十八話/圧倒

 

 

 

 

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「・・・これが、完全な士郎の・・・・・・固有結界」

呆然と、凛が呟く

その視線の先には紅蓮の丘を背に立つ一人の神がいた

「さて・・・悪いが、師匠は力の差を見せ付けろと言ってるみたいだからな・・・・・」

丘の剣がまるでお互いに共振しているかのように振動する

その振動が紅蓮の丘に響き渡る

まるで、無限の軍勢が王を称え、そして王の君臨に歓喜するかのように

「剣軍(レギオン)、前進(スタート)」

士郎が、血色の空に手を掲げ、指を鳴らす

と同時に丘の剣が全てひとりでに地面から抜ける

「制限(レギオン)、小隊(スモール)」

引き抜かれた内から、それぞれ襲撃組の一人一人にそれぞれ三本の剣がその切っ尖を向ける

「気をつけろ、上手く避けないと重症になるぞ」

士郎のその言葉を合図として、剣が打ち出された

それを、襲撃組はそれをそれぞれ避け、弾き、相殺して防ぐ

「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」

だが、いつのまにか襲撃組それぞれの周りを囲むようにしていた剣が小爆発をまきおこす

「装填(レギオン)」

その小爆発で地面に放り出された殆どの襲撃組の目の前に剣が突き刺さる、セイバーとアーチャーは小爆発で倒れなかったものの、爆発で舞い上がった土埃のせいで視覚を制限され、結局目の前に剣が突き刺さる

「ほら、どうした?」

だが、士郎はそれをあえて、爆破しなかった

「まったく・・・お前達はもう実践だったら何回死んでるんだろうな?」

その言葉に、襲撃組の者達は否定の言葉を返す事など出来ない

実際、そのとおりなのだから

「まあ、大体は力の差ってやつが分かったと思うけど・・・固有結界なんか使ってるからな・・・まあ言い訳が出来るかもしれないな」

そう士郎が挑発の言葉を放つ

「士郎、アンタねぇ・・・」

「マスター、貴方という人は」

「坊主、いい度胸だ・・・」

「図に乗るな、未熟者が」

そして、いい具合に青筋を浮ばせる四人

「ふん、まあ・・・だから、普通にやってやる、俺の魔術ではなく、技でな」

そういって、紅蓮の丘が消え去る

再び現れる、暗い地下室

「投影(トレース)、開始(オン)」

そして、士郎の手の中に現れる、2メートル程の長さの両刃剣

その刀身は、仄かに紅くかがやいている

「まあ、これでいいだろう」

そう呟いて、その剣を構える士郎

「さて、じゃあかかってこい・・・・・・まあ、俺もこれ一本で戦うからな、お前達にも十二分に勝機があるぞ」

その言葉を士郎が放った瞬間・・・無数の影が士郎に攻撃を繰り出す

 

 

「先生・・・あれって、拙くないですか?」

「・・・まあ、士郎も手加減ちゃんとしてるし、大丈夫じゃない?」

「そうですかねぇ・・・」

「まあ、確かにあれは拙いかもね」

「やっぱ、そうですよね」

「だって、あれって・・・」

「ええ、破壊に関してはきっと全ての剣の中でもトップクラスですよ」

「なんたってあれ・・・燃え盛(レーヴァ)―――」

「少しは静かに見ていろ」

「そうですよ、七夜君」

「だよ〜、志貴」

青子が何かを言おうとして、橙子に遮られる、そしてそれに同意するシエルとアルクェイド

「わかってるわよ」

「うぃ」

志貴は軽く、いっぽうで少しむっとした顔つきで青子が答えた

 

 

「剣穿・滑龍」

襲撃組の攻撃は全て士郎にあたることは無かった、その行動自体がまるでなかったかのように

自分達の攻撃が弾かれ・・・いや、流された・・・・・・それに、襲撃組が驚愕の色を浮かべる

「幻歩」

そして、士郎が一瞬ブレたかと思うと、次の瞬間にはその姿は消えていた

「!」

そして、アーチャーの腹部に、鈍い痛みがはしった

アーチャーが自分の腹部を確認すると、そこを士郎が剣の柄で突いていた

「くっ・・・」

アーチャーがいつのまに手に持ったのか、白と黒の夫婦剣でそれを弾こうとする

しかし、その行動を起す前に、アーチャーの身体は士郎の蹴りによって中を飛翔していた

そして、その次の瞬間からつぎつぎと同じように襲撃組が吹き飛ばされていた

ちなみに凛とセイバーとキャスターは吹き飛ばされなかった

 

 

「流石士郎、男の鏡だね」

「偉いね、士郎ってば」

志貴とアルクェイドが口元を緩める

「橙子、あれは確か七夜の体術を基礎として士郎君が作った体術でしたっけ?」

「ああ、あれは私も一緒に考えた物がある・・・が今は使ってないな」

「姉貴が考えたのは物騒な物が多いからでしょ」

「貴様だって一個、生々しいやつを作ったじゃないか」

そんなシエルと橙子と青子の物騒な会話があったり

「あ〜参加したいなぁ」

「・・・・・・」

イリヤ、バーサーカーがどことなくつまらなそうにしてたりもした

 

 

