一瞬だった、一瞬で四人の同朋が灰となって夜の町に消え失せた。
「・・・ありえん、貴様何者だ!?この町にいる代行者は女の筈だ!」
この状況に追いついていない死者が叫ぶ、その顔は怒りと困惑が入り混じっていた。
「誰って・・・・一般人?」
「ふ、ふざけるな!一般人に我々死者を殺す事などできん!」
「あれ?死者なの?言葉を喋っているからてっきり死徒かと思ったんだけどなぁ。」
「つまり、新しい死者という訳だ遠野志貴。」
「ぎっ・・!」
死者が短い悲鳴をあげて人としての形を崩しながら仲間と同じ運命を辿る。
「京介!」
沙由香が京介に飛びつく
「うわ!やめろ馬鹿、今は話中だ!」
急いで沙由香を引き離す。
「あの〜、話って何ですか?」
遠慮がちに志貴が尋ねる。
「ん?ああ、少し手伝って欲しい事があるんだ。」
「手伝って欲しい事ですか。」
「そう、その眼である物を殺して欲しい。」
「・・・・・どこでこの眼の事を?」
「噂というものはどこからともなくやって来るもんなんだよ、まあ信憑性はゼロに近かったけどね。」
「そうですか、で、殺して欲しい物って何ですか?」
「おっ、やってくれるの?」
「物によります、あとさっきの死者についても何か知っている様ですし。」
「ありがとう!話がわかる人でホントよかった〜〜。あっ、言い難いけどもう1つお願いが。」
「何でしょう?」
「泊めてくれ。」
気まずそうな顔になる。
「・・・俺はいいんですけど、妹に許可を取ってくれるなら。」
「う〜〜ん、その表情からするとかなりの難題みたいだけど、ま、やってみるよ。」
「それじゃあ行きますか、えっと名前は?」
「ああ!そうだった、俺は火蓮京介、京介でいいよ。それとこいつが熊木沙由香、呼び方は・・・まあ何でもいいか。」
「わかりました、それじゃあ俺のことは志貴で。」
こうして、三人は屋敷へと歩を進める。
歩きながら遠野家のメンバーの説明していく。
三十分ほど歩くと遠野の屋敷が見えてきた、志貴の顔色がだんだん悪くなっていく。
「どうした志貴?顔色が悪いぞ。」
「いえ、ただ地獄に向かって歩いてる気がして。」
「そんなにやばいのか?」
「京介さんはまだいいんですけど、沙由香ちゃんがちょっと。」
「拙いのか?なんで?」
「直接秋葉に話せればいいんですけど今の時間じゃ寝てるから話すのは後になるんですよ。そうなると琥珀さん達に先に説明しないといけないんですけど、そうすると明日の朝最初に会う人が説明するじゃないですか、そこで伝える人が説明の仕方に少々、いえ、かなり
誤解を招く説明をすると思うんですよ。」
「なるほど、じゃあその二人に見つからないようにしないとな。」
「お願いします、あっ、裏口から入らないと。こっちです。」
志貴に案内されて裏口の前に立つ。
「・・・・それじゃあ、行きますよ。」
無言で頷く京介と沙由香。志貴が扉を開ける、運悪くその先には二人の使用人がいた。
「あっ、お帰りなさい志貴さん今日は遅かったですね〜。」
「お帰りなさいませ志貴さま。」
「・・・・・ああ、ただいま。二人に紹介しないといけない人達がいるんだけど。」
「あらら、もしかして女の方ですか〜?」
楽しそうに聞いてくる琥珀。
「1人はね、けどもう1人は男だから。」
「初めまして、火蓮京介といいます。」
「熊木沙由香です。」
「琥珀と申します、志貴さん随分と若い子を連れてきましたね〜。」
「姉さん!姉が失礼いたしました、翡翠と申します、お部屋は直ぐに用意いたします。2部屋でよろしいですか?」
「はい、お願いし「いや。」・・・・沙由香さん?」
「だって魔力が足りてないんでしょ?今は一緒に居たいし、それに供給するなら近い方がいいでしょう?」
「それは明日でも出来「命令よ。」・・・・・わかった。」
「それでは一部屋でよろしいですね、では失礼します。」
そう言うと翡翠は準備に向かった。
「魔力供給って、自分で作れないんですか?」
不思議に思った志貴が尋ねる。
「いや、作ってるよ、ただ発生場所が違うだけで。」
「それじゃあ沙由香ちゃんの中にそれがあると。」
「そういうこと。」
「何でそんな事をしたんです?」
「始めから言うと四年前まで退魔組織にいたんだよ俺、その時にある仕事をした家でこいつを見つけてね、養子だったんだがよく調べてみると俺の一族だったんだ。」
「それで?」
「実は今の俺の一族俺とこいつだけなんだよ、だから近くに置いておこうとしたんだけどボスに断られて、それで頭にきたから契約結んでやろうとしてね、最後の最後で邪魔されて血の契約どころか心臓まで渡しちゃって今の状態に。」
「何で断られたんですか?」
「ああ、それはこいつに火蓮の才能がまったく無「京介?」・・・・という訳だ。」
「おかげで五百メートルくらい離れると完全に供給されなくなる。」
「完全にって距離によって変わるんですか?」
「うん、近いほど多く供給される。」
「なるほど。」
「残念でしたね志貴さん、今回はガードが硬いですよ〜。」
「何でそうなるんですか、あ、そうだ琥珀さん、秋葉には俺から言いますから琥珀さんから先に言わないで下さいよ。」
「ええ〜〜、何でですか?」
顔をニヤつかせながら尋ねてくる。
「とにかく駄目です。」
「・・・・わかりました、私は何も言いません。」
「ありがとうございます。」
「志貴、先に寝たらどうだ?」
「そうですね、お先に失礼します。」
欠伸をするとゆっくりと自分の部屋に戻っていった。