そして現在、堪えきれなくなり再び笑っている京介と、無表情の沙由香、同じく無表情だが頭の中ではセブンの改造計画を練っているシエルがいた。

「まったく、セブンがあんなこと言わなければアルクェイドに邪魔されずに遠野君と遊ぶことが出来たのに。」

シエルが愚痴ると、京介が笑うのを止めた、顔が真剣になっている。

「遠野とは遠野志貴ですか?」

シエルが不思議そうな顔をする

「そうですよ、しかし変わってますね、真祖ではなく一般人に興味を持つとは。遠野君に何か用ですか?」

「その人がある魔眼を持っていると知人に聞きましてね。」

「そうですか、遠野君、いえ、あの魔眼は本当にいろいろ引き寄せますね、『歩く太陽』にまで引き寄せるとは。しかし、『直死の魔眼』が目当てとなると見過ごすわけにはいきません。」

京介が、やれやれ、と肩をすくめる。

「あなたは万全ではないようですし、今度にしませんか?」

再び無表情になるシエル、既に両手に黒鍵を持っている。

「無理です、彼は既に2人の二十七祖と戦っています、これ以上彼を酷使したくありません。」

「よほど大切に思っているようですがそうはいきません、今は彼の魔眼が必要なのです。」

「・・・・・・そうですか、なら殺し合うしかありませんね。」

「・・・・・・・・残念です貴方にもう用はありません。」

邪魔をするなら殺すとでもいうように、周囲を殺気で埋める。

京介はバックを沙由香に預ける、すると沙由香は哀しそうな目になる。

「・・また行くの?」

「大丈夫、すぐに終わらせるから下で待ってろ。」

「・・・・・・うん。」

返事をすると下に下りていった。

「シエルさん、俺の能力は知っていますか?」

「いいえ、何も報告は受けていません。」

「・・・どうやらあなたは上司に恵まれていないようですね。」

「まったくです。」

シエルが話し終えると京介は走り出した、シエルは右手の黒鍵を全て投げると後を追った、

放たれた三本の黒鍵が京介に迫るが、跳躍し、難なくこれをかわし、そのままビルとビルの狭い隙間を飛び交いながら降りていく。

「――――っ!本当に人間ですかあれは!」

もっとも、シエル自身も同じ行動をしているので人の事は言えないが。

文句を言いつつ左手の黒鍵を放つが、再びかわされる、京介は地面に着地すると、見向きもせずに走り出した。

「逃がしません!」

左右に構えた黒鍵を同時に放ち、もう三本を時間差で放つ、京介の前方の道に六本が突き刺さり、後方を残りの三本が退路を断つ。

「やれやれ、おとなしく撒いてあげようとしているのに、しつこいですよ〜〜。」

そういいつつ腰からナイフを抜き取る。

「やっとやる気を出してくれましたか、正直逃げるだけの人を殺すのは胸が痛むんです。」

「そうですか、なら相手をしてあげましょう。」

そう言うと、有ろう事か自分の右掌を切り裂いた、勿論、傷口からは大量の血が溢れている。

しかし、シエルは油断なくそれを見定めている。すると、突然京介の右手が炎で包まれ、だんだん剣の形になっていく、長さは一メートル半ぐらいで日本刀を模している。

「・・・・・それがあなたの能力ですか?太陽と呼ばれる割に出てきたのが炎の剣とは、笑わせてくれますね。」

「まあ、これでは到底太陽なんて呼ばれませんよ。」

「あなたの血がそれを作っているんですか?」

「俺の一族、と言っても俺だけですが、血に魔力を流すとこういう風になるんですよ。これでも温度は一万度はあるはずなんですけどね。」

「驚きました、まだ温度は上がるんですか?」

「術によりますが、最大で太陽の中心部は再現できますよ。」

シエルはさらに驚いた、簡単に言えば太陽を作れるのだ、もうこれは魔法の域に達している、しかし、目の前の人間は魔法使いではない。

「質問が2つ有ります。」

「何でしょう?」

「それだけの能力があるのに何故魔法使いに属さないのですか?」

「この能力は生まれながらに持ちえたものです、苦労したのに得られない者からしてみれば目障りなだけですから。」

簡潔に京介は答える。

「なるほど。」

つまり、世界が彼を否定しているのだ、認める事は今までの自分を否定する事になるから。

「まあ、ゼルレッチは認めてくれましたけどね、それも1つの才能だ、ってね。もう1つの質問は?」

実はこれが一番の疑問だった。

「・・・・・・熱くないんですか?」

「魔力で覆えば大丈夫です。」

普通では有り得ないことだ、太陽の熱を防ぐ程の魔力を人間が持てる筈がない。

しかし、シエルは納得した、生まれながらあれだけの能力があるのだ、身体をいじった様に魔力も変化させていったのだろう。

「質問は終わりですか?」

「ええ。」

「それじゃあ始めましょう。」

両者が武器を構える、といってもシエルの所持している黒鍵は五本しかない、両者の間に三本突き刺さっているが拾う暇などない、圧倒的に不利なのだから。

沈黙は三秒、赤と黒の影が静かながらも盛大に交錯する。