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バッッ
一瞬で志貴だと分かった式は両手を広げて受け止めようとした。
が、
トンッ
志貴は壁を蹴って二人のいる場所から僅かに離れた所に着地した。
「式さんも幹也さんもどうしたんですか?」
なんて事無いような顔で聞いてくる志貴に二人は顔を見合わせた。
「えっと・・・・・・・・・君に会いに来たんだけど」
「そうなんですか?」
「しーちゃんは脱走でもする気だったのか?」
「まさかですよ。妹がまだ学内にいますし、勝手に帰ったら怒られそうですから」
志貴は苦笑し、
「それより・・・どうして僕がここにいるって分かったんですか?」
ニッコリと
天使の笑みを浮かべていた志貴だったが、その気配は僅かに怒気が混じっていることを二人はすぐに理解した。
「いや、待とうよ志貴くん!ここに来た理由はちゃんとあるんだ!」
幹也が慌てて弁明する。
「ふぅん・・・」
しかし志貴は疑わしそうな目で幹也をチロリと睨む。
そこでようやくここに来た理由を思いだした式が言葉を継ぎ足す。
「本当だ。しーちゃんに情報を持ってきた」
「情報?」
式の台詞に志貴はキョトンとした顔をして首を傾げる。
「───所長達が何か良からぬ事を企んでいるんだよ。君がこの学校にいると知ってね」
その台詞を聞いた志貴は僅かに思案し、
「・・・・・・・・・来るなら早めに来て欲しいな」
志貴はそう呟き表情を曇らせる。
「何か、あったのかい?」
幹也の問いに志貴は小さく頷く。
「だって、七夜君のこととか知っていてサポートしてくれそうなのはお姉ちゃんくらいだもん」
「「あ・・・・」」
そう言えばと二人は顔を見合わせる。
二人してそのことをすっかり忘れていたのだ。
「式。所長はそのことを頭に入れてあんな事を言っていたと思う?」
「そんなわけないだろ」
「報告は入れておいた方が良いかな」
「・・・しーちゃんが困っているんだ。すぐにでも手を打たないと」
「・・・どうして二人とも内緒話するかなぁ・・・」
少し離れてコソコソと話し合いをする二人に志貴は僅かに顔を顰めた。
内緒話をしている二人をそのままに学内に戻ろうとしていた志貴だったが、
サァッッ
「────え?」
風が吹き、またあの声が聞こえた。
その声は微かで、短い言葉だった。
しかしその声を聞いた志貴の表情に焦りが見えた。
「式さん、幹也さん。僕戻るね!」
慌てて塀を跳び越え、学内へと戻っていった。
「ああ・・・・しーちゃん・・・・・」
残念そうな声をあげ、志貴の越えた塀を見続ける式。
「・・・・もしかして、出番ってこれだけ?」
携帯電話片手にそう呟く幹也。
────その光景は、どこからどう見ても怪しかった。