鍵で渡り合う青子。
おっと、たまに檻髪発動。
しかしその脇では暗黒翡翠拳がついに影絵の魔物を仕留めていた。
「魔物を、調教です。さあ、魔物よおいきなさい」
ノールックでその気配を察するとすかさず
「させるかあ!はいいっ、震脚!!!!」
大地を揺らすことにより一瞬の間を味方につけた青子。
シエルの放った黒鍵の林に移動し鉄甲作用をこめて投擲をはじめる。
「魔物が、消滅です」
「ああん、一張羅なのに。あう、あう。いたいよ。せっかくの出番だったのに~」
さっちん、黒鍵で地面にスカートを縫い付けられる。
恥じらいの有る限り脱出不能。
「くっ、よけるので精一杯だ。なんて攻撃だ」
志貴が必死でかわすかたわら、
アルクエイドは投げつけられる黒鍵を無造作に手で跳ね除けて立っている。
「ふん、ボケたのブルー。そんなもの効きはしないわ」
「そうそう、あーぱーの後ろは安全です」
「あーずるい、当ると痛いんだから。インド死なないんだから前にでなさいよ」
「なんですって、そっちこそ満月の夜は不死身でしょう。魔法使いの一人や二人ちゃっちゃとやっちゃってくれやがりなさいよ」
「にゃんだと~、でかしりカレー」
「やる気ですか、私のフリッカーはかわせませんよ」
喧嘩を始めリタイア。もはや青子は眼中にない様子である。
青子は投擲を止めると志貴の向かって突進し当身を入れる。
すかさずー
ー志貴のー
ー右手をー
ー取るとー
翡翠の口に放り込む。
「ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぱ」
翡翠放心。
志貴戦闘可能なるも翡翠が離れないため機動力絶無。
事実上の敗北。
志貴を上から見下ろし、あのときのやさしい笑みをうかべつつ、
「どう、これまででしょう。降伏なさい」
しゅんとしおれる志貴。そこには絶倫超人の面影はまるでない。
「…はい、でもしかし先生、あれだけは、あれだけは返してください。いや、破棄してください」
「そうはいかないわ♪8年前に書いてくれたこの覚書、まだ有効よ♪」
そういって、志貴の前に突き出したのは1枚の紙。クレヨンをつかい幼い字でこう書いてあった。
「ぼくは、おおきくなったらせんせいとけっこんして「あおさき しき」になりたいです。せんせいがこまっていたらかならずたすけます。やめるときも、すこやかなときも、しがぼくたちをわかつまでぼくはじぶんのちからすべてで、せんせいをまもります。だってせんせいがぼくのすべてで、せんせいのいないじんせいはかんがえられないからです。せかいじゅうのだれよりあいしています。
ーとおのしきー」
つまりは、そういうこと。
「さあ、果たし状に書いたとおり、相応の覚悟をもらうわ。
この婚姻届にサインなさい、志貴。
あら、イヤだって言うの志貴。しょうがないわね。
エーテライト!!
ほーら、あおさき、し、きっと。よし、これでいいわ。
それにしてもエーテライトって便利ね♪
首輪要らずって感じかしら♪
あら、あらあら、志貴も…ふーん、なーんだ。
そうならそうともっと早く言いなさい。
こんな回りくどいことしなくったって♪
さあ、志貴の部屋に行くわよ♪」
「えぐ、えぐ、ぼく汚れちゃった、えぐ、えぐ」