慌ただしい足音と共に扉が開かれた。

「た、大変です!!」

メレム・ソロモンは読んでいた本を閉じ、その入ってきた人物を見る。

「何か?」

息も絶え絶えのその男を見て僅かに顔をしかめる。

「・・・・・・死徒が・・・協会・・・の・・・・・・」

最後まで言葉を綴り出すことなくその人物は爆風によって吹き飛ばされた。

そして爆煙の中から真っ直ぐにメレムの前に立った人物はゼルレッチであった。

「メレム・ソロモンよ、話がある」

「おやおや、魔道元帥の貴方が教会に何かご用ですか?」

真剣な表情のゼルレッチとは対照的にメレムは緩慢な動作で立ち上がる。

ここが埋葬機関の本拠地であるという事がメレムを此処まで落ち着かせていた。

「聞きたいことがあってな」

「貴方がですか?・・・命と引き替えなら考えますが」

おだやかだった表情が一変して殺気のこもった眼圧をかけてきた。

「戦う気か?・・・ならば先日手に入れたこれを使わせて貰うぞ」

緊迫したその場に出てきたそれは・・・

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの、」

恐る恐るといった様子でメレムはゼルレッチに問いかける。

「何だ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それ・・・・・・」

やはり恐る恐るといった様子でゼルレッチの取り出した物を指さす。

「これか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

小刻みに何度も頷いた。

「これは先日協会の仲間から手に入れた魔法使い専用の武器だ」

ちなみにそれをゼルレッチにあげた人物は蒼崎青子だったりする。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それ、が?」

ゼルレッチが手にしているのは表現に困る物だった。

「その・・・・・・それの名は?」

「これか?マジカルステッキだ」

 

 

 

 

 

時が・・・・・・止まった。

 

 

 

 

 

小さい杖。ピンク色。どう見たってオモチャっぽい。

カードを集める女の子が使っていそうなその杖。

それを武器と真顔で言い放つ魔道元帥。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・騙されてません?」

「?何故だ?」

やはり本人は至って真面目。

―――駄目だ。色々な意味でこの人には勝てない・・・・・・

その姿でマジカルな詠唱をされた日には気が狂う。

そう判断したメレムは深く、深くため息を吐くと椅子に座り込んだ。

「――――――で、聞きたいこととは?」

出来るだけゼルレッチを見ないようにするのは防衛本能だ。

「真祖の姫・・・アルクェイド様のラブラブアタックについてだ」

思いっきり顔をしかめるメレム・ソロモン。

まさか魔道元帥がそんなことを口走るとは夢にも思わなかったのだろう。

完全に固まってしまった。

「ん?どうした?」

「・・・・・・その」

ラブラブアタックは事実なのか?」

「・・・・・・今現在、恋人がいるというのと二人でネロ・カオスを倒したという事実はあります」

「解せんな」

「は?」

「姫ならば苦もなくネロ程度なら倒せるはずだ」

「・・・・・・その、恋人とホテルに入った所をネロに襲撃されたという情報もあります」

「!!!」

驚きのあまりかマジカル☆ステッキを持ったまま目を見開き固まるゼルレッチ。

見た目からしてかなりイヤな構図である。

「ひ、」

「『ひ?』」

「姫ェェェェッッッッ!!!!」

その雄叫びに部屋が呼応するかのように震えたかと思うと、

「何処の馬の骨とも分からぬ男に体を許すなどそのようなことは万が一にもないとは思いますが何らかの手違いによってもしもそのような。いや、姫に限ってそんなイヤイヤそんなコトよりも姫が恋をするという事実に喜びと共に一抹の不安を感じつつその人物の抹殺、イヤイヤ、姫が恋するくらいの人物である以上、さぞや胸キュンな人物でありましょう!!だがしかし、それはこのわたくしめの仮定である以上、真実を確かめにこのゼルレッチただ今向かいますぞォォッッ!!」

ドッガラガッシャーン!!

何か高速詠唱っぽいようで無茶苦茶私的なことを口走りながら凄まじい破壊音と共にゼルレッチはどこかに跳び去っていった。

「は、はははははは・・・・・・・・・」

残されたメレムはチョッピリ壊れていた。