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そこは木々の生い茂る森の中、僅かに開けた場所。

草木は新緑に染まり、いよいよ夏色に染まらんとしていた。

 

 

 

七夜月君-(マイナス)2話

 

 

 

そこに二人の少年がいた。

「翡翠ちゃんが鬼だからってここまで逃げなくても───あうっ」

少年は木の根に躓き大きくバランスを崩す。

「っと、大丈夫か?志貴」

転びそうなところをもう一人の少年が素早く抱き留め、何とか体勢を立て直す。

「うん・・・ありがとう、四季兄ちゃん」

「お、おう・・・」

四季と呼ばれた少年は志貴から身を離し、ジッと志貴を見る。

「どうしたの?」

「いや、お前プニプニだな」

そう言いながら四季は志貴の頬をつつく。

「やぁっ、四季兄ちゃん、くすぐったいよぉ・・・」

つつかれているのがくすぐったいらしく、志貴は身をよじって逃げる。

「もう、四季兄ちゃんったら。あまり酷いと指咬んじゃうからね」

志貴はプウッとふくれる。

「仕方ないだろ。癖になりそうな手触りなんだから」

一向に止める気配のない四季に志貴は宣言通りに動いた。

カプッ

頬に四季の指が当たる前に首を振り、その指をくわえた。

「なっ・・・」

四季は慌てて指を引こうとしたが、志貴がしっかりとくわえて離さない。

「もうひない?」

志貴は四季の指をくわえたまま喋る志貴に四季がビクビクと反応をする。

「しない!しないから離せ~」

慌てる四季を見て志貴はニッコリと笑い指を解放した。

「まったく・・・本当に噛むなんて」

クッキリと歯形のついた指を見ながら四季は悪態を吐く。が、

ゴクリ・・・

今なら、間接キス・・・

そう呟いた瞬間だった。

ザザッッ

風と共に木々が揺れ、

「フンッッ!!」

ズドムッッ

何かが疾風迅雷の速さで四季の頬をかすめ地面に突き刺さった。

空中に舞った土埃が消え、そこには一人の少女が立っていた。

「翡翠、ちゃん?」

「・・・今さわったから次は四季の鬼ね。志貴ちゃん、行こっ!」

ギロリと四季を睨んだ後、ニッコリと笑いながら志貴の手を取り走り出す。

「え?あ、うん」

志貴は何が何だか分からないまま翡翠に引っ張られてその場から去っていった。

「・・・・・・」

四季は呆然と立ち尽くしていたが、やがて立ち直り噛まれた指を見る。

その指にはベッタリと土や異臭を放つモノが付着していた。

「ふ、ふふふふ・・・・・・・俺と志貴の仲を邪魔しようと言うのか、翡翠・・・」

不気味な笑みを浮かべ、

「よーし、それならお兄ちゃん。志貴を後ろから抱きしめて捕まえちゃうぞ~♪」

何かが程良く抜けた四季はそう宣言し、二人の後を追った。

───その後、四季と翡翠の『鬼ごっこ』と言う名の死闘は日が暮れるまで続いた。