学校の校門をくぐった瞬間に俺は門扉を掴み全力でターンし、隠れた。

やはり今日は厄日のようだ。

よりにもよって

何故、

何故二人が学校にいるんだ!?

───まだ気付かれていないから良いが・・・

「アレ?志貴の気配しなかった?」

「ええ。確かに・・・」

───逃げよう。

今捕まったら死ぬよりも哀れな目にあいそうDEATH。

俺は重心を低くして音を立てずにその場を脱出した。

もしもの保護策として門の方に念のために買ってあった一日限定100個のカレーパンを置き、『正義のシスターへの寄付です』と書いておいたから確実に逃げられる。

数秒後、シエル先輩とアルクェイドの喧嘩が門の方で始まったのを確認し、俺は再び逃走先を考えた。

 

血迷った秋葉達が街の封鎖をしかねない。

逃げるなら───

1.灯台下暗し家に戻ろう

2.有間の家に逃げ込もう

3.フラフラと逃げるかな?

4.周囲を見渡せる草原に

 

問題のありそうな選択肢しかないな・・・・・・

1はバッドエンド確定っぽい。

2は・・・迷惑を掛けたくない。

3は何れ捕まってしまうし目立ちたくないから却下

4は先生が待っていそうだ。

?!先生・・・・・・先生ならこうなった理由を知っているかも知れない

俺はあの草原に急いだ。

 

何とか遠野の追っ手を振り払い、草原に着いたが、

「いない・・・」

いるはずもない。

当たり前だ。

先生は忙しい人だ。

仕事のついでに偶然ここを訪れる何て事がそう易々とあるはずもない。

でも必死にここまで来たのに・・・・・・

先生・・・

俺は突然訪れた貧血でその場に座り込む。

そしてそのまま寝転がった。

あの時もこうして寝転がっていたっけ・・・

そうして先生は二度も同じ事を言い、俺を安心させてくれた。

「先生───」

俺は閉じていた瞳をゆっくりと開いた。

空は一面の空

大地は───

上体を起こし、辺りを見る。

「先───生?」

「残念。寝てなかったか」

先生は悪びれもせずそう言い、トランクを置く。

「来て、くれたんですね?」

「通りかかっただけよ」

先生は憮然とした態度で答える。

「でも・・・ありがとうございます」

「変よ?恰好は可愛いのに」

「そのことなんですが・・・」

「それをどうにかして欲しいって事?」

「ええ・・・出来ますか?」

「ここでは無理よ」

俺はその台詞にガックリと肩を落としたが、

「何処なら出来るんですか?」

僅かな期待を込めて先生に聞いた。

「そうね・・・ゆっくりと出来るところや個室が良いけど・・・・・・」

「───俺の部屋はどうです?」

「・・・構わない・・・けど大丈夫なの?さっきから周囲がピリピリしているのよ?」

───やはりバレていたか・・・

「構いませんよ。先生が治してくれるんでしたら」

俺はそう言って立ち上がった。

「それこそ面倒よ?───ここで治してあげる」

先生はそう言うと俺の頭に手を伸ばし、無造作にウサ耳を掴んだ。

──────痛い!!

痛みに耐えようとギュッと目を閉じたが・・・

痛みがない。何かかぶっていた物を先生が取ったような感覚がし、

「目を開けて。自分で確かめなさい」

先生が鏡を渡す。

鏡にうつる俺にはウサ耳が付いていなかった。

「ありがとう先生!!」

「礼を言われるほどのことはしてないのよ?」

「でも、うれしいから・・・」

「そう・・・さ、もう行かないと・・・これでも結構忙しいの」

先生はトランクに手を伸ばす。

「───先生、ありがとう。それと・・・お元気で」

「ええ。近いうちに遊びに来るから」

「え?」

瞬きをした瞬間、先生の姿はそこになかった。

何故か胸騒ぎがした。