十七話/模擬

 

 

 

 

 

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「まあ、とりあえず集まってもらったわけだが・・・」

居間には七宮邸に滞在している全員が集まっている

今口をを開いているのも、みんなを招集したのも橙子である

ちなみに面子の中には葛木教諭とキャスターの姿もある

寺には連絡しなくていいのか、と聞くと

「とっくに適当な暗示かけてきたわよ」

とキャスターが答えたのでそれは問題ない

だが、それ以上の問題があった

「・・・すまんな、せまかった」

橙子の言うとおり、居間は殆どいっぱいいっぱいだった

それもそうだろう・・・なんせ人数が・・・・・・まあ、各々頑張って数えてくれれば分かるだろう

「だが、まあすぐに此処は出て行くから我慢しろ」

ちなみに誰も口を出さないのは話の前に橙子の喋るなといわれたからである

「では本題だが・・・いきなりだがここに居る私と青子、そしてシエルとアルクェイドと志貴とイリヤ・・・ああ、あとバーサーカーだな、を除いた全員に・・・士郎と模擬戦闘を行ってもらう・・・もちろん殺す気でやれ」

「なんでですかっ!?」

おもわず士郎が叫ぶ、が青子に首をつかまれて居間から除外される・・・もちろんそのときの士郎の姿はお世辞にも綺麗とはいえない雑な人形の姿に見えたのはいうまでもない

「・・・」

無言で凛が手を上げる

「なんだ?」

それを無視するわけにもいかず、橙子が尋ねる

「士郎と模擬戦闘なんて・・・なんでよ?」

凛がもっともな疑問を口にする

「それは簡単だ・・・結論から言うと、貴様らが弱いからだ」

その部屋に居たサーヴァント及びマスター、志貴と葛木を除いてだが、全員が顔をしかめる

「なんですっ―――」

「うるさい、話を進めるぞ」

凛の言葉をさえぎって橙子が話を続ける

「とりあえずお前達には士郎の強さを判ってもらおうと思ってな・・・ああ、一言言っておくと・・・士郎はお前らが足元にも及ばないくらいに強いぞ?」

ニヤリ、と橙子が口の端をゆがめる

「・・・おもしろいわね、やってやろうじゃない」

言葉は凛が発した物だったが、それはこの場のほとんどの者の意見だった

「勝った場合には・・・そうだな、サーヴァント連中には戦争終了後にくれてやろうと思ったが、明後日には身体をくれてやろう・・・そしてマスター達にはそれぞれにあった魔具を新調してやる」

そんな火に油を注ぐような行為をして、橙子が立ち上がる

向かう場所はやはり、土蔵の地下

 

 

「あ・・・れ?なんか、さ・・・みんな、凄いやる気まんまんじゃないか?」

先に地下にいた士郎が冷や汗を流して志貴に尋ねる

その姿は赤い橙子特性の外套をまとっている、アーチャーのものとは多少の共通点があるぐらいだ

「・・・師匠の折檻だろうな」

志貴がそういって部屋の隅へと移動する

「・・・ああ・・・」

そういえば、剣神に呑み込まれたことでまだ説教も何も言われてなかったな、とか士郎が溜息をつく

「これは、説教の代わりか」

「兼、特訓だ」

そこに、橙子の意地の悪い声が届く

「・・・はい」

やる気まんまんの全員を見回して、士郎が大きく溜息をついた

 

 

