今は夜―――――

外には殺人事件があったためか人の気配というものが殆どなかった。

故に空は雲がなく星が美しく輝いていたが、その美しさに魅了される人はいない。

外はせいぜい虫の音が小さく聞こえる程度のもので、静かに、静かに、静寂に満ちていた。

そしてここは公園―――――

公園は何の変哲もなかった。滑り台があれば鉄棒がある、ブランコがある。他にもいろいろな遊具があった。

周りを見渡せば公園の緑は紅葉を始め、紅く染まりだしていた。そして地面には落ち葉があり秋というものを感じさせる。

例のごとく公園には人はいなかった。二人の男を除いて。

彼らは公園の広場にいた。公園の広場はそれなりの広さがあり、野球やサッカーも出来なくはない広さだった。

ここも同じように緑が紅葉を始めていた。その光景がかもしだす雰囲気は穏やかなものである。

しかし二人はその光景を見る暇はなかった。

何故なら二人はこれから互いの思いの元、意志の元に闘い合うのだから・・・

 

 

 

二人の男は広場に着き、そして距離を取りお互いに向き合う。

一人は眼鏡を掛けた学生服の少年、遠野志貴。一人は黒衣を身に纏う未だ謎の青年。

青年は言った、事件のことを知りたかったら俺と闘えと・・・。

そして少年はそれに同意した、何故なら青年が事件には少年の大事な人達が関わっていると言ったから・・・。

二人は睨み合う。互いの意志をぶつけながら。時が流れるほど場の空気の緊張感が高まる。

「志貴。準備は良いか?」

青年は志貴に喋りかけた。

「呼び捨てなんですね。」

志貴は投げやりに答えた。恐らく志貴自身そんな事よりも既に闘いのことに意識が集中し始めているからであろう。

「そういえばそうだな。だが嫌な気はしないだろう?」

志貴の投げやりな答えに青年は気を悪くすることもなく普通に受け答えた。

――そういえば確かに・・・――

確かに志貴は嫌な気はしなかった。むしろ嬉しいというか、心が温かさで溢れるような感覚を覚えた。

その感覚に志貴は一瞬闘いのことを忘れる。だが頭を振ってすぐに頭の中を切り替えた。

「まあ、確かにそうです。」

志貴は渋々青年の言葉を認めたように喋った。

青年は志貴の言葉と態度を見て穏やかに笑った。

「そうかそうか、嫌な気はしなかったか。」

青年の態度を見て志貴は青年に対して不信感を積もらせる。

「そんなことよりもだ。闘う準備はもう良いか?」

青年は再び志貴に問う。その言葉を聞き、志貴はゆっくりと懐から自分の愛刀である七つ夜を取り出し、刃を出す。

そして眼鏡は取らなかった。

――あくまでもこれは殺し合い無しの闘いだ。この眼鏡は取るべきじゃない――

彼の眼鏡の下に眠っているものは直死の魔眼。捉える対象に線や点が見えるのなら何者をも殺せる魔眼。

故に志貴は眼鏡を取らなかった。

「俺はもう良いです。あなたの方こそ良いんですか?」

今度は志貴の方から青年に聞いた。

「お前眼鏡を取らなくても良いのか?」

「構いません。気にしないでください。」

志貴は言い放った。青年は志貴の纏う雰囲気を感じ取って志貴の言葉に納得した。

「良いみたいだな。なら、そろそろ闘うか。」

言いながら青年は自分の右腕を左腕の袖の中に入れる。そしてその手を引き抜く。

引き抜かれた右手には黒い鞘に収められた一本の小太刀があった。青年は黒い鞘から小太刀を引き抜き、鞘を袖の中に戻す。

姿を現したその小太刀は刃も峰も黒く輝いていた。そのためかその小太刀が禍々しく志貴には見えた。

――俺の七つ夜よりも少し長いな、そしてあの人は俺よりも背が少し高い。間合いの広さは向こうが上か――

志貴は冷静に相手を分析し、身構える。同じように青年も身構える。

「では・・・、始めるとするか!」

青年の言葉をきっかけに二人は地面を蹴り、己の対峙する者へとその身を投じた。

 

 

 

互いに駆け寄りあい激突する二人。激突した瞬間に金属音が数回鳴り響く。そして互いに相手がいた場所で止まり、相手の方

へと向きを変える。

「やるじゃねえか。」

「あなたの方こそ。」

青年の右頬から、そして志貴の左頬から一筋の血が流れていた。二人とも自分の血を拭う。

「だがまだ終わりじゃないぜ!」

青年は小太刀を持つ右手を後ろに構えながら志貴に向かう。志貴は構える。そして青年の右手が振り上がる。

それを見て志貴は振り下ろされる小太刀の軌道上に七つ夜を置く。しかし小太刀は振り下ろされなかった。

青年は志貴の行動を即座に判断して、己の身を屈め振り下ろしから突きへと変えた。その突きは志貴の左肩を見据えていた。

――なっ・・・――

相手の対応の早さに志貴は驚く。だが驚きながらもその突きを左足を下げ、半身の状態になって避ける。そして青年の突きが

志貴がいた場所を突き抜ける。

「甘いな。」

囁く様に青年は言った。そして青年は志貴の右脇腹に左足で膝蹴りを入れる。志貴の体勢が崩れ、表情が曇る。

青年はその機を見逃さずに突き出した右手を戻し、振り上げて小太刀で志貴に斬りかかる。小太刀は志貴に迫る。

――間違いない!今度こそ来る!――

志貴は感覚でそれを悟り、自分の左肩に七つ夜を向かわせる。

そして志貴は小太刀を今度こそ七つ夜で受け止めた。再び高い金属音が鳴り響く。

「なにっ!」

驚く青年。どうやら受け止められるとは思わなかったようだ。

志貴はこれを好機と見て左手に拳を作り、相手の右脇腹を狙う。

「ちっ!」

青年は体を捻る。しかし完全には避けられず、拳の半分が彼の脇腹に突き刺さる。

体を捻った動作を利用して青年は志貴から離れ距離を置く。志貴はそれを目で追う。

「お〜、痛ぇ〜。」

脇腹を押さえながら青年は志貴を見る。

「それは俺もですよ。」

志貴も同じように脇腹を押さえ、脇腹に意識を集中し具合を探っていた。

――問題は・・・、なさそうだな――

脇腹の具合を判断して今度は青年に意識を集中し始める。

「確かに。しかし流石、七夜の者だけあるな。さっきの攻撃を完璧に止めるとは。」

青年はお喋りをするように普通に喋る。しかし『七夜』という言葉に志貴は戸惑いを感じた。

「どうしてあなたが『七夜』なんて言葉を知っているんですか?」

志貴の怒気というか気迫の篭った言葉を聞いて青年は笑う。

「それを知りたかったら俺と闘いな。」

「そう・・・でしたね。知るために俺は闘っていたんでしたね。」

青年は構える。今一度、再び激突するために。そして志貴も同じように構える。

「それでは、第二ラウンドの開始だ・・・。」

青年は言った。そして互いに相手を再び見据え、そして再び激突を始めた・・・。

 

 

 

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後書き

 

少し短めになりました

一気に書こうかなと思いましたが分割した方がいいかなと思い分割しました

どうでしたかね、一様バトルものは初めてではありませんが上手く書けたか心配です

小説ってのは本当に難しいですね、他の方のをもっと見習いたいと思います

先程書いたとおり分割したので次の話はすぐに書けると・・・・・・思います

それでは次回も会えることを楽しみにしていますヴァイ オリンでした