――――夜、遠野志貴は自分の部屋にいた。

 

「さて、もうそろそろ寝るとしますか。」

 

 ベッドに入ろうとして、ふと窓の外を見た。

 

「ああそうか、今日は満月だったのか――――――――――。」

 

 月は空高くあり、輝き、全てのものに安らぎを与えていた、それはまるで母親のように。

 

 しかし、遠野志貴には月が哀しく泣いている様に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七つの夜を駆ける殺人貴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおっといけない、早く寝ないとまた秋葉にどやされるよ。」

 

 その言葉と同時に今までの記憶が鮮烈に思い出される。無意識に体が震えだす。

 

 すぐさまベッドへ向かい、布団をかぶる志貴。

 

 そこへ一匹の黒猫がやって来る。

 

「やあレン、今日は一緒に寝るかい?」

 

 レンと呼ばれた黒猫は志貴のベッドに飛び乗り枕元で丸くなる。

 

 志貴はそれを肯定の意味と取った。

 

「そうか、それじゃおやすみレン。」

 

 その一言とともに遠野志貴はゆっくりと眠りについた―――――――。

 

 

 

 

 

 その後、一匹の黒猫は不意に起き上がり、一人の少女へと変わった。

 

 その瞳は遠野志貴が月に感じたようにどこか哀しげだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――――ん、――――あれ、ここは…。」

 

 遠野志貴は不意に覚醒した。

 

 それと同時に自分の体を触ったり、自分自身を確認したりしていた。

 

 服はいつもの制服を着ており、ポケットをまさぐれば想像通りナイフがある感触があった。

 

「なんだ、これは――――。」

 

 夢だ――と遠野志貴は自覚した。

 

 そして今一度、今度は自分がどこにいるのかを確認しようとした。

 

 そこは森だった。何の手入れもなくただ草が生え、ただ樹が生えている、そんな森だった。

 

 しかし遠野志貴には見覚えがあった。ないはずがない。そう、ここは――――――――――――。

 

「七夜の森か・・・。」

 

 記憶ははっきりしないが、間違いなく自分が幼い頃生活していた家を囲んでいた森だった。

 

 どこか懐かしく、何故か哀しみが溢れてくる森だった。

 

 だが遠野志貴が一番思っていたことは・・・。

 

「どうして、今こんな夢を・・・・。」

 

 そう遠野志貴にとって今になって何故こんな夢を見ているのかということだった。

 

 以前にもこんな夢を見ていた。

 

 しかし、それには原因があったし、その事件は解決したともはっきり判っていた。

 

 だから遠野志貴は判らなかった。自分が何故こんな夢を見ているのか。

 

「まあいいか。どうせ夢だし。」

 

 そして遠野志貴は森を探索し始めた。

 

 

 

 

 

 

 時間の感覚は判らなかったが、十数分歩いたところで何かの足音を聞いた気がして、自然に・・・

 

「誰だ!」

 

 と言っていた。

 

 足音はその声に驚くことなく、リズムを変えずに淡々と遠野志貴に近づき遠野志貴の前に現れた。

 

「なっ・・・!」

 

 遠野志貴は驚いた。

 

 それもそのはず、目の前にいたのは他ならぬ自分自身だったのだから。

 

 違うところがあるとすればそれは少し目つきが鋭く、全身から人を寄せ付けない気迫があった。

 

「よう、死神。」

 

 それの名は七夜志貴。もう一人の自分とも言うべきモノだった。

 

 そう――――だった。

 

「何故・・・」

 

 お前がと言う前に

 

「お前が・・・、なんて言ってくれるなよ遠野志貴。」

 

 と七夜志貴は言う。

 

 その言葉に驚きを覚えるが遠野志貴は言う。

 

「何故お前がここにいるんだ!お前は間違いなく・・・。」

 

 死んだはずだ。と続けては言えなかった。

 

 その言葉を聞き七夜志貴は笑い出した。

 

