───しまった。思い切り目立ってる。
冷静に考えればそうだった。
道を歩いているわけだから目立つのは当たり前だ。
人のいない大通りなんて無い・・・・・・
目立つ。それもかなり。
野郎がウサ耳という段階でかなり目立つ。
冷たい視線が痛い。
「ねぇ、あの子・・・」
「やだ、かなり可愛い・・・」
「お、おい見ろよ・・・」
「似合い過ぎな恰好だな・・・」
「何かの宣伝か?」
気のせいだ気のせいだ気のせいだ気のせいだ気のせいだ気のせいだ気のせいだと言ってくれぇぇぇぇっ
俺は半泣きになりながら乾家に駆け込んだ。
「──────で?その恰好は何だ?」
ボケ役の有彦にしては珍しく冷静なツッコミをする。
「俺も知らない。目が覚めたらこうなっていた」
そうとしか説明できない。
有彦は大げさな溜め息を吐き、俺を見る。
「っかし───似合いすぎるのもなぁ・・・・・・まぁ入れ」
一撃入れたいのをグッと堪え、中にはいる。
さぁ、一子さんに見つからないようにしないとな・・・
「おじゃましまーす・・・・・・」
靴を脱ぎかけた瞬間・・・・・・
「───有間」
発見された・・・・・・我ながらこんな人生要らないと思ってしまった一瞬であった。
くわえていた煙草をポトリと落とし、こちらに見入ってる。
──────何故だろう。危険な予感が・・・・・・
一子さんはもの凄いスピードで俺を掴み、抱きしめようとした。
俺は咄嗟に有彦の手を取り、一子さんに掴ませて乾家から逃げる。
家の中からはもの凄い打撃音と呻き声が聞こえた。
スマン。暫く盾になっていてくれ!!
そう祈りながら乾家から離脱する。
ドアが勢いよく開き、一子さんが出てきたが、俺は既に十分な距離を走っていた。
──────残すは裏路地、か・・・・・・
俺は一子さんを撒きながら裏路地へと向かった。