七夜くんの報告書を読んでみた。

ネロを倒した。と、書かれた次の行からネロが精神的に追い詰められ、色々残念な状態であったことが書かれていた。

それは20行にわたって書かれていたけど、

どう残念だったのか。

結果どうだったのかは一切触れられていなかった。

多分、きっと触れてはいけないことなんだと思う。

それは最後の一行に籠められていたから。

ネロは倒した。以降決してアレについて触れてはならない。

───七夜くんにここまで書かせるネロさん・・・本当に何をやらかしたんだろう。

しかもその部分だけ蛍光マーカーでアンダーラインを引いてるし・・・

途轍もなく気になるけど、その疑問は絶対に聞かないでおこうと心に決めた。

 

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

「・・・・俺は死ぬかも知れない」

登校して早々有彦がドシリアスな表情でそう言ってきた。

「「また何かとんでもない事をしでかしたんでしょ?」」

気がついたら弓塚さんと同時にそう突っ込んでいた。

「トンデモナイ所に出会してしまったんだよ・・・それを見た以上、俺は消されるのかも知れない」

有彦がそこまで言うからには本当にロクでもないもののようだ。

弓塚さんも僕を見て「これの処理、しても良い?」って、え?

「遠野くんの部屋をのぞいて着替えを目撃したの?だから殺されると?」

え?そうなの!?

「違う!昨日公園で前に弓塚も遭ったことのあるあの変なおっさんに出会したんだよ!あの体つきや存在感がそこらの組員なんてレベルじゃなかったんだよ!」

え?

あれ?

なんだろう・・・凄く開けてはいけない蓋に手をかけているような・・・

「開けるなよ!?絶対に開けるなよ!?」って言いながらその蓋を開けようとしている小柄なオッサンがいるような・・・

「で?取引現場でも見たの?」

弓塚さんは四割増しの冷たい視線を有彦に向けながら続きを話すよう促している。

「それ以上は」

「大丈夫!遠野くんの事はみんなで守るから!この変態の処理は任せて!」

いや、そういう問題じゃなくて・・・しかも有彦のノゾキは確定されてるんだ・・・

「いや、そのおっさんは俺を見るなり「そこのニンゲン。年齢は」と聞いてきたんだ」

鳥肌が立ってきたよ?ちょっと保健室に行きたいなぁ・・・

さりげなく席を立とうとする僕の肩を弓塚さんがそっと上から押さえてる。

あの、立てないんですけど?

アレですか?

虫歯の治療の祭に「痛かったら右手を挙げてくださいね」って言いながら痛いから右手を挙げようとしたら「はーい我慢してくださいね〜」って右手を挙げられないように上から抑えるって都市伝説の・・・

「───で、俺はそのおっさんに猫耳スク水ニーソのすばらしさを・・・」

話が続いてる!?しかも途中聞いてなかったから良く分からないけど凄く鳥肌が立ってる!?

キイチャイケナイ。キイチャイケナイ!

ナニカが僕の中で最大警鐘を鳴らしてる!

だから僕は心を無にして有彦の呪いの言葉をスルーしていく。

「そこでそのおっさんは言ったんだ・・・私がそれを身につければ萌えるのか?・・・と!」

あ、何か違う方向にベクトルが・・・

「そこで俺は逃げたい一心で言ったんだ。激萌えッスと!」

『「お前が犯人か!!」』

「「「!?」」」

一瞬、男女の声がしたんだけど・・・二人とも聞いたことがあるような・・・って七夜くんの声じゃなかった!?

弓塚さんも有彦も驚いて辺りを見回してる。

「遠野!おまっ、顔色悪いぞ!?」

「ちょっとロクでもない事聞いたせいで気分が・・・」

「ロクでもないって・・・確かにロクでもないが・・・」

「つまり何も知らないおじさんに猫耳スク水ニーソを薦め、ほぼ確実に殺られるって事でしょ?」

僕の台詞に有彦は険しい顔のまま頷く。

「それは乾くんの自業自得だって事でしょ?わたし達には関係ないから安心したよ」

僕、多分それに関係しています。

想像しないようにしよう。想像したら吐く可能性が高い。

弓塚さんに開放されたので僕は保健室へと向かった。

 

