殺人貴の言葉に真のシニガミと化す死神――――

 

彼の者の殺気に歓喜する殺人貴――――

 

二人の志貴は再び激突する。

 

そう

 

殺人貴はジユウを得るために・・・

 

死神はダイジナモノを守るために・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の志貴 一つの『志貴』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ・・・、ハァ・・・」

 

「ハァ・・・、ハァ・・・」

 

一体どれほどの時が流れたのであろうか。

 

いや、ここは夢の中。時の流れを計るなどあまりに滑稽。

 

しかし、この緑溢れる森で対峙している二人を見れば自然と時の流れを計りたくなる。

 

二人とも既に満身創痍であった。

 

双方ともに着ていた制服は既に破れ果てている。

 

肩、脇腹、脚、腕、胸、背中・・・。

 

ありとあらゆるところが傷付いていた。

 

唯一違う点があるとすれば・・・。

 

――くそ!まずいな。左腕が・・・――

 

死神の左腕の線が増えていたことだ。

 

――やばいぞ、これじゃあ後動かせて一回ってところか・・・――

 

死神は自分の左腕を押さえ、状況を確認する。

 

「まさかここまでやるとは・・・。流石は我が半身ということか。」

 

感心する様に殺人貴は言う。

 

「だがその腕は既に限界だ、ここにきて覚悟の差が現れたな。」

 

勝利を確信したかの様に殺人貴は言う。

 

「油断すると足元すくわれるぞ、勝負の結果の箱は開けてみないとわからないだろう?」

 

余裕あり気に返答する死神。しかし・・・。

 

――さぁ、ここからどうする?――

 

その思考と共にこれからの戦術を検討する。

 

頭の中に戦術的思考を張り巡らせていく、その結果は・・・。

 

――だめだ!勝てる方法がわからない。このままいけばジリ貧、良くて相討ちか・・・――

 

死神は自分の回答に絶望し、気力が削がれていく。

 

全身から力が抜け始め、自然と顔が俯く。

 

――何を考えているんだ俺は!――

 

自分が作りあげた回答を心の中で蹴り飛ばす。

 

――今までにもこんな事があったじゃないか!そして何とかしてきた・・・。方法がないからって諦めて堪るか!――

 

今までの死闘の共演者を思い出す。

 

混沌の獣王、ネロ・カオス。

 

永遠を夢見た転生者、ミハイル・ロア・バルダムヨォン

 

破壊する赤き鬼神、軋間紅摩

 

嘲笑う虚言の王、ワラキアの夜

 

彼の者達と対峙した時も同じような状況に陥った。

 

だが死神は今生きている。

 

――負けない…、絶対に負けない。みんなは俺が守る!――

 

殺人貴を今一度睨む死神。そしてそれに答えるように殺人貴は言う。

 

「まだ諦めていないのか、殊勝な心掛けだ。だが俺はもう十分だ。間違いなく究極の死闘だった。」

 

今までの死闘という劇を思い出し満足気になる殺人貴。

 

「言うまでもないと思うが、お前が俺に勝つなど最早ないと判っているだろう?」

 

「・・・・・・・・・。」

 

沈黙で肯定の意味を表す死神。続けて殺人貴は言う。

 

「だから終わらせてやろう。今まで俺を蹂躙してきた事を悔いて死ね。」

 

言い切ると同時に樹の幹へと姿を隠し、そのまま消える殺人貴。

 

――何・・・――

 

殺人貴の行動に驚く死神。

 

死神は気配を感じようと神経を集中する。だが・・・

 

――気配はある、気配はあるが・・・――

 

その気配は死神を中心とし、前後左右、頭上、ありとあらゆる空間にあった。

 

殺人貴の姿を当てもなく追う。

 

――どこだ・・・、どこにいる。――

 

死神は殺人貴の姿を捜す、探す、サガス、さがす・・・。

 

 

 

 

突然背中に痛みが走る。

 

――なに!――

 

後ろへ振り向きながら七つ夜を振るう。しかし、空を切るだけであった。

 

すぐにその場を離れる。

 

また背中に痛みが走る!

 

――どうなっているんだ!――

 

訳もわからず逃げ出す死神。その行動を境に・・・、

 

一閃、二閃、三閃と死神の近くに何かが駆け抜け、死神の体に傷を刻み付けていく。

 

――楽しんでやがる!「悔いろ」ってのはこういう意味かよ・・・――

 

その間にも切り刻まれる死神。

 

不意に攻撃が止み、樹に背中を預ける形で逃げ込む。

 

どこからともなく声が聞こえる。

 

「どうだ、少しは後悔をしてくれたか?死神。」

 

その声に応えることが出来ない程死神は疲弊しきっていた。

 

――くそぉ、どこにいるんだ・・・――

 

力なく周りを見渡す死神。

 

――もうこのままなら死ぬのは確実だ。どうする、どうする・・・――

 

考え込む死神にある一つの案が思い浮かぶ。

 

――俺が死ぬまでこの状況は変わらない。奴が優位なのも変わらない。なら・・・――

 

