五話/同盟

 

 

 

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「どうしたの士郎?」

気の抜けていた俺に遠坂の声が届く

いま俺と遠坂がいるのは学校の屋上、そこで弁当を隣り合って食べている

「いや、なんでもない・・・」

「・・・そう?」

そういって遠坂は再び弁当を食べ始める

ちなみに弁当は士郎製である

・・・・・・それにしても、遠坂は学園のアイドルなんだよな?

どうみてもそれは美人、ってことで

それが今俺の隣にいるとなると緊張しちゃうわけだな

考えたら顔が熱くなってきた、幸い遠坂は弁当を食べていてこちらには気付いていないようだ

色欲煩悩、渇!

とりあえず顔から熱が引いていく

衛宮 士郎、戦闘時は大抵の事に動じないが普通に生活している時は非常に脆い少年であった

しばらく無言で弁当を食べる

「ありがとう士郎、おいしかったわ」

そして、遠坂が空になった弁当箱を返してくる

・・・あれ?さっきから違和感を感じるな?

「・・・・・・あれ?遠坂いつから俺を士郎って呼び捨てにするようになったんだ?」

ちょっとした疑問を口にするように言うが内心は酷い物である

「ん?今朝からよ?衛宮君っていちいち呼ぶの面倒くさいから士郎でいいでしょ?」

ああ・・・そういえばあの時からそう呼んでたな・・・

よく気付かなかったな・・・俺

 

 

 

「とりあえず、今更だけど同盟を組まない?」

「え?」

「・・・あ」

朝、朝食を食べながら凛が言う

「なんだ?お前ら同盟組んでなかったのか?」

ランサーが心底驚いたように尋ねる

「そういえば・・・同盟なんていうのあったな」

「ああ・・・すっかり忘れてたよ・・・」

そして士郎と志貴は思い出したようにそう言った

「忘れてたって・・・」

その言葉に凛が呆れたように肩を落とす

「そうえば・・・敵だったのでしたね、凛は・・・」

「ああ・・・違和感がなくて気付かなかったな」

「・・・・・・とりあえずお前達は呆け過ぎだろ」

英霊達もまともなのはアーチャーだけであった、敵を警戒しないでどうするサーヴァント

「はあ・・・で?どうするの?同盟組むの組まないの?」

「もちろん組ませてもらう、いいよな?志貴」

「当然だよ、俺だって知り合いとは戦いたくないからね」

そうして、ここに三組のマスターの同盟が組まれた

「じゃあよろしく、遠坂」

「遠坂さん、よろしくね」

「ええ、よろしく士郎、志貴」

ちゃっかり志貴のこともこのときから呼び捨てにしている凛だった

「・・・サーヴァントの意思は無視かね?」

アーチャーの虚しい呟きをこぼす

セイバーをアサシンは納得したように、ランサーとアルクェイドは我関せずといったふうに朝食を食べ続けていた

 

 

 

「そういえば、志貴は?学校に来てないみたいだけど」

凛が士郎に尋ねる

今朝、家を出るとき志貴、そしてアサシンとアルクェイドは何処かに行ってしまったのだ

「あ〜、そういえば、言ってなかったっけ?」

「何をよ?」

士郎がしまった、という顔をする

「そっか・・・忘れてた・・・」

「だから何をよ?」

「・・・・・・・・・あ〜、志貴・・・なんでこの場に居ないんだ?」

今から地獄絵図の如くなるかもしれないこの場に居ない志貴に妬ましそうに言う

「その理由を聞いてるんだけど?」

凛の目がだんだんと鋭くなってくる

それをみた士郎はさすがに危ないと感じたのかあわてて口を開く

「遠坂、黒紅双魔(こっこうそうま)って知ってる?」

そして、そう尋ねた

「ええ、知ってるけど?」

黒紅双魔、魔術協会で様々な噂が流れている二人のフリーランスの魔術師、その力は神がかりで片方は漆黒の死神、片方は紅蓮の剣神と呼ばれるほどである

噂の内容は様々であるが、魔法使いの一人、魔道元帥と互角に渡り合うとか蒼崎姉妹の喧嘩を止めただとか霊長の殺人者を叩き伏せただとか腑海林に入って生還しただとか竜種を捕獲しただとか色々ととんでもない噂が流れている