 

「イマココ」

「?どうしたの?志貴」

「志貴。羊羹でもどうだ?生憎アイスはないが・・・一口分しか残っていないが、食べるか?」

突然ですが、今は午後2時で、アルクェイドさんの居るマンションに来ています。

保健室に行くとシエルさんが心底疲れた表情で薬箱から胃薬を撮っている姿を目撃してそっと保健室の扉を閉めて教室に戻ったり。

教室に戻ったら有彦の机が本人ごと無くなっていたり、弓塚さんが凄いイイ笑顔だったり、

担任の顔色がもの凄く悪かったりと、まあ、比較的日常に近かったけど、四時間目に突然校内放送が流れた。

『本日午後より校内緊急点検及び消毒を行います』

───と、言う事で午前中の授業を終えてアルクェイドさんの居るマンションに来たわけだけど・・・

ちょっとシマッタと思っていたりする。

アルクェイドさんの部屋に入ると個には式さんが居た。

無表情でアイスを食べているシーンを見てちょっと帰りたくなった。

七夜くんがネロさんを倒したことを式さんに聞かれたらほぼ百パーセント怒られるんだろうなぁ・・・と。

そんな事が頭をよぎったから・・・ではなく、もの凄くギスギスした空気だったから。

式さんは無表情でアイスを食べているけど、アルクェイドさんが何か不審な行動をとったら容赦なく斬るつもりなのが分かるし、アルクェイドさんも式さんが何かしてきたらすぐに行動できるように警戒している。

その場に僕が入ってきて・・・

「イマココ」という状態である。

僕が入ってきたことを認識した途端にギスギスした空気が霧散した。

それは演技でそうなったとかではなく、二人揃ってそれが当たり前と認識しているんだと理解した。

さて、式さん達に何を言われるか分からないけど、七夜くんに変わって報告しますか。

僕は軽く深呼吸をしてアルクェイドさんへと告げた。

「昨夜、七夜くんがネロを倒しました」

僕の台詞にアルクェイドさんと式さんの動きが止まった。

二人とももの凄く驚いたような顔をしてるし。

やっぱり七夜くんに直接言ってもらった方が良かったかも・・・

「志貴!怪我はないか!?くっ、七夜が無茶をするとは・・・」

「え?え?」

「志貴!混沌でいやらしい事されたりしていないわよね!?トラウマになるようなことされてない!?」

「っ!?志貴!?」

「え!?いや、ネロさんって僕怖がってたし・・・混沌の獣は僕の味方してたし」

「「・・・あぁ、志貴だし」」

何だろうこの二人。さっきまでとまったく違うどころか息ぴったりだよ。

「・・・お前、良いヤツだな」

「貴女こそ、志貴に対する想いは本物ね」

「当たり前だ。志貴と同じ響きの名と志貴とお揃いの眼はオレの自慢だ」

「良いなぁ・・・」

あの、報告・・・まだちゃんとしてないんですけど?

僕が何を言いたいのかアルクェイドさんが察知したのか、アルクェイドさんは僕の方を向くと、

「志貴が無事で元気なら良いの。確かに七夜がネロを倒したって聞いてビックリしたけど、それ以上に無理して倒したんじゃないか心配で仕方なかったのよ?」

「そうだぞ。資料を見る限りではオレでもあまり相手をしたくないヤツだったんだぞ?」

式さんにそこまで言わせるレベルだったんだ・・・あ、でも。

「翡翠ちゃんと琥珀さんは連続して撃退してました」

「「・・・・・・は?」」

あ、二人とも固まった。

「昨日の夕方、ネロさんとはじめにエンカウントした場所は家の前なんです。その時に翡翠ちゃんと琥珀さんがフルボッコにして弱らせたんですけど、逃げられてしまって・・・夜、近くの公園にいたネロさんを七夜くんとシエルさんが連携して滅したとのことです」

「ネロを短時間で弱らせることができるなんて・・・前にも聞いたけど、何その最終兵器」

翡翠ちゃん。琥珀さん・・・二人とも真祖のお姫様から最終兵器扱いされてますよ・・・