キィィィン―――キィン――キン―――キィィィィン――

公園には高らかな金属音が鳴り響いていた。そしてその音の発生源にはいつも二人の男がいた。

遠くから見れば二人はまるで踊りを踊っているかのようだった。しかし本当は違う、二人の片手には武器が握られている。

そう彼らは闘っている。蝶のように舞い、蜂のように刺すという言葉があるがまさにその通りだった。時にはぶつかり、時には離れ、そして離れたかと思うと再びぶつかり合う。

彼ら二人は互いに持つ武器を振り下ろしたり、突いたり、そして迫り来る対峙者の武器を払ったり、受け止めていたりしていた。故に互いに致命傷になるような怪我を負うこともなく、せいぜい着ている服が多少破れて、かすり傷がつく程度のものだ

った。そして何度目かの金属音がまた鳴り響く。それを境に二人は一旦距離を置く。

呼吸を整えながら二人は見詰め合う。互いに相手の出方を窺っているようだ。

「ハァ・・・、ハァ・・・、」

志貴は息継ぎをする。そして体から出る汗を拭う。

青年も志貴と同じように体から出る汗を拭っていた。

――流石に疲れてきたな・・・・・・・・・、あれ?そういえばどうしたら彼は俺を認めてくれるのかな?――

今更そんなことに気付く志貴。もしかすると既に無駄足、無駄骨になっているかもしれない・・・。

本当に今更そんなことに気付く志貴だった。だから志貴は聞いてみることにした。

「あの〜、すいま「フゥ〜〜、ここまでやるとはなー。」

青年の言葉に志貴の言葉はかき消された。しかし志貴はそんなことなど気にしなかった。青年の言葉がそうさせた。

――今何と!――

青年の言葉に内心歓喜する志貴。それもそのはず、殺し合い無しとはいえ武器を使っての闘い。何かの拍子で死に至らないことなどない上に、当然集中して闘うので体力、精神力は磨り減っていく。

結論を言えば今日はいろんな事があって走りまくっていた志貴は戦闘をする前から疲れを感じており、そしてその上に戦闘をしているので最早疲れ切っていた。

だがもう一つ嬉しかった理由があった。何故なら彼に認めてもらったということは昨日に起こった殺人事件のこと、そしてその事件に志貴の大切な人達が関わっている理由とやらが聞けるからだ。

志貴は待った。青年の次の言葉を。

「まあ当然と言えば当然か、なんせお前は一人番外がいるとはいえあの死祖27祖の内、三人も相手にしたんだからな。」

「はい?」

期待していた言葉が一つもなかったことに間抜けな声を出す志貴。そして彼の顔も間抜けなものとなっていた。

「なんだ違うのか?」

志貴の態度に自分の情報が間違っていたのか疑問に思う青年。

「いえ、そんなことはありません。確かに相手にしましたよ。」

「やっぱりそうだよな。」

志貴の言葉を聞いて自分の情報が間違っていなかったことに安心する青年。しかし志貴には彼に言うことがまだあった。

「いやそんな事よりもですね、さっきの言葉はどういう意味ですか?」

「?・・・、何のことだ?」

青年の表情が曇る。どうやら志貴の言葉を図りかねているようだ。

「えっと、さっきの『ここまでやるとはな』ってやつです。」

「・・・それがどうかしたのか?」

先程よりも青年の表情に曇りはないが、未だに志貴の言いたいことが青年はわからないようだ。

志貴はそんな青年を見て慌て始める。

「いや、そのですね。それって俺のことを認めてくれたってことじゃないんですか?」

「あ〜そのことか。」

志貴の言葉にようやく謎が解けたという顔をする青年。今の彼からは闘いに対する緊張感が抜けていた。

しかし志貴は未だにその緊張感からは抜けていなかった。何故なら次に発する青年の言葉次第ではまた先程の闘いを繰り返さなければならないからだ。

志貴の体からまた汗が噴き出し始め、またその汗を拭う志貴。故に自然と制服のボタンを外し、体に纏う空気の流れを良くする。青年は志貴がボタンを外し終わったの見計らって言う。

