救いの女神は法衣服を着た女性だった。
「・・・・失礼ですが、どちら様?」
二十階のビルを階段も使わないで登って来たのだから人間かどうか怪しいが、とりあえず笑顔と最低限の礼儀を以って聞いてみた。
「埋葬機関、第七司教のシエルです。」
「ああ、教会の方でしたか、何の用でしょう?」
笑顔のまま再び尋ねる。
「わかるはずです、四年前に消息を絶った封印指定が現われたら捕まえるのが私の仕事ですから。」
無表情のまま告げるシエルと、ああそうか、と納得する男はとても相対的だった。
「いろんな所から依頼が来たでしょう?」
そこで初めてシエルは困惑の表情になった。
「・・・ええ、教会だけでなく魔術協会、その他少なくとも三十もの機関から依頼が来ていますよ。まったく、どんな事をしたらこんなに来るんですか?」
すると、男は少し困った顔になった。
「あっちゃ〜〜、そんなに来てますか〜。」
「京介は恨みを買いやすいもんね。」
沙由香が後ろで呟く、その顔は微かに笑っていた。
「あなたは誰ですか?」
シエルは今気がついたように聞いた。
すると、沙由香はビクリと驚き急いで京介と呼んだ男の後ろに隠れて顔だけを出して言った。
「・・・・・熊木沙由香。」
シエルは今の行動がわからないという顔をしている。
「すいませんね、こいつ人見知りなもんで。」
ああ、と納得した。
「それで、俺を捕まえるんですか?」
つまらなそうに京介は尋ねる。
「出来ればそうしたいのですがね、残念ながら今の武装ではまともに闘う事すら出来ません。」
事実、シエルは今二十本の黒鍵しか所持していなかった。
「?何故です?依頼を受けたならそれ相応の武装でこないと。聖典があるでしょうに。」
不思議そうに京介が尋ねる。
シエルは不機嫌そうに言う。
「第七聖典はストライキ中です。」
京介はしばらくポカンとした表情になり、突然笑い出した。
「・・・・・っ、くっくっくっ、あっははははっははははは!」
「・・・・そんなに可笑しいですか?」
シエルはさらに不機嫌になっていく。
「・・失礼、でも何故ですか?聖典がストライキなんて余程の事情が?」
笑いを堪えながら聞いてみる。
「そ、それは。」
そして時間は遡る。