「ここが泰山というとこですか・・・」

次の日遠坂に連れられてやってきたセイバーは、泰山の前でそう言った。

「ええここよ。じゃあ入りましょうか。」

遠坂はそう言ってさっさと入っていってしまった。

 

 

 

 

 

 

セイバーさんのバイト

 

 

 

 

 

「マスター昨日電話したとおりバイト希望の子連れてきたわよー」

あわてて俺たちが入ったとき遠坂はすでに泰山のマスターと話をしているところだった。

「おお!!そうアルか!!で?その子はどこアルか?」

マスターはまさしくと言った感じの中国人のしゃべり方でそう尋ねた。

すると遠坂はセイバーを呼び自分の横に並ばせ、

「この子よ、名前はセイバーって言うの」

「セイバーと言います。これからよろしくお願いします」

と自己紹介した。

「この子アルか!アイヤ〜、ベッピンさんアルね〜」

店主はどうやらセイバーを気に入ったもよう。

「じゃー早速奥に行って着替えてきてアル」

だからといって、いきなりそれはないだろう・・・。

「てっ店主!?面接というものはなくていいのですか!?」

セイバーもさすがに面食らっている。

さすがに面接もなしでいきなり採用となれば誰だって面食らうよなぁ・・・。

「だいじょうぶアル!セイバーさんくらい綺麗だとなにも問題ないアル!」

ハッハッハ・・・それは大問題じゃぁないだろうか・・・。

遠坂に頼んでまで戸籍を偽造した苦労はどうなる!?

採用してくれると言うなら、まあそれに越したことはないが・・・。

「じゃマスター。セイバーのことよろしくね」

「わかったアル」

どうやら遠坂はこれから帰るようだ。さて俺はどうするかな・・・

「帰るわよ、士郎」

「えっ、俺も一緒に帰るのか?」

とりあえず俺はセイバーがバイトしているところを少し見ていようと思っていた時遠坂はそういってきた。

「なによ、もしかして士郎セイバーが心配でここに残っていようとか考えてるんじゃないでしょうね」

「ああ、そのつもりなんだがそれがどうかしたのか?」

俺がここに残るとなにかあるのだろうか?

「あのねぇ・・・セイバーも子供じゃないんだからそんなことしなくていいでしょう?」

むっ確かに。セイバー見た目はあんなだけど俺たちより年上なんだよな・・・。

「そうですシロウ。私のことは何も心配することはございません」

「ほら、セイバーだってこういってるんだからさっさと帰るわよ」

まぁセイバーが言ってるんだったらしかたないか。

「ああ、わかった。それじゃセイバー、バイトがんばってな」

「はい、ありがとうございます」

俺と遠坂はそうして泰山をあとにした。

 

 

 

 

 

「ああ、わかった。それじゃセイバー、バイトがんばってな」

「はい、ありがとうございます」

そういってシロウ達は店を出て行った。

「それじゃ奥で着替えてきてアル」

「了解しました店主」

シロウにがんばってと言われた以上私はしっかりとやらないといけないだろう。

 

 

 

 

 

私は奥の部屋に行き用意された服に着替えることにした。

「なんなのでしょうかこの服は・・・」

私は取り出した服を見てそうつぶやいた。

「どうやって着ればいいのでしょうか・・・」

どうやらこの服はちゃいなふくと言うらしいが、着方がさっぱりわからない。

私が途方にくれていると、

「どうしたアルか?」なかなか着替え終えてこない私を心配したのか店主がそう聞いてきた。

「あの、店主。この服は着方がわからないのですが」

「ああ、着方アルか。その服が入っていたところに説明書があるアル」

説明書?・・・ああこれですか。気づきませんでした。

「はい店主ありました。ありがとうございます。すぐ着替えてそちらに行きますので」

「わかったアル」

なにはともあれこれでやっと着替えることができる。

「ココをこうやって・・・こうですか」

私は着替え終わり姿見で確認してみる。

「ふむ、異常はないようですね」

とりあえず説明書どおりにはなっている。が、

「なぜ足のところが破れているのでしょうか・・・」

私は姿見に映った自分を見てそう思う。恐らくは機動性のためと思われるがこれで大丈夫なんだろうか。

 

 

 

 

 

「店主、終わりました」

「おお〜〜〜!!萌え〜アルね〜」

突然店主はわけのわからないことを言ってくる。

「その、店主?萌え、とはなんでしょうか?」

「萌えは萌えアルね」

その萌えがわからないからきいたのですが・・・

「まぁ萌えに関してはどうでもいいですが、私はなにをすればいいのでしょうか」

「とりあえずお客さんが来たときに、いらっしゃいませ言うアル」

「いらっしゃいませ、ですか」

たしかに外食をしたときは店員はいつもそういっていたきがする。

「そうアル。そのあとお客さんに水とお絞りをだしてからから注文をとるアル」

なるほど。どうやらここも普通の飲食店と変わらないようだ。

シロウは心配していたがどこがおかしいのだろう?