「その言葉に間違いはねぇよ。だが・・・、まだ足りないな。」

半ば予想していたことだが、志貴は落胆した。だが彼にはずっと落胆する暇はなかった。

彼がまだ認めないというなら志貴には聞かなければならないことがある。

「どうしたら・・・認めてくれますか。」

「そうだな・・・。」

再び闘いが始まると認識したためか、志貴の言葉は気迫に満ちていた。目つきも自然に鋭くなる。

志貴の言葉を聞き、戦いの決着方法を考えていた青年だがそんな志貴を見てか青年も身構え、臨戦状態になる。

場の空気が急速に変化し、また・・・再び闘いのための舞台が整い始める。

「互いに自分の武器を相手の急所のギリギリ手前で止め、かつそれが決定的な一撃だったら勝負ありでどうだ?過程は関係な い、結果がそうなら勝負ありだ。例えその過程が運の要素が強かったとしてもだ。それなら互いに何においても相手の方が一枚上手だったということで納得いくだろ。」

青年は言いながら自分の小太刀を志貴にはっきりと見せる。その黒々とした輝きは未だに変わってはいなかった。

「そう・・・ですね、じゃあそれで良いんですね?」

青年の提案に同意を示し、そして確認する。

「ああ。」

志貴の確認の言葉に一言で答える青年。それを聞いた志貴は少しだけ笑った。

「そうですか・・・、なら勝たせて貰います。」

「!」

志貴の言葉に青年は明らかに驚いた。志貴はそんなことなど気にもせず、地面を蹴る。

再び闘いが始まる・・・

 

 

 

