ドアを開けると、奥のソファに座っていた女の人が僕の方を見た。
「あら?貴女は・・・?」
僅かに首を傾げ、僕を見詰めている女性はどことなく─────
「えっと、秋葉・・・さん?」
呼び捨てというのも何だか妙な感じだったからついさん付けしてしまったけど・・・
「私は遠野秋葉ですが・・・・・兄さんのお知り合いですか?」
あ、何だか思いっきりすれ違ったっぽい。
PANIC
「秋葉さま、この方が志貴さまですよ」
琥珀さんが僕の横に立ってそう援護してくれた。
「は?なに世迷い言を言っているの?兄さんは男です。薬はあれほど止めるように言ったのにまた怪しげな実験でもしているの?」
凄い言われようですよ、琥珀さん・・・・
困ったように苦笑する琥珀さんの姿が───
「ぎゃぶっ!?」
琥珀さんが勢い良く前に吹き飛んだ。
原因は琥珀さんを後ろからヤクザキックで蹴り飛ばし、僕の横に立った翡翠だった。
「秋葉さま。今の愚姉の科白は世迷い言ではありません・・・この方は志貴さまです」
「ちょっと・・・・翡翠まで何を言い出すの」
うん。琥珀さんを蹴り飛ばしたのはスルーなんだ。
琥珀さんを見ると、
「ふふふ・・・・翡翠ちゃん、今日は優しいんですね」
──────この人、マゾヒストかも。
恍惚の表情で倒れている琥珀さんはとても怖かった。
「・・・やっぱり話がちゃんと行っていなかったみたいだから、僕有間に戻るね」
これ以上話がこじれると収拾が着かなくなりそうだから僕は下がる事にした。
「では、わたしもお供いたします。志貴さまがいなければこの屋敷にいる理由もございません。失礼します」
「え?待ちなさい!どういう事なの!?」
「翡翠ちゃん!?おねーちゃんを置いていくの!?」
「三度は言いません。この方は志貴さまです」
うわ、琥珀さんの台詞を無視してる。
「そんな・・・・兄さんは兄さんで・・・・男・・・・・ぁ」
あ、何か思いだしたっぽい。
「じゃあ、アレは琥珀の世迷い言ではなく・・・・」
「うん。事故のショックで女の子になってるみたいなんだ」
橙子さんによるといくつかの要因が重なった結果らしいけど、わざわざ説明する必要はないかな。
「まさか・・・・共有がこんなところで・・・」
「・・・・・ゴメンね。こんな僕がいたら迷惑だから」
「っ、そんな・・・・そんなことありません!」
秋葉が僕の方へ向かった歩いてきた。
「申し訳ありません兄さん・・・兄さんは兄さんです。きっと、治る方法はあるはずです」
「うん・・・」
秋葉が僕をギュッと抱きしめた。
うあ、ちょっと、恥ずかしいな・・・
「あの、秋葉・・・確かに体は女の子だけど、男なんだから流石に恥ずかしいよ・・・」
そう言って秋葉の抱擁から逃げ・・・・秋葉?
「・・・・・・・・・」
なーんか、この状態、何度か経験が・・・・秋葉の目が潤んで───いや、かなり目が怪しくなってきましたけど?
「あのー、秋葉?」
三、四歩下がって秋葉を見る。
「兄さん・・・・可愛すぎます」
「はぁ!?」
秋葉が壊れた!?
「もう一回!兄さん!もう一度抱擁を!抱いたり抱かれたり揉んだり揉まれたり!」
秋葉が怖いよぉ・・・・
「あは〜、秋葉さまは揉まれる胸なんてありませんけどね〜」
「!!!!」
うわ、琥珀さんが何言ったか聞こえなかったけど、秋葉の表情からとんでもないこと言ったんだ・・・
目標が僕から琥珀さんに変わっているし。
「志貴さま。姉さんが気を引いている間に・・・」
翡翠ちゃんが小声で僕を誘導する。
既に脱出路は確保されている。
「じゃ、僕は部屋に行くね」
僕はそう言いながら急いで応接室を出た。
「え!?しまった!!これは琥珀の罠!?」
「あは〜全てはこのための布石ですよ〜」
「嘘おっしゃい!」
「はい。嘘です」
秋葉にかなり蹴られていたのに────琥珀さん、余裕あるなぁ・・・
ちょっと呆れながらも僕は翡翠ちゃんの後を追って二階へと上がった。