八話/鍛錬

 

 

 

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「投影戦闘(トレース)、展開(オープン)」

呟くように唱える

「は!」

早朝の七宮邸、その地下にある広大な空間で士郎は模擬戦用の人形にむかって夫婦剣を振るう

士郎の日課である鍛錬、その一環である

「ふっ!」

今まで持っていた夫婦剣が瞬時に消滅、そして空いた手に黒い長剣が握られそれで士郎が突きを出す

長剣の銘は『千羅(オーバーバレット)』、無名の英雄が千の魔を滅ぼした時に使った剣

「はぁあああ!」

その突きは人形の心臓を突き刺し、それと共に空間から黒い閃光が出現、剣に平行して突き進み人形の体の至る箇所を幾度も貫く

そして、その長剣も瞬時に消え、今度は赤い短剣、『呪刻(ファイブスペル)』という名の昔の呪術師の短剣が握られている

士郎は一度の跳躍で背後数メートルに飛び退き、短剣を人形に投擲する

投擲された短剣は真っ直ぐにボロボロの人形の心臓に向かう、と短剣が一瞬かすんだ様に見え次の瞬間短剣は五つに増えている

五つの短剣は人形の両手両足、そして心臓に突き刺さる

「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」

士郎の言葉と共に五つの剣が崩壊、爆発を起こす

人形の首から下が跡形も無く吹き飛ぶ

宙に黒く焦げ、ボロボロになった人形の頭が舞う

「是、射殺す百頭(ナインライブスブレイドワークス)」

それを、いつの間に手にしたのか士郎の手にある黒き弓から放たれた八つの軌道が貫いた

・・・・・・人形は、士郎の手によって三十秒も掛からず消滅させられていた

「・・・・・・・・・・・・ふぅ」

弓が消える

「・・・もう六日、か」

六日・・・自分と志貴がサーヴァントを召喚してからの日数

ふと、いま家の中で寝ているであろうセイバーとアサシン、ランサーのことを考える

サーヴァントが寝るなんて、可笑しな話なんだろうな・・・

三人を無理やり寝かせた自身がそう思う

そういえば・・・セイバーとアサシンは飯を食べるのも遠慮してたっけ・・・それも無理やり説得したけど・・・まぁ、今では飯を楽しめるようになってるみたいだけどな

そして、凛の事を考える・・・

・・・・・・まさか、寝起きまで猫かぶりしているとは思わなかった・・・

先日の凛のうっかりを思い出して苦笑する

そこまで考えて、ふと地下に気配を感じた

「誰だ?」

敵意の無い存在と確認し、声をかける

「ん・・・俺だよ、おはよ」

現れたのは、志貴

「ああ、おはよう」

志貴の挨拶に軽く挨拶を返す

「それにしても・・・今日は随分と荒れてるじゃないか?」

先程の士郎の攻撃の余波でボロボロになった地下室を見回す

そして、そこには仕損じた人形の腕、脚、頭が大量に転がっている

「ん・・・結構やり損ねたな」

不満げに士郎が呟く

「・・・・もう少し綺麗にやれよ・・・・・・」

志貴が溜息を吐く

「ん・・・投影(トレース)、重層(フラクタル)」

士郎の言葉と共に残骸の上にそれぞれ剣が出現する

そして、一斉に残骸にそれらが突き刺さった

