ようやく姫のいる国にやって来れたが・・・問題は山積している。

問題が多すぎてどれから手を付けて良いのか分からないと言うのが現状だ。

情報が足りないのだ。

情報収集についてはヴァン=ヘムに依頼したのでもうじき判断材料が揃うだろう。

「さて―――」

魔道元帥・ゼルレッチは空港前に停められていたヴァン=ヘムの専用車に乗り込み目を閉じた。

 

 

 

 

 

空港内でかなり洒落にならない騒ぎがあったが、彼には関係のない話である。

その後泣きながらヴァン=ヘムが元の服に着替え直すように懇願してきたので仕方なく着替えたことも・・・まぁ些細なことだ。

「・・・・・・で、真祖の姫君の居場所は分かったのかね?」

ゼルレッチの問いに対して疲れ切った表情のヴァン=ヘムは書類を渡した。

「アルクェイド・ブリュンスタッドはその場所に潜伏している。関係者一覧も載せてある」説明するヴァン=ヘムを後目に書類を見ていたゼルレッチだったがある人物の写真を見て動きを止めた。

「こんな所に敵が・・・」

「?埋葬機関のことか?」

「否、戦士の写真があるのは何故だ・・・」

「戦士?」

ヴァン=ヘムは訝しげな顔をした。

「埋葬機関の者以外にそのような輩がいたか・・・?」

書類全てを記憶しているのか思い出すように眉間に人差し指を押し当て、黙り込む。

「―――写真は真祖の姫の関係者と思われる者達だけだったと思われるが・・・」

やはり思い当たる人物がなかったのだろう。僅かに険しい表情でゼルレッチを見る。

「この男だ」

そう言って差し出されたページを見て動きが止まった。

「―――この少年か?」

そこに記載されていたのは遠野志貴と呼ばれる男性についてだった。

記録については曖昧な点が多い。遠野家とあるが・・・

「彼は戦士だ」

「―――何故そう思う?」

「戦闘服を着、勲章をつけている」

「は?」

「知らんのか?この服は学ランという漢の戦闘服らしい。そしてこのボタンは独特の形があり、全て勲章らしい」

―――何処でそんな知識を得た?!

頭を抱えるヴァン=ヘムを無視し、ゼルレッチは拳を振り上げ力説する。

「独特の雰囲気を持っている。かなりの手練れと見た!」

「・・・・・・では、この人物のいる場所まで案内しよう・・・・・・」

いい加減頭痛薬もストックを切らせてしまったため、さっさと降ろしてしまおうと考えたヴァン=ヘムはそう提案したが・・・

「否、少し寄るところがある」

「何?」

キッパリと否定されたためか少々喧嘩腰のヴァン=ヘムだったが、次の台詞で精も根も尽き果てた。

「同じ戦闘服を着て戦いたい。この服を売っている店を探して貰いたい」

「・・・・・・・・・・・・分かった」

本気で日本に来た目的を忘れかけているヴァン=ヘムだった。