その案と共にゆっくりと立ち上がる死神。

 

――賭けるしかない!――

 

そして・・・

 

七つ夜の刃を直し

 

目を閉じ、全身の力を抜き

 

自然体に構える

 

 

 

死神の行動の一部始終を気配を残し、移動しながら見る殺人貴。

 

――諦めたというのか?いや、何だこの感覚は・・・――

 

疑問符をあげる殺人貴。そして今一度死神に集中する。

 

――俺が優位なのは変わってない・・・。現状を見れば俺の勝利は確実。だが・・・――

 

再び疑問符があがる。

 

――だが何だこの不安とも恐怖とも取れぬ感覚は・・・――

 

殺人貴は悩む。殺るべきか、様子を見るべきか。

 

そして、

 

――このまま少し様子を見るか――

 

より確実な惨殺を得るための行動をとった。

 

 

 

殺人貴が悩む間、死神は・・・

 

全感覚、全神経を総動員し集中していた。

 

――集中しろ、集中するんだ・・・――

 

――俺にはもう後がない、全身全霊を賭けてあいつを感じ取るんだ――

 

更にセカイへと入っていく死神。すると・・・

 

トン・・・、トン・・、トン・・・・・・、トン、トン・・・・、

 

奴の足音らしきものが聞こえる。

 

死神は更に更に深く、フカク、ふかくセカイに入る。

 

トン・・・・・・・、トン・、トン・・・、トン・・・・、トン・・・、トン・・・・、ト

 

「そこだぁ!!」

 

その言葉と同時に七つ夜を抜き、ある樹の枝へと一瞬で跳躍する。

 

殺人貴の視界を死神が埋める。

 

「なにぃ!」

 

驚愕する殺人貴。そして死神は七つ夜を振るう。

 

だが七つ夜は空を切るだけだった。

 

殺人貴は自らの体勢を不安定にし、枝から落ちる形で死神の攻撃をやり過ごした。

 

落ちていきながら殺人貴は言う。

 

「残念だったな、しにが・・何!」

 

再び驚愕する殺人貴。何故なら死神が追ってきたからである。しかし・・・

 

――俺が先に着地する――

 

死神の速度と高さを計算し、次の展開を思考する殺人貴。

 

――だめだ!追いつけない。このままじゃ・・・――

 

死ぬ・・・

 

――ふざけるな!諦めて堪るか・・・、諦めて堪るか!!――

 

「うおおおおおおおぉぉ!」

 

吼える死神。同時に左腕に七つ夜を持ち、目の前の空間を殺す。

 

殺人貴と死神の距離が詰まる。

 

三度驚愕する殺人貴。死神はそんな殺人貴に全力で右手の掌低を鳩尾に放つ。

 

苦悶する殺人貴。落ちていく殺人貴。そして地面へと叩き付けられる。

 

その衝撃と共に殺人貴の手から七つ夜が離れる。

 

「しまっ・・」

 

言い切る前に死神が馬乗りの状態になり、殺人貴の心臓に七つ夜を突き立てる。

 

「・・・・・。」

 

「・・・・・。」

 

沈黙と静寂が二人を包む。

 

二人は見詰め合っていた。どちらが殺し、どちらが殺されるか・・・。決定的だった。

 

「どうした、殺らんのか?」

 

殺人貴は問う。だが死神は答えない。

 

「殺るなら早くしろ。先程の俺の技とお前の攻撃で最早動けん、お前なら痛みを感じずに殺れるだろう。」

 

自嘲気味に言う殺人貴。

 

その言葉に死神はコタエタ。

 

「・・・で・・・・な・・・・。」

 

「なに?」

 

自分の耳を疑う殺人貴。だが死神は言う。

 

「出来ない・・・。」

 

驚く殺人貴。

 

「何を馬鹿なことを・・・、早く止めを刺せ。さもなくばお前が死ぬぞ。」

 

「それでも出来ない・・・。」

 

「ふざけるな!ではまたお前の大事なものが危険に晒されて良いと言うのか!」

 

「・・・それでも・・出来ない・・・。」

 

死神が突き立てているカマが震えだす。

 

「出来ない・・・できないよぉ・・・・・。」

 

死神は懺悔する様に言う。

 

「だって・・・」

 

死神のカマが・・・・・・・・・・・・・落ちる。

 

「だって君は俺だから・・・。」

 

その死神の言葉が

 

殺人貴のトドメとなった・・・。

 

 

 

 

 

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後書き

 

すいませんみなさん正直私はパソコンに不慣れなところがありまして、

読みづらくてすいません。

今回は少し長めになりました。

思ってもいませんでしたよ。

話は変わりますが、仮に私のSSを気に入ってくれた人がいましたら、

お手数ですが掲示板の方に足跡を残してくれませんか。

正直反応が気になります。何でもいいから書いてくださ〜ぃ。

気に入ってもらえたら又書きたいと思いますので。

ちなみに私はレンがいてシオンがいて「月姫」だと思っています。

では次回をお楽しみに〜〜〜。