通り名と実績だけが知れ渡っている謎の二人である

極東の国の魔術師である凛も兄弟子を通じてそのことを知った

「・・・・・・はぁ、知ってたか・・・」

士郎が大きな溜息を零してポケットから何かを取り出し、それを地面に置く

「なに、それ?」

「気にするな」

凛の尋ねる声に士郎はそう言って続ける

「それでな・・・・・・黒紅双魔・・・実はそれって、俺達なんだ」

「・・・・・・え?」

凛が目を見開く

「昔、先生達がさ・・・勝手に噂を広めたんだよ・・・面白半分で」

通り名も青子が考えた物である

「な、な、な・・・」

士郎が耳をふさぐ

「なんですってーーーーーーーーーー!?」

そして、凛の叫びが放たれた

ちなみに先ほど士郎がポケットから取り出したもの、それは防音結界を即席で張る魔具であった

「お、落ち着くんだ遠坂」

士郎が急いで宥める

「これが落ち着いていられるわけないでしょうが!」

しかしそんな士郎の言葉を無視して凛は咆哮をあげる

「あんたが噂の!?あの黒紅双魔!?それに志貴もですって!?大師父と互角って言われてるあの!?」

「あ〜、だからそう言ってるだろ?」

凛の怒涛の質問攻めに士郎は耳を塞ぎながら答える

もし士郎が結界を張ってなかったら、この大音量で凛は大声で叫んだだろう

そして生徒にそれを聞かれていたら凛の名声は終焉を迎えたことだろう

流石士郎、理不尽師匠に苛められ続けただけのことはある、関係ないような気もするが流石である

まあ、隠匿しなければならない魔術関係の話を公共の場で大声で叫ぶ凛も間が抜けているというか・・・まあ、うっかりである

「っ、ちなみに大師父と互角って言うのは・・・?」

「・・・む、流石にゼルレッチ師父には普通の状態で勝てるわけ無いさ」

少し落ち着いてきた凛の問いに士郎がそう答える

「そうよね、大師父と互角なんていったら・・・・・・」

――貴方に宝石を撃ち込むところだったわ

「え?」

凛の呟きに士郎が固まる

「あ、いえ・・・何も言って無いわよ?」

「・・・・・・」

凛が慌てて誤魔化す

そして士郎は開きかけていた口を急いで硬く閉じる

凛は大切な所を聞き逃している

普通の状態で勝てるわけ無いさ・・・

士郎の答え、普通の状態では魔道元帥には勝てない・・・ならば、普通じゃなければ勝てるということ

士郎はこれを口にしようとして、命の危険を感じて急いで口を閉ざしたのだ

「貴方たちが黒紅双魔なのは分かったわ、たしかにそれならサーヴァントと渡り合えるあの強さも納得できるし・・・それで、志貴は?貴方たちが黒紅双魔だからって志貴がいない理由にはならないわよ?」

そして凛が話を元に戻す

「えっと・・・まあ、仕事だ・・・」

そして士郎が答える

「仕事?」

「ああ・・・ええと、内容は先生の仕事の代行で日本に潜伏している禁忌を犯した魔術師の捕獲か抹消だ」

士郎が眉間にしわを寄せながら言う

やはり大切な人を守る、という答えを得た今でも衛宮 士郎の根本として人を殺めるのには抵抗がある

だが、その魔術師が一般市民に害を及ぼすようなのだから仕方の無いことだ、と割り切るしかないのである

「・・・そう、それなら早く終わらせたいでしょうね」

「ああ・・・被害が出る前に、な」

士郎が呟くように答える

そして、予鈴が鳴り響く

「あ、行かなくちゃね」

「ああ・・・」

そして、二人は校舎に入っていった

 

 

 

「くっ・・・!」

闇の中に何かが蠢く

「どうした、さっきまでの威勢はどこにいったんじゃ?小童」

そして老人の声

「なんなのよっ、これは!?」

そして、苛立ちを隠せないアルクェイドの声とともに何かが風を切る音、そしてその後に何かが潰れる音

「化物が・・・」

「カカ、そうじゃとも・・・ワシはとうに人など止めておるわ、だがサーヴァントであるお主には言われたくないのう」

カカカ、と気味の悪い笑い声が響く

「はっ!」

志貴が短刀を振るう

「終焉(グローリー)、起動(エンド)」

そしてそう呟く

そして辺り一面の闇が蠢きグシャリ、という音がほぼ全方位から聞こえてくる

「ぬ・・・・・・何をした?」

老人が一歩後ろに下がる

「さあ、な・・・」

「・・・・・・・・・カカ、まあ良い・・・今は引かせてもらうとしよう」

「っ・・・まてっ!」

老人の姿が闇に溶けるように消えていく

志貴は急いで手に持つ短刀を投げるが老人は完全に消え、カッという音で地面に突き刺さる

「では、次に会うときは覚悟しておくがよい」

最後に、そう残して老人の気配は完全に消えた

「・・・・・・気味が悪いわね」

「どうやら聖杯戦争関係者という事で間違いないだろうな・・・」

アルクェイドとアサシンが辺りを見渡す

「・・・くそっ!」

志貴が地面を思いっきり殴りつける

その音が痛々しく闇に響き渡った

 

