二十話/真祖

 

 

 

 

------------------------------------------------------------------------------------

 

「はあああああああ!」

ドゴン、と衝撃で地面が吹き飛ぶ

「チィッ・・・!」

黄金の男はその黄金の鎧の重量感を感じさせない動きでその衝撃を巻き起こした爪撃から逃れる

「吸血鬼。貴様、何者だ!?」

男の背後から無数の剣が現れる

「・・・・・・ふうん。士郎と同じような力・・・違うか、全部が真作ということは、大量の宝具を持ちえる者ね・・・」

だが、アルクェイドはその言葉を無視して自らの知識を搾り出す

「いえ、真作というのも何か違う・・・そうか、全部が全ての武器の原初なのね。ふん・・・なるほどね」

そして、結論に達した

「ほう、気付いたか、吸血鬼」

男が口の端をゆがめる

それは、相手が自分の正体を知り、驚愕するであろうという予想からのもの

しかし、違った

アルクェイドは、そこらの一介の吸血鬼でもなければ英霊でもない・・・・・・『真祖』なのだ

その力は絶大であり、世界にすら干渉する

そんな、アルクェイドがどうして過去の英雄を恐れようか

「ええ。全ての宝具を集めれる英雄・・・そんなのは、一人だけよ。人類最古の英雄にして王・・・英雄王と呼ばれる存在・・・・・ねぇ?そうでしょう。ギルガメッシュ!」

例え、それが彼の英雄王であったとしても

「・・・・・・いかにも、貴様が言うことに誤りは無い。我こそは英雄王ギルガメッシュ、人類最古の英雄にして王なり・・・・・・ふん、吸血鬼、我の正体を見抜いたこと、誉めてやろう。そして、分かったのなら死ぬがいい」

ギルガメッシュが、無謀にもアルクェイドを見下すように言う

そして、剣が降り注ぐ

「・・・ふん」

アルクェイドがその剣を己が爪で弾き、ギルガメッシュを睨みつける

「なんだ?吸血鬼・・・貴様、我にいまだ逆らおうなどというのか?」

「くだらない・・・」

ギルガメッシュにアルクェイドが零度の声で告げる

「なんだと?」

「何度でも言ってあげるわ・・・くだらない。過去の英雄風情が、現在ですら偉そうにしているなんて、くだらない・・・いえ、それどころか話にもならない愚かさよ」

アルクェイドのその言葉にギルガメッシュが怒りの形相をあらわにする

「吸血鬼、いい覚悟だ。そこまでいったのだ、我を楽しませてくれるのだろう?」

「いいわよ、ギルガメッシュ・・・不肖この身、現代に唯一在る真祖の王族がアルクェイド・ブリュンスタッド。あなたのお相手をつとめさせてもらうわ」

アルクェイドの瞳が金色に染まる

そして、降り注ぐ剣

その剣めがけて、強烈な光が奔った

剣が、砕け散る

「真祖、だと?それに、なんだ・・・これは?」

「ふふ、さぁ?なんでしょう?」

アルクェイドが手を掲げる

「ブルー程の破壊力は無いけど・・・それでも、かなりの破壊力は在るでしょうね」

ふたたび、アルクェイドの手から光が溢れた

ギルガメッシュが何かを感じて跳ぶ

そして、次の瞬間にはその空間を強大な魔力の塊が抉った

「さぁ、ギルガメッシュ、まだまだこれは前奏曲よ?これからが本番なんだから」

そしてアルクェイドが、その爪で戦いの幕を切り開いた

 

 