「じゃあ始めろ」

そう告げたのは、それからすぐだった

はじめの陣形はマスター、サーヴァント組、まあ襲撃組といっておこう。

それが士郎を囲むように円形に配置されていた

そのなかでセイバーが申し訳なさそうな顔をしているのを士郎が見つけて「まあ、マスターとか抜きでいいぞ」と声をかけていた

もちろんそんな状態で始めたもんで士郎は避けるすべもない理不尽の塊のような攻撃の嵐を受ける・・・筈だった

「ああ、士郎・・・いいぞ、本気をだしてしまっても・・・まあ、ころさない程度にだがな」

だが、その一言で士郎の動きが格段に上がった

「流石、師匠・・・思い知らせろってことですか?」

士郎がそう呟くと同時に、攻撃の嵐がきた

魔術が、剣が、拳が士郎を襲う

だが、その未来はありえなかった

「すまんが、剣神のせいでいろいろと問題点があってな・・・少し、力加減を間違えるかもな」

それらの攻撃は全て、地面深くに突き刺さる剣の群れで受け止められていた

「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」

そして、それらが全て爆発を起した

といっても士郎が最低限威力を制限したため、爆風だけが起こるという異常な現象が起こった

襲撃組は全員吹き飛ばされ、地下の広大な空間に散らされる

投影(トレース)、重層(フラクタル)」

そして、散らされた全員の上に1つの短剣が現れる

呪刻(ファイブワークス)」

その赤き短剣は次の瞬間、五つに増えて標的を襲う

それに気付いた襲撃組が全員、それを避ける、が本来魔術以外に特性のないキャスターはそれを避けきることが出来ずに、一本がその腕を掠る

「・・・!?」

キャスターが驚愕する

「魔力が!?」

身のうちににあるはずの魔力が半分以上なくなっていた

「吸収に当たったのか、運がないやつだな・・・魔術師にとっては致命的だな」

橙子が補足する

「・・・冗談」

それを聞いた凛が呟く

「・・・とりあえず、長年のは駄目よね・・・」

そういって、凛があまり魔力の満ちていない安物の宝石を取り出す

「・・・・・・まあ、蒼崎の魔具が手に入るかもしれないし・・・いっか」

そういって、一気に四つの宝石を士郎に放った

「っと・・・」

だが士郎はそれを避けようともせずに一本の剣を投影した

「・・・え?」

凛の驚愕の声

おの剣は・・・バーサーカーの持つ巨大な斧剣だった

凛の宝石は士郎に届くことなく、斧剣を砕くだけだった

「っと」

凛の魔術を相殺した士郎がいつの間にかその手に握っていた大太刀、崩牙を片手で振るう

その背後にいた葛木のキャスターによって強化されていた拳が弾かれ、衝撃に耐え切れづに吹き飛ぶ

「ふん」

そして、切っ尖を返して、再び振るう

「ちっ」

そこには、葛木の陰に隠れていたアサシンの姿

アサシンがそれを避ける、がそれは敵わなかった

たしかに刃は避けきった

だが・・・

「崩牙」

真名の開放によって生まれた衝撃波に吹き飛ばされる

そして、その士郎の両側からセイバーと佐々木小次郎が迫る

セイバーも小次郎も手加減はしない、という眼をしている

「なるほど・・・剛と柔、ね」

士郎はそれを・・・高らかに跳んでかわした

それにより、セイバーと小次郎の剣が衝突し、火花を散らす、が2人ともすぐさま刃を離し、降りてくる士郎に向かって刃を再び振るう

それと同時に、キャスターが空中の士郎に向けて魔術を放つ

魔力の塊であるそれは士郎に向かい、しかし士郎が投げた崩牙によって相殺される

「っと」

そして士郎が着地地点で剣を構える二人の剣士を捕らえ、その手に白と黒の夫婦剣を握る

そして・・・それを、それぞれに向けて投げた

「「!?」」

まさかそこで投擲という手段をとると思っていなかった二人が目を見開く

そして、その二人の目の前で、夫婦剣は戦闘開始のときよりも少し大きな爆発を引き起こした

二人が逆方向に吹き飛ぶ

「はっ、それでこそ倒しがいがあるってモンだぜ!士郎」

が、その士郎の背後から青き槍兵が赤き槍を構えて向かってくる

「・・・さあ?それを言うのは、もう少し見てからにしたらどうだ?きっと倒しがいがあるなんていってられなくなるぞ?」

だが士郎はそんな軽口を叩いてランサーと同じ槍を投影する

そして、交わる二つの赤

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

雄叫びを上げながらランサーの槍が士郎を襲う、しかし士郎もそれらお全て防ぎきる

そして・・・・・・士郎が右に跳ぶ

「!?」

そして、ランサーの目の前にはこちらに飛んでくる一本の捻れた剣があった

「っ!壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」

それを射たアーチャーがそれに気付いてランサーに届く寸前、最小限の爆発を発生させる

「ああ、お前らはまったくチームワークってものがないんだな・・・」

そして、そのアーチャーの背後から士郎が強化した足での強烈な蹴りを見舞う

アーチャーが数メートル吹き飛ぶ

「まだまだぁ!!」

そう叫んで、凛がガンドを連射する

「・・・そろそろ、行くぞ?気合入れてかかって来い」

そういって、士郎の周りに巨大な大剣が無数に突き刺さる

それは、まるで剣の要塞

凛のガントが弾かれる

「・・・神代の剣だからな・・・概念武装としては一級品だろう・・・対魔力も高いだろうな」

再び橙子の補足がとぶ

「デタラメね・・・」

すると・・・剣の奥から士郎の声が聞こえた

          体は  剣で 出来ている
 「
――――I am the bone of my sword.

拙い、と固有結界の発動を直接見たことの無い、だがそれの威力を直感で理解した襲撃組全員が要塞を破壊せん、と剣に総攻撃を放つ

        血潮は鉄で心は硝子
 「
―――Steelismybody,and fireismyblood

         幾たびの戦場を越えて不敗
 「
―――I have created over athousand blades.
         ただ一度の敗走はなく、
      
Unaware of loss.
         ただ一度の勝利もなし
      
Nor aware of gain

        担い手はここに独り。
 「
―――Withstood pain to create weapons.
          剣の丘で鉄を鍛つ
      
waiting for one's arrival

      ならば、 我が生涯に
意味は不要ず
 「
――I have no regrets.This is the only path

だが、そんな襲撃組の猛攻にもかかわらず、詠唱はあと一節

「っ、一箇所!一箇所にむけて総攻撃よ!」

凛がそう叫ぶとともに、全員の攻撃が一箇所に集中する

ピシリ、とひびが入る・・・そして

            この体は、無限の剣で出来ていた
 「
―――Mywholelifewas“unlimited blade works”
ひびわれた剣が、内側から砕かれた

広がる紅蓮・・・そして剣

空は血の色に染まり、大地はまるでその者を讃えるかのような紅蓮

―――ここに、神の丘が現れた

 

 

 

あとがき(後悔)

・・・えっと・・・模擬です?

うん、模擬・・・だね

・・・・・・とりあえず読んでくださりありがとうございます