「わたしの妹なんだからもっとおしとやかに!」

「あの・・・・わたし」

「士麻は女の子」

「・・・・はい」

何も言えずに俯くわたし。

思い切り恥ずかしい。

まさかわたしがこんなモノを着る時が来るなんて。

ゴスロリとか言うやつ・・・・・

「士麻にとっても似合ってるのよ」

「嬉しくない。嬉しくない。ぜんっっっぜん嬉しくない」

某DJ風に言ってみたけど分からなかったようでスルーされてしまった。

 

 

疾く、副うために−1

 

 

「はぁ・・・」

「そんなに落ち込まないの。気に入らなかった?」

「あんな格好はもうしたくない・・・」

「だ・め。士麻は可愛い妹だもん」

イリヤがニッコリと笑い、駄目押ししてきた。

「うううっっっ」

立場的に逆らう事は出来ない。

心のどこかではまだ男で、でも体は女で・・・・

「はぁ・・・」

またため息を吐いた。

「そんなに嫌だった?」

イリヤの表情が曇る。

「────わたしの心はまだちょっと男だから」

体が元に戻る事はない。

今更男に戻れない。

オヤジに助けられたあの時からわたしは女なのだ。

藤村の人達も周囲もわたしの扱いに困るだろう。

それは分かっている。

でも、やっぱり心のどこかに自分が女である事を認めたくない自分がいる。

「わたしはね、士麻が女の子で良かったと思ってるのよ?」

「ぇっ・・・?」

突然のイリヤの台詞にビックリした。

「もし士麻が男の子だったら殺しちゃっていたかもしれないもの」

そう言って苦笑するイリヤ。

イリヤは聖杯戦争の時、わたしを殺そうとはしなかった。

ただ、わたしが飛び出したせいでバーサーカーに右腕を吹き飛ばされた。

あの時、イリヤは凄く動揺してその場から逃げ出してしまった。

───まあ、その後で勝手にくっついたから良いんだけど。

「士麻と初めて闘うことになったとき、わたしは凛を殺して士麻に戦いから手を引くように言うつもりだったの」

恐ろしい事を聞いた気がした。

「セイバーと凛を殺せば士麻は誰も頼る人がいなくなる。そうすれば士麻は家に逃げ込んで戦争が終わるまで大人しくしてくれると思っていたの。もし大人しくしなかったとしても、士麻を捕まえておけばいいし」

「・・・・・・・」

「でも、今はそうしなくて良かったと思っているの」

「イリヤ・・・」

「だって士麻はわたしの事ちゃんと見てくれるし、わたしを許してくれたから」

イリヤは腕を吹き飛ばした事で思い詰めていた。

あの件の後に一人で商店街まで来てわたしに謝った。

泣きそうな顔で。

あんな顔で謝られたら許さない方が悪者だと思う。

傷は勝手に治ったし、飛び出してきたわたしが悪いし・・・・

「イリヤが謝る事なんて無かったのに謝られたからビックリしたな・・・」

「確かに飛び出してきた士麻が悪いんだけど・・・大事な士麻がキズモノになったら・・・」

「キズモノって・・・・」

「あ、そっか!」

突然イリヤが大声を出した。

「え?なに?」

驚くわたしにイリヤはニンマリと笑い、

「士麻をキズモノにした責任、とらないと」

「え?あの、イリヤ・・・?」

「わたし、一生士麻の面倒見てあげるね」

「え!?あの、イリヤ?・・・・もしもーし?」

「うん。その方が士麻もわたしも嬉しい良いプランね」

「イリヤが暴走した!?」

嫌な予感が止まらない。

わたしはこの場から逃げようとした。が、

「衛宮様。どちらに行かれるのですか?」

「イリヤが逃がすなって」

入り口には門番が立っていた。

そして後ろからイリヤの気配が近付いてきて────

「逃がさないんだから」

イリヤに抱き付かれた。