「マズったわ・・・あのクソ爺が・・・」
蒼崎青子は膨大な資料の山を前に呻いていた。
「まさか真祖の姫のサポートに使うなんて・・・」
手にしていた資料をテーブルに叩き付け、苛立ちをぶつける。
「向こうには色々あるってのに・・・姉さんが出張ってこないとも限らない、埋葬機関の司教達が出てくる可能性もあるってのに・・・」
ダンダンダンッッ
叩き付けた本を殴りつける。
「私の志貴が毒牙にかかる〜〜〜〜!!」
青子の悲鳴に似た叫びが時計塔内に響いた。
つう゛ぁい?
「やあ、よく来たな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」
予約したホテルの部屋に入ったら先生のお姉さんがいた。
満面の笑みで僕を出迎えてくれた。
でも、
確か―――ここって僕の部屋、だよね?
考えてみる。
「あ、その仕草も可愛い」
「・・・可愛くないもん・・・」
お姉さんは何故か上機嫌だった。
あの時先生とやり合っていたときは怖かったのに・・・
でも、そう言えば僕には優しかったな・・・お菓子くれたし。
先生は『絶対に近付いたら駄目よ。食べられちゃうから』なんて言ってたけど・・・
えっと、えっと・・・僕はどうすれば良いんだろう・・・・・・
お姉さんはニコニコしながら僕の側に来る。
「志貴君、眼鏡の具合はどうだ?合わなくなったりしてはいないか?」
お姉さんはそう言って僕の頭を優しくなでた。
この眼鏡は元々お姉さんの眼鏡だったらしい。
でも、先生が僕にあげるために奪っちゃったんだっていっていた。
僕はお姉さんに眼鏡を返そうとしたけど、お姉さんは僕が使った方が良いって言ってくれた。
こんなに気遣ってくれるし・・・
うん、とても優しいお姉さんだ。
「あ、はい・・・先生がいつもメンテナンスしてくれるので大した問題はないです」
「そうか。なら体の具合はどうだ?」
「えっと、それはお姉さんが何とかしてくれたので落ち着いてます。具合が悪くなったときには向こうにいるおじいさんに何とかしてもらっていますから」
お姉さんの手が頭から頬に移動する。
「そうか。それを聞いて安心した」
お姉さんはにっこりと僕に微笑みかけて―――
チュッ
キスされた。
「にゃっ?!」
「志貴は可愛いな・・・あの外道が丸くなるのも頷ける」
そう言いながら僕を抱きしめる。
「あうぅぅ・・・・」
力が抜けてカクンと崩れる。
腰に力が入らない。
どうしてだろうとても、眠い。
「お姉さん・・・眠い」
「そうか。ならベッドに連れて行ってやろう」
お姉さんはニッコリと笑って僕を抱き上げてベッドに連れて行ってくれた。
僕はとっても眠くって
でも、お姉さんに申し訳なくって
だから
「お姉さんも一緒に・・・寝よ?」
きっと呂律が回ってなかったかも知れない。
でもお姉さんはキチンと理解してくれたみたいで、とっても嬉しそうな顔をしてくれた。
「その言葉を断る阿呆はいない」
お姉さんはよく分からないことを言って僕をベッドに寝かせてくれた。
そしてお姉さんもその横に体を滑り込ませてきた。
僕は朦朧とした意識の中、お姉ちゃんに抱きしめられてそのまま眠った。