「なっっ・・・」
お兄さんがショックを隠しきれない顔で僕を見る。
「───君は今、とても軽率なことをした」
「?」
「まだ私達の名前すら聞いていないのに親を決めたのだ・・・」
「あ、そう言えば・・・」
言われて気付いた。
すっごく間抜けかも知れない。
「アレ?・・・ああ、名乗ってなかったか」
お兄さんを一瞬睨んだおじさんが僕に微笑んだ。
「僕はね、衛宮切嗣って言うんだ」
「エミヤ・・・キリツグ」
何となくかっこいい名前だと思った。
もし僕が衛宮と名乗ったら『衛宮士郎』になるんだ・・・
「そして私の名は「イヤ、お前の名はどうでも良いだろ」───何故?!」
お兄さんが名乗ろうとして切嗣さんに止められた。
「当たり前じゃないか。お前が引き取っても孤児院。いつか見知らぬ者に引き取られて別の姓を名乗ることになる。
そもそもお前の姓を聞いても彼には何の得にもならない」
「ぐっっ・・・妙な所だけは頭の働きが良い・・・・・・」
お兄さんはギリッと歯を食いしばって切嗣さんを睨む。
少し怖い感じがした。
僕は何とかしたくってお兄さんに声をかけた。
「えっと・・・お兄さんのお名前は?」
「私の名は言峰、言峰綺礼だ」
「コトミネ・・・キレイ」
「立派に名前負けしているな!」
グッドマークを出す切嗣さん。
「頼むから少し黙っていてくれ!」
言峰さんは半泣きだった。
───何だか、言峰さんと切嗣さんは仲がいいのか悪いのか分からなくなってきた。
結局僕は意見を変えずに切嗣さんの所に行くことにした。
言峰さんはもの凄く落ち込んでいたけど、急に何か思いだしたのか「その手があった!」とか言って病室を飛び出した。
それから数秒と経たずに言峰さんの悲鳴が聞こえたのは気のせいだと思う。
切嗣さんは手続きが一杯あるからって言ってすぐに帰った。
少し狭く感じていた部屋が広くなった。
僕以外誰もいない部屋。
「僕・・・もうすぐ衛宮士郎になるんだ・・・」
口にしてみたけど、いまいち実感がわかなかった。
苗字が変わっても僕は替わらない。
呼ばれ方が変わるだけなんだ。
でも、
僕は変わりたいと思った。
僕を助けてくれた切嗣さんみたいに人を助ける事が出来るほど強くなりたい。
沢山の人が目の前で死んでいった。
僕は何も出来ずにただ側でオロオロしているだけしかできなかった。
無力だった。
火に囲まれて泣くことしかできなかった自分はとても情けなかった。
だから、
だから僕は強くなりたい。
人を助けることが出来る力が欲しい。
弱い僕を捨てて新しい僕になりたかった。
きっと切嗣さんなら・・・
僕はそんなことを考えながら天井を見ていた。