「あけましておめでとー!」

「・・・・・・・なぁアルク」

「なに?」

「そこ玄関違う」

無駄だと分かっていて言うことほど虚しいモノはない。

俺は心からそれを実感した。

 

 

 

 

 

年の初めの───

 

 

 

 

 

「いつも言わないのに今日に限ってそんなこと言うの?」

ムーっと小さく唸るアルクェイドに俺は苦笑する。

「ちゃんと玄関から入ってきたら挨拶するよ」

「ほんとに?」

「ああ。今日ぐらいは秋葉もちゃんと入れてくれると思うぞ」

「うん、分かった───じゃあちょっと着替えてからくるね」

アルクェイドは何か思いついたのか満面の笑みで去っていった。

「・・・今0時半ぐらいなんだよな」

眠気は覚めた。

さて、

「遠野くん、あけましておめでとうございます」

シエル先輩がアルクェイドと同じように窓から入ってきた。

「・・・先輩。先輩も玄関から入ってきて欲しいのですが・・・」

「え?アレはアルクェイドを家の中に入れないために言ったことじゃないのですか?」

驚くようにそう言う先輩に俺は少し呆れてしまった。

「違いますって・・・新年の挨拶くらい玄関から入ってきてやった方が良いと俺は思いますよ」

俺の台詞にシエル先輩は納得したように小さく頷くと何か良からぬ事を思ったのかニヤリと笑うと

「じゃあ少し準備をしてから伺いますね」

そう言って去っていった。

「・・・先輩。何だかアルクェイドに似てきてますよ」

俺はそう呟かずにはいられなかった。

 

 

こんな時間だが・・・まぁ、大晦日だから起きてくれているだろう。

俺はそのままの格好で応接間に降りた。

「新年おめでとうございます志貴様。今は応接間にはお入りにならない方が良いかと」

翡翠が玄関前に立っていた。

「新年おめでとう、翡翠・・・何かあったの?」

「今秋葉様がシオン様の着付けを行っております」

「琥珀さんは?」

「姉さんも応接間で弓塚様の着付けを行っております」

「うあ・・・じゃあ邪魔しないようにしないとね」

俺は頬を掻きながら部屋に戻ろうとした。

「あ、あの・・・今日はあのお二人は・・・」

「玄関から入ってくるように言っておいたから・・・でも何か着替えてくるとか言っていたからもう少ししたら来ると思う。ゴメンね、翡翠」

「いえ、こちらからお呼びしようと思っていたのですが・・・かしこまりました」

翡翠は一礼すると応接間に通じる扉の前に立つ。

「?」

「志貴様。準備が整い次第お呼びいたしますのでお部屋でおくつろぎください」

良く分からないが俺はその言葉に従うことにした。