青年の眼前へと迫る志貴。青年は驚いていたために志貴を待ち構えることしか出来なかった。

――勝たせて貰うだと!――

先程の志貴の言葉に頭の中が熱くなる。しかし実力を見る者の立場のためかすぐに冷静さを取り戻し、迫り来る志貴に集中する。

志貴のナイフが青年に迫る。青年は今まで通りにそのナイフを小太刀で受け止める。

しかしそのナイフには今までの闘いにあった重さがなかった。

――何だこれは――

青年が疑問に思うと同時に志貴は次の行動を取っていた。

すり足をして体勢を変えて再び別方向からナイフを突き立てる。

青年はそれをまた小太刀で受け止める。しかしまた同じようにそのナイフに重みはなかった。

――こいつはまさか・・・――

青年の想像通りだった。志貴はまたすり足をして体勢を変え別方向から攻撃をしてくる。

そしてまた青年は受け止める。そしてまた志貴はすり足をして移動する。

――数打ち狙いか!――

青年がそう結論付ける間にも志貴は移動し、攻撃をする。

志貴の攻撃は少しずつ速さを増し、そして上下左右と攻撃を繰り出す範囲を広げていく。

青年はそんな志貴の攻撃を何とか受け止める。高くそして小さな金属音が止まることなく鳴り響く。

志貴が攻撃し、青年が受け止める。一方的な攻防戦が長く続く。

傍の目から見れば志貴が圧倒的に有利に見える。しかし長く続く攻防戦の中、青年にはある狙いがあった。

――狙いは悪くないが・・・、動きのパターンが少ないぜ!――

志貴が既に数十度目となる攻撃をする。青年から見て左下からの攻撃だった。

青年はその攻撃を受け止める。志貴は再び移動する。そして・・・

――次は右下からだろ!――

志貴の行動を先読みして志貴がいるであろう場所に右手に持つ小太刀を振るう。振るわれた小太刀の軌道上に志貴はいた。

――貰った!――

青年は確信した。そして小太刀が志貴に迫る・・・・・・が、迫り来る小太刀を見て志貴の顔は笑っていた。

「なに!」

小太刀を振るいながら驚く青年。その青年を更に驚かせるように志貴は彼の視覚から姿を消す。

青年の小太刀は空を切る。青年は素早く体勢を戻し、そして・・・

――今まで本気を出していなかったということか、だが・・・――

青年は左手に小太刀を持ち替え、左回りに体を捻る。

――お前の姿は捉えているぜ!――

青年は自分の後ろを向く。青年はそこに志貴がいると確信して小太刀を振るう。

しかし彼の視界を埋め尽くしたのは上下が逆になった志貴の制服の上着だった。

――なっ・・・――

予想外の物が目の前にあり、思考が一瞬停止し、そして青年の動きが止まる。

「貰ったァァ!!!」

制服の方から志貴の声が上がり、そして制服越しに志貴の拳が狙ったのか、それとも偶然なのか青年の鳩尾に深く入った。

「かっ・・は・。」

呻く青年。予想外のことが起こり体が少しくの字に曲がり、一、二歩後退する。

その青年めがけ間髪いれず志貴が制服を捨て、ナイフを繰り出す。そのナイフは青年の喉を狙っていた。

「くっ・・・。」

未だに志貴の攻撃からは回復していなかったが青年はナイフを止める為に小太刀で受け止めようとする。

志貴のナイフと青年の小太刀が再び激突する。

キィィィィィン――

だが青年の小太刀は難なく志貴に弾かれてしまった。青年の後方に高々と小太刀は上がって行く。

「これで終わりです。」

小太刀を弾いた志貴は再び青年の喉を狙う。彼の喉は無防備にさらけ出していた。

志貴はこの闘いにおいて最速の速さで青年に迫り、そして最速の速さでナイフを繰り出す。

最速の速さで繰り出されたナイフはすぐに青年の喉の手前に辿り着く。

しかし後数センチというところで志貴のナイフは動かなかった。いや・・・動けなかった。

「なっ・・・。」

志貴は自分が見ている光景が信じられなかった。

自分のナイフが青年の左手の人差し指と中指に挟まれて止まってしまったことに、そして・・・

青年の瞳が何の淀みもなく青々と輝いていたことに。

