十六話/欠片

 

 

 

 

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「やっぱり、このままじゃ駄目よね」

七宮邸のある一室で、だれかが呟いた

 

 

その日、昨晩の騒動にもかかわらず明朝から士郎は地下でいつもの訓練をしていた

すると

「ねえ、今暇?」

なんていう声が聞こえてきた

士郎が声のしたほうを向くとそこには

「・・・遠坂、今日は早起きだな」

少しだけ疲労をにじませている凛が立っていた

「ん、まあね・・・で、暇?」

「ああ」

「そう、それじゃあ」

にっこり、と凛が微笑む

「!?」

だが士郎はその瞬間理解した・・・これは、アクマの微笑だと

「アンタはどんだけ秘密を隠しているつもりよ!」

そして、凛の宝石が三個、開放された

「ええっ!?」

変な声で叫んで士郎がそれを避ける

が、上手く回避できずに右頬をかする

少しだけ流れる赤い血

「な、な、な、なにさっ!?遠坂」

動揺の色が隠せない士郎が叫ぶ

「あ、おもわず使っちゃった・・・」

うっかりスキル、味方にももちろん発動します

「・・・なんでさ?」

「とにかく!」

士郎の言葉を凛が遮る

「あなたたち、どんだけ私達に秘密を隠してるつもりよ!」

という叫びで

「っ、うぁ」

士郎が耳を押さえる

「昨日も意味の分からない暴走を起して、皆を巻き込んで・・・」

尚、凛の叫びは続く

「それで勝手に傷だらけで帰ってきたと思ったら、次の日はこうやって鍛錬!?」

「お、落ち着け、遠坂」

「黙ってなさい!あなたは秘密を喋る以外の発言なんて認めないわよ!」

「それって酷すぎないか!?」

「ああ、もう。うるさいっ!」

士郎目掛けてガンドの群れが飛ぶ

「うぉぁ!?」

それを変な姿勢になって士郎がかわす

が、ガンドはなお発射されている

「ウ、わ、うわわ、あわ、おぅ、はっ、ちょっ、ちょとまて」

頑張って避けている士郎の言葉を無視して凛は撃つ、撃つ、撃つ

「おーーーーい!」

士郎の姿がいつのまにか人形のように縮こまっている

「うぉ!?」

と、一発のガンドが士郎の頬を掠る

「って、ええ!?魔力込めすぎじゃないか!?普通に人殺せるんじゃないか!?」

士郎の姿が一瞬で元に戻る

が、凛は止まらない

「ま、まてまてまて!わかった、話し合おう、平和的解決を、テポドン2はよくないぞ、民主主義を掲げろ、むしろ大日本帝国憲法で!」

相当切羽詰っているのか、意味不明なことを士郎が叫ぶ

もちろん涙目だ

そして、ピタリとガンドの嵐が止む

「はぁ?」

凛は悪魔どころか魔神の微笑みを、青筋を浮かべて作っていらしゃった

「・・・あ」

士郎が後に語るに

『あれは、この世界で一番触れちゃいけないものだ』と

密室空間に士郎の断末魔が響き渡った

 

 

「で、とりあえず説明してくれない?」

「何をさ?」

「何もかも、といいたいところだけど全ては無理でしょうから・・・とにかく教えていい範囲すべて教えて欲しい」

そう言って、凛は心の中で自分の事を嘲笑していた

士郎の何でもない自分がこんなことを聞くのは間違いだ、と

「・・・ん、まあ・・・言える範囲で話す」

だが士郎は凛のそんな考えなど露もしらずに頷く

「とりあえず、俺たちの事、師匠と先生から何処まで聞いた?」

「貴方達がこなしてきた仕事の事、魔法使い達との関係、根源との関係を少しって所かしら?」

「そうか・・・」

そして、士郎が何かを少し考える

「ん、じゃあまずは俺たちの力について話す」

そういって、口を開いた

「ま、志貴の事は俺からは話せないから俺の事だけだけどな」

 

 