「それで?どうするのかしら、綺礼?」

「ふむ・・・」

居間に残った者たちが言峰を囲む

「どうしようも無い、のだろうな」

高低のない声で、そう白状する

「あら、意外と素直なのね?」

「ふ、そうでもない。ここにサーヴァントという存在がいなければ戦う事もいとわん」

凛に返事を返す言峰の瞳には、何の感情も宿っていない

「・・・ふん、前からずっと思ってたんだけど。あなた、ほんとうに気味が悪いわね」

「結構。なにもおまえにすかれようなどと思ったことは無い」

「へえ、こんな状態でも憎まれ口が叩けるってわけ?」

凛の魔術回路が輝きを放つ

「ふむ、私にはそのような自覚は無いのだがな」

「知らないわよ。ま、とりあえず私の気が済むまで撃たせてもらうわ」

その言峰の言葉を無視して凛が指先を言峰に向ける

「っと、なんだ?もう終わったのか?」

「・・・・・・すまん、凛。遅れた」

そして、青と赤の騎士が走ってきた

「遅いわよ、あんたたち」

凛が溜息を吐く

「せいぜい、死なないように頑張りなさい」

そして、気を直して言う

「ふむ・・・死なないように、か。なに、安心しろ・・・そんな必要はない」

そして、言峰の口が歪む

「さて、ご老体。いるのだろう?私を助けるというなら、特別な情報を教えよう」

「っ!?」

凛をはじめ、そこにいるものが言峰に攻撃をはなとうとする

「カカッ。よかろう」

そして、それは、凛達に飛び掛った蟲の群れによって妨害された

「これは、マキリ!?」

凛がその蟲をガンドで撃ち払う

「皆!これ毒蟲よ!」

凛の声でサーヴァント陣が普通の人間である者たちを守るために行動する

結果、言峰は包囲網から抜け出した

「感謝しよう、ご老体」

「なに、情報との交換じゃて、感謝などはいらぬよ」

カカッ、といつのまにか言峰の隣に現れた老人が哂う

「ふむ、では情報は後に」

そういって、言峰が消える

「マキリ、臓硯!」

そして、蟲を払った凛が老人を視界に収めて、呻くように呟く

「久しぶりじゃのう、遠坂の娘。しかし、最早用事もないのでな、さらばじゃ」

「待ちなさ・・・」

地面に沈もうとする臓硯を凛が制止しようとする

「やあ、ご老体。久しぶりだね・・・アンタがマキリか。は、二つのターゲットが同一人物とはね」

そして、臓硯の背後から、絶対零度の声が響いた

「お前が、マキリ臓硯か・・・」

同じように、凛の背後からも声が聞こえた

「士郎、志貴・・・」

凛が、自分の背後と像硯の背後にいる二人の名前を呼ぶ

「シロウっ、今まで何処にっ」

「すまん、セイバー。説教は後だ」

セイバーが士郎に叫ぼうとして、その声で止められる

その声には、あきらかな憎しみがあった

「意外だよ、臓硯。アンタみたいな蟲野郎はジメジメした穴倉から出てきてるなんてな」

「まったくだな。まあ・・・オレ達が迎えに行かなくてもよくなって僥倖さ」

志貴が言い、士郎も同意する

「・・・ふむ、穴倉に篭りきっていては身体が駄目になってしまうのでな。苗床を探していたところよ。漆黒の死神とやらに紅蓮の剣神とやら」

そんな二人をあざ笑いながら臓硯が言う

「・・・今まで、幾人もの最低な奴らを殺してきた・・・けど、アンタはそんなかでも特に最低だよ」

志貴の眼が蒼く輝く

「一つだけ、効いてやる。臓硯・・・あの子に、何をした?」

そして、士郎が尋ねる

その言葉に、凛が少しだけ反応する

「カカッ、流石じゃのう。気付いておったか・・・・・・あれには蟲を埋め込んだのじゃよ」

臓硯が答える

「・・・・・・その蟲を取り除け」

士郎が剣を握る

「不可能じゃ。蟲はすでにあれと一体化しておる」

臓硯が哂う

その言葉をきいて志貴が心の中で納得していた

自分が思ったとおりだったと

あの子と異物、蟲との点はほとんど一体化していた。下手にやればあの子まで死んでしまうし肉体との一体化ともなればどちらにしろ殺してしまう

「そうか・・・・・・なら貴様に最早用は無い。消えろ、屑が」

次の瞬間、臓硯の肉体を、赤と黒の閃光が切り裂いた

「カカッ、無駄と分かってこの身に当たるか・・・あれは主らによほど気に入られたようじゃのう」

唯一残った頭が言う

そして、それも切り裂かれる

「うるさいんだよ・・・蟲風情が」

「待っていろ、貴様は必ず殺してやる」

そして空気中に満ちていた殺気が薄れていった

 

 

凶刃が降る、降る、降る

しかし、アルクェイドはその凶刃の雨を避け、払い、砕きながらギルガメッシュに走る

「くらいなさいっ!」

そして、ギルガメッシュに向かったアルクェイドの爪が振り下ろされる

「くっ!」

ギルガメッシュはそれを寸のところで避け、後退する

「真祖!貴様ぁ・・・!」

「ふふっ、つまらないわね・・・貴方、本当に英雄王?これなら、全然志貴のほうが強いわ」

ギルガメッシュが憤怒の表情を浮かべる、と既にその目の前にはアルクェイドの黄金の瞳があった

「うぉおおおおおお!」

そして、振り下ろされるアルクェイドの爪を、背後から剣を飛ばして軌道をずらす

「ふん・・・」

しかし、それでもその爪がギルガメッシュの肩を黄金の鎧を破壊して切り裂く

そして、ギルガメッシュがすかさず放たれたアルクェイドの蹴りで吹き飛ぶ

「やっぱり、弱い」

見下すようにアルクェイドが告げる

「くそがぁ・・・!っ・・・!?・・・・・・・・・・まあ、いい」

いきなり、ギルガメッシュが飛ぶ

「真祖、覚えているがいい。貴様は我が殺してやる」

そして、そういって塀の向こうへと消える

「・・・・・・ふん、負け犬」

赤い瞳に戻ったアルクェイドがそうつぶやいて、志貴の方に走っていった

 

 

 

感想(後悔)

Q:・・・黄金つながりなんですね?

A:いいえ、なんとなくです。

そんなわけです・・・(ぇ

とりあえず、黄金の王様、蔵の中の宝具の真名開放できませんし、アルクェイドでも何とかなるかな?

とか考えた・・・・・・かもしれません。