悠然と士郎は立っている

「これが・・・衛宮 士郎、だと・・・?」

「そうだ、アーチャー・・・これが紅蓮の剣神と謳われた俺の力だ・・・まあ、紅蓮の剣神というのはあくまで人格が違うほうの剣神のことなんだがな」

アーチャーの声に、士郎が答える

「剣神ってのは、創り出すだけじゃない・・・全ての剣を完璧に扱う。これも出来て剣神っていうんだ」

くるくると士郎が片手で紅い剣を回す

「根源に繋がったとき、俺は全ての剣の情報と共に、どうすればそれを最大限の力まで引き出せるか、どう扱えば上手く敵を倒せるか、そんな情報も得た。だから俺はここまで戦える」

そういって、士郎が地面に剣を突き立てる

「さ、じゃあ・・・もう諦めるか?」

そして、襲撃組に尋ねた

「分かったろ?お前達じゃもう勝てないよ」

その声に、襲撃組の動きは無くなる

最早、逆らうという気にもなれないのだろう

「驕るなよ、衛宮 士郎」

だが、ただ一人、士郎に未だ敵意を向けるものがいた

それは、ほかでもないアーチャー

「投影(トレース)、開始(オン)」

アーチャーの手に、士郎と同じ剣が現れる

「っ・・・まさか、あのバカ!」

橙子が、何かに気付いたのか、焦りを見せる

「貴様ら!全員私の近くに来い!」

その叫びに、襲撃組のアーチャー以外の全員が反応する

「な、なんなのよ!?」

そして、凛が尋ねる

「あのバカ弓兵が!アレの真名は軽々しく唱えていいものなんかではないのだぞ!」

しかし、橙子はその声を無視して、地面にルーンを刻む

「志貴!貴様も力を貸せ!シエルは今は役に立たんから後ろにいろ!イリヤとバーサーカーもだ!」

「ぇえええええ!?俺のは防御には向いてませんよ!?」

「・・・はい」

「はぁい・・・」

「・・・・」

三人がとぼとぼと後ろに下がる

「じゃあタイミング合わせて相殺させろ!」

そして橙子は志貴に叫ぶ

「・・・まあ、出来なくはないですけど・・・あまり威力は減らせませんよ?」

「構わん!今はとにかくアレの威力を少しでもそぎ落とせ!」

「OKじゃあ私もやるかな」

すると青子が何かを小声で唱える、とその目の前に球体状の魔力の塊が現れる

そして

「燃え盛る(レーヴァン)・・・」

「燃え盛る(レーヴァン)・・・」

二人の剣が、紅き炎を纏う・・・その輝きは、まさに太陽の如く

「終焉(グローリー)・・・」

「スフィア・・・」

そしてそれと同時に青子と志貴が構える

「くるぞ!」

「災厄の剣(テイン)!」

「災厄の剣(テイン)!」

「起動(エンド)!」

「ブレイク!」

士郎とアーチャーが剣を振り、二人の間で炎がぶつかる

そしてぶつかった炎はそのまま四方に広がり、辺りを炎で包み込む

もちろん、炎は凛達の方にも奔ってくる

だが、それに志貴の魔術であろう黒き波がぶつかり、志貴の魔術は炎に飲み込まれる

さらに、そこに青子の魔術がぶつかる

それは、炎を殆ど掻き消したものの、焚き火のような大きさの炎が残る

「っ、全員、防御しろ!」

そして、橙子の加護のルーンをくらい、もはや握りこぶし程度の多きさとなったそれが、全員を襲った

「っ、このくらいなら!」

そう志貴が叫んで、黒き波が炎を飲み込む

「・・・・・・」

そして、吹き飛んだ凛達が呆然と炎が消えた場所を見つめる

「・・・あんな、小さいのにこんな威力・・・?」

「世界を燃やし尽くした炎だからな」

凛にそう言って、橙子は士郎とアーチャーが対峙していた場所を見る

「やはり、士郎か」

そう呟いて、服についた埃を払う

ほかの者たちも、立ち上がる

そして、士郎とアーチャーは

「・・・アンタは宝具の真名を開放しても、せいぜい七割程度しか力を発揮できないだろう?だけど、俺は十割全てを発揮できる・・・アンタじゃ俺には勝てないんだよ」

アーチャーの聖骸布の外套の所々が焼け落ち、アーチャー自身も気を失って倒れている

そして、殆どの外傷が見られない士郎が告げる

「アーチャー!」

凛がアーチャーに駆け寄る

「アンタ馬鹿!?なにやってるのよ!」

「スマンな、遠坂」

いつのまにか、凛の隣にたった士郎がすまなそうに言う

「あ、いや・・・どうみても今のはアーチャーが悪いみたいだし、いいのよ」

そういって、凛が宝石を取り出す

どうやら、それで魔力を補充しようとしているようだ

「・・・遠坂・・・おまえ、ラインあるだろ?」

「あ・・・」

そんなうっかりを、士郎が止めた

その後士郎が橙子達に説教されたり、アーチャーが気付いてやっぱり説教されたりして、その場は閉じた

 

 

 

 

感想(後悔)

まあ、これで早くも十八話というところまできてしまったんですが・・・あれ?聖杯戦争?

・・・・・・・・・大丈夫!まだたくさん伏線はあるから!(ぇ