固有結界

人の身で届く事は無く、妖精などが使う魔法に最も近い魔術とされるそれを士郎が使えるようになったのは、ある死都での戦いの最中だった

その時、志貴は士郎とはなれて行動していたため、そこには死徒、それも軽く500年は生きたであろう上級の死徒が三人と士郎・・・・・・そして、人質となった数名の子供

士郎がその人質を助けようと庇いながら戦うも、その時にはまだ未熟だった士郎に上級の死徒三体は倒せ無くはなくとも、人質を庇いながら戦える相手ではなかった

一人、一人

戦闘の最中である子供は身体をバラバラにされ、ある子供は血を吸われ

そして、残ったのは死徒一人と人質の子供一人、士郎の三人

せめて、一人でも救いたい

その想いを胸に士郎が剣をふりかざす

そして、死徒を切り裂かんとするその斬撃は

見事に、命を絶った

飛び散る鮮血

こっちを見つめる瞳

嘲笑う口

士郎が切り裂いたのは・・・・・・死徒が盾として使った子供だった

 

 

「酷い・・・」

凛が苦々しく呟く

「ああ、酷いよ・・・死徒もそうなら、俺もな」

「っ・・・!」

士郎の言葉に、凛は自分を叱咤した

自分の言葉が、士郎を傷つけるのには十分だと

「そんなっ、士郎は何も悪くない!」

「・・・・・・まあ、そんなことがあって、分かるだろ?あとは怒りに任せて固有結界を目覚めさせて、その死都を殲滅した・・・・・・後には瓦礫の山しかなかったよ」

士郎が自分の手を見つめる

「思えば、ただの人を、魔術師でも無いような人を殺したのは・・・あれが初めてだったよ」

「・・・・・・」

その言葉に、凛は黙るしかない

「っと、話、続けるぞ」

 

 

その後、さらに鍛錬を続けた士郎は固有結界の力もあって、かなりの力を身につけた

それこそ、一人で竜種を倒せる程に

実際、その時も竜種の討伐が任務の内容だった

倒すべき竜は八百年を生きたSランクの竜種

その竜のと討伐に、問題はなかった・・・だが、その後が問題だったのだ

倒した竜種の住処であった巨大な洞窟・・・その奥から、さらに一匹の竜種が出てきたのだ

その竜は、どうみても千五百年程度は生きたであろうEXランクの竜種

依頼の竜の親にあたる竜だろう

しかも、仔竜のときにも感じたことだったが、親であるこの竜を見て分かった事がある

この竜種は、竜種の中でも珍しい・・・神の僕であるとされる竜、神竜である、と

仔竜の時は皮膚も黒く、炎は紅い・・・しかし成竜となると皮膚は白く、炎は白銀になるこの聖なる竜

それを、自分は相手にしたのだ

当然勝てるはずもなく、自分は瀕死の重傷まで追い詰められた

だが、負けるわけには行かなかった

力が欲しい・・・ただ純粋にそう願った

そして、自分の最後になるであろうその瞬間、竜の瞳と目が合った

心臓が、一瞬とまったように感じた

だが、次の瞬間から心臓は破裂しそうなほど早く鼓動を刻む

目の前が赤く染まる

音が聞こえない

頭の中には、なにかが入り込んでくる

それは、ありとあらゆる武器の記憶

剣だけではなく、武器全体を極めようとした自分が辿り着いたそこ

士郎は助かりたいという一心の元、それに触れた

先生に聞いたことがあった、自分が魔法使いになったとき、頭の中になにかが浮かび上がってきた・・・と、そして怖くて、破壊の魔女である自分が恐れからそれに触れられなかった、と

しかし自分はそれに触れてしまった

先ほどまでとは比にならない程の記録

否、記録ではない何かが自分の中で溢れた

 

 

「そして、その後に残ったのは無残な形になった神竜だった・・・・・・初めてだったからか、安定せずに強制的に俺の意識が戻ったんだ」

剣神を引っ込めさせてな、とつけくわえる

「・・・・・・」

そんな士郎を凛が見つめる

「な、なにさ?喋れそうなことは喋ったぞ?」

「・・・いえ」

凛が首を横に振る

「貴方の負けれない理由って何なのかしらね?」

「・・・・・・さあね」

そういって、凛は地下を出て行く

「・・・それは、お前だよ、遠坂」

ポツリと、士郎が呟いた

その眼は、自らの腕にある腕輪に

 

 

 

感想(後悔)

神竜・・・ですか?

何なんですかね?ソレ(ぇ

私だってしりません。

ちなみに士郎達の「神」はあくまで根源に触れた者の称号みたいなもんなんでヨロシクです。

なので神竜が士郎に従う事はない、はずです。

どこまで設定を壊せば気が済む、自分!

 

 

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