先生、ピンチです。
落ち着いてよく考えましたが、なんかスッゴク悪化してます。
どうしてですか?
先生も敵に回っているからですか?
「まったく、どうして逃げるのかなぁ・・・私を選んだら全て問題ないのよ?」
「兄さんを貴女なんかに渡すわけにはいきません!」
「そうよブルー、志貴はわたしのなんだから」
「そこの真祖!寝言は千年城で言ってください!遠野くんはわたしと全国行脚に行くって了承したんですから!」
「無理矢理言わせたのは無効だと思いますが・・・所詮眼鏡と尻しかポイントのない人は・・・」
「翡翠ちゃん!?」
────そのまま喧嘩でもして足を止めてくれたらいいんだけどな・・・っとぉ!?
アルクェイドの足止めを回避しながら逃げる。
「!?」
咄嗟に何かの気配を感じて横に跳び、逃亡ルートを変更。
「チッ・・・流石志貴です。私が隠れていることを察ししましたか」
シオン・・・酷いよ・・・
俺は泣きながら路地裏の道に入る。
この先は遮蔽物や障害物のない場所───大通りだ。出たら100%拙い。
彼女等が人目を気にすることはないだろうから・・・俺も通行人もヤバイ。
助けてくれる人なんているわけないけど、誰か助けて〜〜〜!!
「助けが欲しいか?」
「へ?」
何だか少しごっつい老紳士が少し先に立っていた。
「「げっ・・・全員ストップ!」」
先生とアルクェイドの声が後ろでした。
そして全員が止まった。
なんか後ろでギャーギャー言っているけど全員が全員警戒してそれ以上近付いてこない。
しかし・・・アルクェイドさん達はこの人のことを知っている?
俺が老紳士を見ると、
「少年よ。助かりたいか?」
老紳士は俺にもう一度問い掛けてきた。
「出来れば助かりたいです・・・・」
「ふむ。ならばここに署名捺印をしてもらおうか」
老紳士はそう言って羊皮紙を俺に差しだした。
えっと・・・・・
世界と契約を結ぶ代わりに、死後サーヴァントとして魂を────
「これって、悪魔との契約っぽいんですけど!?」
思わず突っ込んだ。
「ふむ、この状態で契約に突っ込みを入れるとはナイスだ!アルクェイド、ガンナー。この少年を少し借りるぞ」
老人はそう言って俺の肩をポンと叩き────
直後に世界が反転した。

 

昼下がり。
緩やかな時が流れている。
俺はのんびりと木陰で本を読んでいた。
今日は騒がしくない良い一日。
こんな日が続いたら僕の寿命も多少は延びるかも知れない。
秋葉も、翡翠も琥珀さんも居ない。
アルクェイドもシエル先輩も居ない。
シオンも、先生も・・・あ、でもレン達は俺のヒザの上で幸せそうに寝ている。
俺が読んでいる本は『この世界の概要』と言うタイトルの小冊子。
それ以外の所持品は七夜のナイフくらいだ。
見知らぬ爺さん・・・俺、まだ契約していないんだけど・・・どうしてこんな所に飛ばすかなぁ・・・
本を仕舞ってため息を一つ。
緑豊かな街道の端で俺はただボーっと空を見ていた。
勿論、手が空いた以上レン達を撫でるのは忘れない。
本当に、のんびりした──────
「!?」
何か気配を感じて横を見る。
そこにはゲル状の生物みたいなモノが蠢いていた。
「うわ・・・・・」
ファンタジー世界にいそうな化け物だ。
俺は慌ててレン達を抱き上げてそいつから離れた。
が、白レンはそれがお気に召さなかったようで・・・・
「人がせっかく気持ちよく寝ていたのに・・・邪魔、しないでよね」
いきなり人の姿になってそのゲル状の生物を氷の槍で刺し貫いた。
ゲル状の生物は地面に溶けるように消えて無くなった。
「あれ?・・・コイン?」
そしてその生物の居たところに数枚のコインが落ちていた。
「とりあえず拾っておこう・・・ありがとう、レン」
「べっ、別にわたしは眠っていたのを妨げられたから怒っているだけで・・・貴方を助けた訳じゃないんだから!」
「うん。でも助けてくれたことには代わらないからありがとう」
白レンの頭を撫でると、白レンは少し嬉しそうな顔をした。
「でも、ここってファンタジーの世界そのまんまだな・・・モンスターを倒したらお金みたいな物が手にはいるし・・・」
そう呟いた瞬間、レン達が街道の奥へと駆けだした。
「あ、あれ?」
「志貴はそこで本でも読んでいなさい。わたしとレンはちょっとお散歩に行ってくるから」
「あ、ああ・・・・」
俺は姿が見えなくなるまで見送り、またあの小冊子を読もうと木陰に移動した。

十数分後、二人とも戻ってきたけど・・・
「・・・・・・」
「勘違いしないで。邪魔な奴等を倒していたら手に入ったの。わたしはいらないからどうしても欲しいならあげるわ」
レンも白レンも大量のコインを持って帰ってきた。