そんな志貴には目もくれず青年は志貴のナイフを手から外し、小太刀が落下した場所へと後退した。

「ごほっ、ごほっ、あ〜痛ぇ。」

鳩尾をさすりながら青年は志貴を見る。そこで初めて志貴が驚いていることに気が付いた。

彼ら二人は見詰め合い、場が沈黙に満ちていた。だがその場を志貴が破った。

「あなたは・・・魔眼を持っているんですか?」

緊張した面持ちで志貴は言う。志貴の顔には戸惑いというか驚きというか何とも言えない複雑な感情が表れていた。

「ああそうさ。だがまだネタばらしはしないぜ。」

不敵な笑みを浮かべて青年は言う。そして今度は青年から喋り始める。

「俺も一つ聞くが・・・、お前の掛けているその眼鏡、魔眼殺しだろ。」

「!」

確信めいた言葉で言う。志貴は驚いて思わず眼鏡に手を伸ばす。青年はそれを肯定の意味に取った。

「やっぱりそうか。俺も一時そいつの世話になったからな。」

昔を思い出すように青年は言う。

「確かにあなたの言う通りですが、それがどうかしましたか?」

志貴には青年の質問の意図が分からず、疑問を口にした。

「いやな、さっき俺はお前が死祖の三人を相手にしたと言っただろ。」

「はい。」

「そのことでどうにも納得できないことがあってな。」

「?」

青年の聞きたいことが分からず、志貴は疑問符を上げる。

「いくら真祖の姫君や埋葬機関の第七位がいるからといって、死祖の三人がこの短期間に殺られるとは考えられない。」

「!」

青年の言葉に志貴は動揺した。そしてそれを青年は見逃さなかった。青年の視線が厳しくなる。

「しかもあの混沌のネロや無限転生のロア、実体を持ち得ないワラキアの夜がだ。」

「・・・それで、何が言いたいんですか?」

最早志貴には青年の言わんとすることが分かっていたがそれでも聞いてみた。

「もしかしてお前の魔眼によって奴らは殺されたのかと思ってな。」

志貴の目を指しながら青年はそう結論付ける。

「・・・ええそうです。確かに俺の魔眼で殺しました。」

「そうか・・・ならその魔眼殺しを取って貰おうか。」

「!!!」

今までで一番驚く志貴。青年の言葉に反論する。

「どうし「悪いが反論は受け付けないぞ。」

青年は志貴の言葉をかき消した。そうすることで志貴に自分の意志をはっきりと表した。

「言っただろお前の実力が知りたいと。もし拒否するなら俺がお前に教えることは何もない。」

青年は志貴にそう言ったが頭の中では・・・

――鳩尾に一発入れられたままで終わって、有耶無耶にされて堪るか!――

などと考えていた。既に彼の頭の中では志貴の実力を見ることは隅の方に追いやられ始めていた。

「・・・・・・。」

しかし志貴にとってその言葉は決定的だった。

最早志貴には彼と闘う以外に、倒す以外に自分が望むものは手に入らない。

だからそのための行動を取った。

捨てた制服を拾い上げ掛けている眼鏡を外し、その眼鏡を制服の中に入れる。そして制服を地面に置く。

「これは殺し合い無しの闘いとあなたは言いましたが・・・、どうなっても知りませんよ。」

彼自身にとって眼鏡を取るという行為は余程重いのだろう、志貴の気迫は今までの闘いの中で最も強くなる。

チリチリと場の空気が悲鳴を上げているような気さえしそうだった。

そしてナイフをしっかり持って構える。志貴の瞳が先程の青年のように蒼くなる。

「安心しろ。これからお前の攻撃は俺に当ることはない。」

言うと同時に青年は近くにある地面に突き刺さった小太刀を拾い上げ、構える。

青年の瞳も志貴に感化されたように蒼くなる。

そして青年も志貴に負けない程の気迫を現す。場の空気が今まで以上に悲鳴を上げる。

両者は睨み合い、そしてどちらからともなく地面を蹴り相手に駆け寄る。

が・・・

ビシュ!

「「!」」

二人が斬り合おうとした時に上空から二人の間に割ってはいるものがあった。

二人はそれに気付き攻撃することを止め、一旦距離をとった。

彼らの闘いを邪魔したのは・・・・・・・・・一本の黒錠だった。

 

 

 