「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」

そして・・・・・・残骸が消滅した

「・・・・・・また、随分と惨い事をするな」

そして、第三者の声が掛かる

「・・・なんか用か、アーチャー?」

士郎が尋ねる

「いや、何・・・凛ほどでは無いだろうが寝起きが悪いと思っていた遠野 志貴がここに入っていったのでね、興味本位で覗いただけさ」

アーチャーは悪びれた様子も見せずにそう言う

「そうか・・・」

士郎も特に怪しまずに頷く

「しかし、コレはどうするのだ?」

「ん?・・・ああ」

アーチャーが地下室を見回す

人形の残骸は無くなったものの、士郎の攻撃の余波などで地下室は所々抉れていたりしている

「すぐ直る・・・修復(メンド)」

士郎の言葉で地下室の損傷が光に包まれる

「ほう・・・」

アーチャーが目を見開く

「どこから修復の魔力が流れ込んでいるのだ?」

地下室は、見事に綺麗に直っていた

「人工霊脈を冬木の霊脈につなげてるんだよ」

志貴がアーチャーの質問に答える

「・・・・・・凛に、殺されるぞ?」

アーチャーがぼそりと呟く

「「・・・・・・・・・・・・ああ、そうだな」」

だから隠さないと、と志貴が苦笑いを浮かべる

「ところで、衛宮 士郎・・・・・・」

アーチャーが士郎に声をかける

「何だ?」

「いや、何・・・一つ、手合わせ願おうじゃないか」

そういってアーチャーが干将・莫耶を手にする

「飯を準備する時間まであと十八分か・・・ま、いいか」

そういって、士郎も同じく夫婦剣を握る

「・・・・・・・・・」

志貴はコソコソと地下室の端っこに非難していた

「じゃあ、どうぞ」

志貴のその気弱な言葉で、二人が弾けた

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」

「はぁああああああああああああああ!」

二人が同じ剣を振るう

二対の黒と白の閃光がぶつかり合い薄暗い地下室に火花を散らす

剣戟の音が耐える事は無い

「ふんっ、どうした・・・ランサーを凌いだ貴様がこの程度のわけが無いだろう?」

アーチャーが夫婦剣を投擲する

「さあ?どうだろうな」

士郎も同じく夫婦剣を投げる

空中で二対の夫婦剣が衝突し、砕け散る

降り注ぐ破片はさながら、それは鋼の雪

「そうか、ならば・・・・・・本気を出させてやろう!」

その雪の中を赤い閃光が奔る

銘を赤原猟犬(フルンディング)、黒き弓から放たれたその剣は士郎めがけて飛翔する

「あれ、鍛錬で使うような剣じゃないよな」

端っこの志貴が呟く

先日、自分達も喧嘩程度でソレを使ったのは棚上げである

「無駄、だ」

士郎が前に手を掲げる

「楼天覆う七つの円環(ローアイアス)」

そして、展開される七枚の花弁

「ふ、貴様のソレの完成度がどの程度か見極めてやろう」

「なめるなよ、アーチャー」

二人が口元を吊り上げる

そして、赤い閃光と花弁が衝突する

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「はぁあああああああああああああああああああああああ!!」