「ククク・・、ハハハハ!何を言っているんだお前は!」

 

 そのセリフに今一度遠野志貴は驚きだした。

 

「お前らしいといえば、お前らしい。良かろう説明してやる。とはいえ俺自身も判らぬところはあるが

 な・・・。」

 

 そう言い七夜志貴は語りだす。

 

「まず俺が死んではいなかったことだが、お前はあの赤い鬼神に殺されきったと思ったのだろうが、よ

 く思い出せ、結局あれは俺達にとっての死神では無かっただろう。だから俺は生きている。」

 

 その言葉に遠野志貴は言い返す。

 

「だからといってお前が生きている理由にはならないだろう!」

 

「愚か者が。俺達二人は言うならば『志貴』という起源から大きく二つに派生したモノだ。だから性格

 、人格は違えども本質的な『志貴』は変わらんと言うことだ。理解したか?」

 

 その言葉に何故か遠野志貴は納得せざるを得なかった。

 

「次に俺が現れた理由だが、今宵は満月だっただろう。満月とは即ち魔が最もはびこる時、故に七夜の

 血が最も騒ぐ時だ。だから俺が現れたということだ。」

 

 また遠野志貴は言い返す。

 

「馬鹿な!今までにだって満月の時はあったじゃないか!何で今になって・・・。」

 

 遠野志貴の言葉は自然と荒くなっていた

 

「それだ。確かに今までにも満月の時はあった。何故今になって・・・。」

 

 七夜志貴は考え込んでいた

 

 しかし・・・

 

「まあ、それは些細なことだ。俺にとっては現状のことの方が重要だ。」

 

 それと同時に七つ夜を抜き遠野志貴を見る

 

「なっ・・・。」

 

 再び遠野志貴は驚いた

 

「さっきから驚いてばかりだな死神。何を驚くことがある、俺達二人が出会いすることといえば決まっ

 ているだろう。過去、数度闘いあったがどれも納得いくものではなかった。今度こそ完膚なきまで殺

 らさして貰う。」

 

「馬鹿な!どうして俺とお前が闘りあわなければならないんだ!」

 

「お前の事情等関係ない。まあ強いて言うなら俺は自由が欲しいというところか・・・。お前を殺せば自

 然と俺が表に出ることになる。理由は先程言ったように俺たちは一つの『志貴』から生まれ出でたモ

 ノだからな。」

 

「だったら、それだったら交代何なり他の方法があるんじゃないのか?」

 

「下らん。それは自由ではなく俺が飼われていることと何ら変わらんではないか!」

 

 殺人貴は初めて感情らしい感情を表した

 

「さあ、いい加減覚悟を決めろ死神。俺を失望させるな。」

 

 その言葉と共に圧倒的な殺気を放つ殺人貴

 

 その言葉に死神は強靭な、覆ることのない意思を感じずにはいられなかった

 

 そして、ゆっくり――――――――――――

 

 ただ、ゆっくりと――――――――――――

 

 眼鏡をはずし、ポケットに入れ、七つ夜を抜く

 

 そして言う

 

「どうしても殺るのか、殺人貴。」

 

 死神は殺人貴を見据える

 

「今更命乞いか、死神。」

 

 殺人貴は死神を見据える

 

 

 

 

 

 

 

 今

 

 七つの夜を駆ける殺人貴と

 

 天使の笑みを持つ死神が

 

 マジリアウ

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 

後書き

 

 

ということで後書きです

 

初めての方も、そうでない方もこんにちわヴァイ オリンです

 

今回片月さんのところへ投稿させて貰いました

 

SSなんて初めて書きましたよ

 

しかも前後編

 

書く量が多くなりそうなんで分けたんですが・・・

 

なにぶん初めてなもんで面白くなかったかもしれませんね

 

もしよければ後編の方もお付き合いしてください

 

では失礼!

 

おっといけない

 

話の設定はあくまで私自身の解釈で書きましたのでそこのところはご了承ください