「これは・・・。」

志貴は自分の目の前に現れたものを見て、それが飛んできた方向を見た。

そこには公園の街灯に立つカソックを着た一人の女性がいた。志貴はその女性のことを良く知っていた。

「シエル先輩!」

志貴の呼び声に反応してか、シエルと呼ばれた女性は志貴の元に降り立った。

「先輩どうして・・・ここ・・・に?」

たどたどしく喋る志貴。何故ならシエルの顔は笑ってはいるが『私怒ってます』というのがありありと分かる。

「遠野君・・・。」

「はい!」

シエルの怒気しか篭っていないセリフに反応して志貴は何故か背筋を伸ばし、腕を脇に当てる。

「どうしてあなたはこうなんですか!!!」

シエルは口から火を出さんばかりの勢いで叫ぶ。まるで休火山がいきなり噴火を始めたようだった。

そのためさっきまでの戦闘での気迫は何処にいったのか、志貴が小さくなっていく。

「いや・・あのですねせん「言い訳は聞きませんよ!!!!!」

シエルの怒声に志貴の声は難なくかき消される。今の場面はまるで躾をする母親と躾けられる子供そのものだった。

「どうして遠野君は人の話を聞かないんですか!あなたは今高校三年生でしょう!こんなことをしている暇があったら・・・」

シエルはぶつぶつと説教を始めだした。志貴は毎度のことなのかどこか呆れたような顔をしていた。

「ですからせ「私の話はまだ終わってませんよ!!!!!」

再び志貴の声はシエルによってかき消される。

――仕方がない、こうなったら・・・――

志貴は心の中である一つの決断をした。

「先輩。」

「何ですか!」

シエルが言葉を発すると同時に志貴はシエルの両手を掴み、彼女の瞳を真っ直ぐに見る。

「俺の話を聞いてください。」

優しさに溢れた声でシエルのそっと囁く様に言う。その志貴の行動にシエルは・・・

「はい〜。」

今まで怒りで爆発していたシエルの表情が一気に腑抜けたものへとなる。

シエルは簡単に志貴に陥落されてしまった。

――良し!どうしてこれが効くか分からないけど今がチャンスだ――

女心が全く分かっていない志貴はシエルの手を離し、これを好機と見て事の一部始終を説明しようとした。

「良いですか先輩。結論から言うと殺人事件の手がかりを見つけたんです。」

「本当ですか!」

陥落していたシエルは志貴の言葉によって正気に戻った。

「それでその手がかりは何ですか?」

「それがどうやらあの人が知っているようなんです。」

志貴は先程まで対峙していた青年を指差す。しかしそこには誰もいなかった。

「あれ?」

疑問符を上げる志貴。そして周りを良く見渡すと・・・

「抜き足・・・差し足・・・忍び足・・・」

ゆっくりと公園から去っていこうとする青年がいた。

「「・・・・・・。」」

その光景に呆気に取られる志貴とシエル。しかし二人とも彼を見逃す気はなかった。

「何してるんですか!」

志貴は青年に対して大声を上げる。

「ん?」

志貴の声に反応して志貴の方に向く青年。その顔は『何か用か』と言っているようだった。

「いや〜話が長くなりそうだったから邪魔者は失礼しようかと・・・。」

「何言ってるんですか!俺との約束はどうなったんですか!」

大声を上げる志貴。そして今一度青年を見る。

先程まで闘っていたのが嘘のように闘気が消え失せていて、ただの青年のようになっていた。

「また会いしましたね。」

シエルは青年に話しかけた。彼女の声はいつの間にか真剣なものとなっていた。

「おやまあ、こんなにすぐ会うことになるなんてな。」

初めて出会った時のように飄々と答える。青年に挨拶をしたシエルに志貴は質問してみた。

「先輩が挨拶をしたってことは殺人現場にいたのはやっぱり彼なんですか?」

「ええ。その通りです。」

志貴が質問する間もシエルは気を抜かず青年を見ていた。

――・・・一体何なんだこの人は――

もう訳が分からないといったところか、志貴は脱力する。だがずっとそんなことを志貴はしていられなかった。

「先輩、すいませんが下がってくれますか。」

シエルの前に出る志貴。

「遠野君?」

「彼は言いました。俺の実力次第で今回の事件のことを説明してくれると。」

「本当ですか、それ!」

「はい。」

驚くシエルをよそに志貴は青年を見ていた。そして意識を彼に集中し、構える。

しかし・・・

「あ〜もう疲れたし、邪魔も入ったから合格にしといてやるよ。」

「「は?」」

志貴とシエルは二人揃って同じ声を出す。青年の言葉は二人の頭を混乱させた。最早二人とも完璧に青年のペースに振り回されていた。

「なんだ、不服なのか?」

呆気に取られている二人に青年は尋ねた。

「いえ!そんなことないですよ!」

青年の言葉にいち早く反応した志貴は即答する。そして地面に置いてあった制服を拾い、制服に着いた土を払って眼鏡を取り出してそのまま掛ける。更に制服を着て七つ夜の刃を直し、ポケットにしまう。

青年も良く見れば使っていた小太刀は既に彼の手にはなかった。おそらく袖の中に戻したのだろう。

「それじゃあ早速だが何から聞きたい?」

「そうですね・・・。」

考え込む志貴。彼には聞きたいことが多くあったので何から聞いて良いものか判断がつかなかった。

そこにやっと混乱した意識から立ち直ったシエルが志貴より先に質問した。

「ならまずあなたの事を聞かせてください。あなたは敵ですか、味方ですか?」

青年と初めて会った時と同じように真剣に質問するシエル。

そして青年は二人を見て、そして二人に対して真剣に答えた。

「俺は敵じゃあない。むしろ味方だ。そして・・・」

二人は青年の言葉に耳を傾ける。公園の広場は静まり返っていた。

「俺の名前は浅神・・・、浅神 燈真(あさがみ とうま)・・・」

青年の言葉が広場に木霊する。そして彼は続けて言った。

「神を超えようとした、くだらない一族の末裔さ・・・。」

彼の言葉は静かな・・・静かな公園の広場に木霊した―――――

 

 

 

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後書き

 

むちゃくちゃ長くなってしまいした

分割していて良かったと思っているヴァイ オリンです

やっとこの話の主人公の名前を皆さんに知って貰えるようになりました

いや〜ここまで来るのは長かった

一体この話は何話までいくのだろうか・・・

それでは皆さんさようなら〜