衝突の余波で地面が抉れる

花弁は七枚とも顕在して閃光を防いでいる

だが、次の瞬間一枚の花弁にひびが入る

「っ!?はぁああああああああああああああああああああ!!」

士郎が花弁にさらに魔力を注ぐ

しかし、花弁は砕けた・・・そして、赤原猟犬(フルンディング)が地面に落ちて霧散する

「ちっ・・・」

「ふん・・・」

舌打ちを一つして士郎が黒き長剣千羅(オーバーバレット)を握る

そしてアーチャーはある鍛冶屋が命を込めて打った『裂爪(れっそう)』『崩牙(ほうが)』という銘の二本の大太刀を手にする

そして、二人の刃が交わる

本来、片手で持つような・・・それどころか二刀流で使うような物ではない大太刀を手にしながらアーチャーは見事に士郎と斬り合っている

士郎が不利だと判断し、距離をとる

それをアーチャーは追わずに刀を構える

「流石・・・といった所か、私が追っていたら串刺しだったのだろう?」

アーチャーは地面に視線を落とす

そこには、硝子のような透明な短剣『霜氷柱(アイスピラー)』

「・・・ふん」

士郎が足元の瓦礫をその短剣めがけて蹴り飛ばす

必要の無いように見えるその行為は、アーチャーとの間隔を空ける為のもの

瓦礫が短剣に触れる・・・・・・・・・その瞬間短剣は砕け、破片が舞った

そして、その破片一つ一つが、巨大な氷柱を形造り氷の針地獄が生まれた

「・・・・・・やれやれ、危なかったな」

針地獄を挟んでアーチャーが口元を歪ませる

「・・・・・・・・・」

士郎はいつの間に手にしたのか赤い短剣、呪刻(ファイブワークス)を手にし、千羅(オーバーバレット)と二刀流で構えている

一瞬の静寂

そして、先に動いたのはアーチャー

左手に握る崩牙を邪魔な針地獄に振るう

「崩牙」

アーチャーが刀の真名を呟く、と同時に氷の針地獄が半分、巨大な何かをぶつけられたように砕ける

「真名解放したよアイツ・・・」

志貴が驚愕する

実は先程まで二人が使っていた剣は宝具であっても真名は開放せず、いわゆる補助機能などだけで戦っていたのだ

だがアーチャーは真名を開放した

つまり本気、という事

「鍛錬じゃなかったのか?」

志貴と同じ事を考えていた士郎が呆れた様に言う

「何、重傷を与えなければ良いのだろう?」

だがアーチャーはさも当然、といった風に言い切る

「・・・・・・ああ、そりゃそうだ」

そして、士郎が長剣で突きの構えを取る

「確かに、重症じゃない怪我はすぐに治るよな!」

そして、士郎はその長剣で氷柱を突く

それと平行して、大量の黒い閃光が出現し、進攻する

氷柱を砕き進む、そしてその閃光が針地獄の中間辺りまで進攻した所で士郎が呟いた

「千羅(オーバーバレット)」

その言葉で閃光の群れが一回だけ脈動する

そして、数百はあろう閃光がそれぞれ散る・・・

散った光の欠片は再び閃光の弾丸となり進軍する

その数、真名の通り千

それの進軍により、針地獄が消滅する

「・・・ほう、なかなかやるな」

アーチャーの姿がはっきりと現れる

「くだらない世辞はよせよ、気持ち悪い」

士郎が苦虫を噛み潰したような顔をする

「くくっ・・・ではこれで終わりにするか」

そういって、アーチャーが右手に握る裂爪を地面に突きたて崩牙を空いた右手に握る

「・・・・・・ああ、そろそろ朝飯の時間だ」

そういって士郎が二本の剣を構える

戦いの余波で脆くなった天上から、瓦礫が落ちる

二人の間に、緊張が走る

瓦礫が、地面に落ちた

「裂爪!」

アーチャーが真名を開放する

開放された地面に突き立つ刀が脈動する

「・・・!」

そして、士郎が自分の周囲の地面の異変に気付く

「遅い!」

アーチャーの声と共に地面が砕け、そこから光の束が・・・光の剣が溢れ出す

「っ!」

その攻撃に士郎は・・・飛び退くのではなく、前へ・・・アーチャーへと走った

士郎が一歩を踏み出すと先程まで士郎が立っていた地面が砕けて光が溢れる

そんな事を繰り返しながら士郎はアーチャーへ近づく

「ふん」

アーチャが崩牙を構える

「崩牙!」

そして、真名を開放する

見えない鉄槌が士郎目掛けて突進する

が、士郎は急に大きく右に跳んで避けたかと思うと千羅(オ−バーバレット)をアーチャーに投げる

「っ!」

アーチャーは咄嗟の事にうまく対応できず、裂爪で防ぐ・・・が、それほど強度が高くないそれは千羅(オーバーバレット)との衝突に耐え切れず、折れる

「ちっ」

アーチャーが舌打ちをして士郎を見据える、そして驚愕した

自分に向かって赤い短剣が投擲されている事に

「っ!」

アーチャーが飛び退く、が次の瞬間短剣は五つに増えアーチャーを突き刺さんと飛翔する

そして、避けきれずに左足に一本、短剣が突き刺さった

「ちっ!」

「呪刻(ファイブワークス)」

そして、士郎が真名を開放する

「なっ!」

驚愕の声は、アーチャーのもの

アーチャーは左足を貫かれ、着地したその態勢のまま身動きをとれずにいた

「残念、運がなかったな・・・・・・お前が刺さったのは五つの呪い内の石化の呪いを司る剣だ」

そして、そのアーチャーに士郎が歩み寄る

「・・・ふん」

アーチャーが珍しく不貞腐れたような顔をする

そのアーチャーの脚に刺さっている短剣を士郎が引き抜く

「さて・・・じゃあ、朝飯だな」

そういって士郎が地下室から出て行く

「・・・士郎の勝利か」

部屋の隅っこに居た志貴が呟いた

そして、志貴とアーチャーは地下室を修復してそこを出た

 

 

 

 

 

感想(自殺)

何も言わないで下さい・・・(汗

分かってます、下手な武器勝手に造るんじゃないって言う皆様のお怒りはごもっともです

それとコレ鍛錬じゃなくて殺し合いだろ?っていう突っ込みもダメです、いけませんいけません。

・・・・・・・・・まぁ・・・気にしない方針で行きましょう(汗