 

 

「へー、大師父ってそんな性格なんだ?」

「ああ、いつもは気の向くままって感じだけど、いざという時は頼りになる人だよ」

学校の帰り、食材の買い出しの為士郎達は商店街にいた

最初は士郎だけで買い物をするはずだったのだが凛が一緒に行く、と言うので二人で買い物をしている

ちなみに時々すれ違う同じ学校の生徒に凄い目で士郎は睨まれている、男子にも・・・女子にも・・・まさに殺気を放たれている

「じゃあ貴方たちの師匠は?」

「む、師匠と先生か・・・」

八百屋で野菜を手に取りながら凛の質問に士郎が考える

「言うなら・・・師匠、蒼崎 燈子さんは普段は冷徹だけど時々優しい、って感じかな?」

「へぇ・・・」

「それで先生、蒼崎・・・・・・青子さんは豪快で何でも知ってるって感じのする人だな・・・」

士郎は先生に青子って呼んだことがばれたら殺されるな、とか思いながらそう言う

「そうなんだ・・・」

凛が意外そうな顔をする

「意外・・・か?」

そんな凛を見て士郎が聞く

「そりゃ、ね・・・噂が噂だし・・・」

そもそも凛としては何で喧嘩もしないで蒼崎姉妹が二人で二人の弟子を一緒に育てているのか、ということが気になるのだが

「まあな・・・噂では二人が出会えば辺りが吹き飛ぶとか言われてるらしいしな」

士郎が苦笑を浮かべる

「まあ、確かに最初の頃は仲が悪かったけどね・・・今はそれほどでも無いよ」

そして士郎が遠い目をする

あ・・・これ触れたら駄目なんだ、と凛が察知する

「ふぅん・・・まあ、大変だったみたいね」

「当たり前だよ、でも・・・楽しかった」

そして笑顔でそう言った

「・・・・・・そう」

こんな奴でも・・・ちゃんと笑えるんだ・・・

凛も少し笑みを浮かべる

「さ、買い物も終わったし・・・帰るか」

「そうね・・・」

夕日が沈み始めた赤い世界で二人は歩き始めた

 

 

 

「・・・で、どうだったのさ?」

士郎と凛が家に帰ると居間に志貴が寝転がっていた

「ん、目標は死亡を確認したよ・・・やったのは俺じゃないけどね」

「は?」

志貴の答えに士郎が首をかしげる

「先客がいたのさ・・・意味悪い爺だった・・・」

「どうやらシキの話によればその翁は関係者だそうです」

「セイバーはスパルタだな?」

志貴の話を先に聞いていたセイバーとランサーが道場の方から歩いてくる

ランサーが愚痴をこぼしていることから察するとセイバーの練習相手、別名人間サンドバックにされていたのだろう・・・

「どんな奴だったの?」

凛が尋ねる

「ああ・・・」

そして志貴が士郎と凛に説明する

―――――闇の中の出来事を・・・

「・・・・・・・・・そりゃ、また・・・何だかな・・・」

説明を聞いた士郎が溜息をつく

「・・・手強い敵になりそう?」

「いや、敵サーヴァントらしきものは見なかったし能力も暗闇で分からなかったからな・・・それに目的も不明だ」

「そう・・・」

凛が考え込む

「あ〜、それよか飯にしないか?飯だ飯」

そこでランサーが士郎に催促する

「ランサー、飯にたかるな・・・」

凛の背後に呆れ顔のアーチャーが現れる

「何言ってんだ、今のうちに飯で俺に恩を売っとけってことだよ」

「・・・言い訳か?見苦しいぞ」

「くっ・・・どうだろうなぁ?」

アーチャーの嘲笑いにランサーが口を吊り上げる

「あ〜、はいはい・・・じゃあ飯作るかな、と」

そういって士郎が台所に逃げ込む

「あ、俺も久しぶりに作ろうかな・・・」

志貴も士郎の後に続いて台所へ入っていった

士郎と志貴は台所で料理をして、凛とアサシンといつのまにか居間に入ってきたアルクェイドとセイバーがこれからのことについて話し合い、アーチャーとランサーが何か言い争いをしていた・・・

そして夕食が出来上がり、皆が料理を食べていると・・・轟音が庭から聞こえてきた

 

 

 

 

 

感想(後悔)

はい、初・志貴戦闘です 、原作とは違い魔術を使うので苦労しました

どんな魔術かは言えないのですが呪文の意味は教えとこうかな・・・と

グローリー(繁栄)がエンド(終わる)=終焉の始まり、つまり終焉(グローリー)、起動(エンド)って事です

分かりにくい説明で申し訳ありませんね・・・。

それとご意見ご感想有難うございます、これからも頑張っていく所存です