「了解しました。店主必ずその使命果たして見せましょう!!」

「そこまで気合入れなくていいアルけどね・・・」

店主は微かに苦笑していた。

 

 

 

 

 

「来ませんね・・・」

開店して二時間いつ客が来るかと構えていたが一向に客が来ない。

「いつもこんな感じアル。だからそんなに構えなくていいアルよ」

いつもこんな感じといっているがこんなことで店をやっていけるのだろうか。

これならば私を雇う必要はないのではないのでわ・・・。

「けどそろそろ常連さんが来るはずアル」

この店には常連さんしか来ないんだろうか、私はそう考えていると

ガラガラガラ

どうやらその常連さんとやらがきたようだ。

「いらっしゃいませ」

私はそういい水とお絞りをその客に渡した。

「ご注文はなにでしょうか?」

そして店主に言われたとおり注文をとる。

しかし客は呆けたようにこちらをみるだけである。

「あの、ご注文は?」

私は再度聞いてみる。するとようやく、

「あ、ああ・・・それじゃマーボーとライスを」

と注文してくれた。

「はい、マーボーとライスですね。しばらくおまちください」

私は注文をもって店主のところにいった。しかし、

「はい、これ持っててアル」

注文を伝えてないのにすでに店主は用意を終えていた。

「あの、店主?まだ注文を伝えてないはずですが・・・」

不思議に思い聞いてみると店主は、

「常連さんだからなに頼むかくらいわかるアル」

そう教えてくれた。注文を間違えているわけではないので、私はそれを持っていった。

「おまちどうさまでした。マーボーとライスです」

そういって料理を出し私は下がろうとする。しかし、

「君、バイトの子?」

客にそう聞かれた。

「はい、そうですがそれがなにか?」

そんなこと聞いてどうするのだろうと思っていたら、

「いや、なんでもないんだ」

客はそう言った。

なんでもないならなんで聞くのだろう、と私は思ったが、相手は客。理由を尋ねるわけにはいかないので

「そうですか。それではごゆっくり」

私はそういうしかなかった。

その後二人ほど客が来たがどちらも似たような反応だった。

 

 

 

 

 

「そろそろ昼食あるね」

今は客が来ない時間なのだろう。店主はそう言った。

これは正直ありがたかった。なんせいつもはとっくに昼食など食べ終わっている時間なのである。

「そうですか。昼食は何なのですか?」

内心ウキウキしていたが、私は努めて冷静にきくことにした。

「マーボーとライスアル」

店主はそういった。

マーボーとライス。今日来た(といっても三人だが)すべての客が頼んでいたモノである。

おそらくはおいしいのでしょう。

「すぐ作るから、少し待っていてアル」

そういって店主は厨房に入っていった。

 

 

 

 

 

「お待ちどうアル」

店主が厨房に消えて十五分。マーボーが完成したのか店主はやってきた。

「ありがとうございます」

なんというかなぜこのマーボーというものはなぜこんなに赤いのでしょうか。

匂いも鼻の奥がツンとするような感じですし。

「では、いただきます」

しかし、こちらの空腹も限界に達している。

いまならなんでも食べれる、といった感じで一口目を食べてみる。

「・・・・・・・・・」

辛い・・・辛すぎます・・・

なぜこのようなものを平気で食べれるのでしょうか。

これを食べ物と呼んでもいいのか疑問に思えます。

「どうしたアルか、セイバーさん」

レンゲをくわえたまま固まっている私を心配してか店主が声をかけてくれる。

しかし、その間もどんどんマーボーを食べている。

このようなものを食べてなぜ平気なのだろうか・・・

「いえ、なんでもありません。どうぞお気遣いなく」

「セイバーさんも早く食べるネ」

・・・コレを早く食べろというのですか?

「すいません、あまりお腹が空いてないのでもう下げてくれませんか?」

これはウソです。

本当は空腹でふらふらなのですがこのようなものを食べたら消滅しかねません。

「そうだったアルか。じゃあ今は下げとくアル。お腹空いたら食べるネ」

フ・・フフフフフ・・・・私をこのような目に合わせるとは・・・・

シロウ、リン覚悟しておいてくださいね・・・・

 

 

 

 

 

「しかしセイバーをあの店に置いて大丈夫なのか?」

客間で魔術講座の休憩の時俺は遠坂に気になっていたことを聞いてみた。

「大丈夫でしょ。セイバーに食べれないものなんてないわよ」

遠坂はよほどセイバーの食欲魔人っぷりを信じているようだ。

俺だって信じてはいるがさすがにあのマーボーは無理じゃなかろうか。

大丈夫かなぁ―――と思っていると

「ただいま帰りました」

どうやらセイバーが帰ってきたようだ。

「ああ、お帰りセイ・・バー?」

―――なぜ完全武装をしていらっしゃるのでしょうか。

見えないはずの剣がしっかりと見えてるし。

「ど、どうしたんだせいばー」

俺は理由を尋ねてみる。

いや、なんとなく理由は分かってるんだけどね・・・

「シロウ・・・何故あのような店に私を行かせたのですか・・・

 あそこのものはすでに食べ物というのもおこがましいものばかり。

 そのようなものを私に食せというのですか?」

―――ああ、セイバーでも食べれないものがあったんだね・・・。

「い、いや俺はちゃんと止めようとしたんだぞ?

 しかも行かせたのは俺じゃなくて遠坂だろう?」

「なによセイバーにバイトしろって言ったのは士郎でしょ?

 私はただ店を紹介しただけ。

 それに止めようとしたって言っても止めなきゃ意味は無いのよ」

うわぁ、止めようとしたのを止めた本人がなにをなにをいいやがるのか。

「フフフ・・・私にしてみればどちらも同罪ですよ」 

そう言ってセイバーは魔力を込めだす。

「おっおい!!おちつけセイバー!!」

「そっそうよ、落ち着きなさいセイバー」

俺と遠坂はとりあえずなだめてみる。

「問答無用!!約束された勝利の剣ーーーーーーーーー!!!!!!!!」

しかし、それはセイバーには効かず俺たちは空の彼方に飛ばされていった。

 

 

 

 

 

 

翌日

「へぇ、『冬木の町で突然観測された光の柱、消えた中国料理店』かぁ、いったいなんなんだろうな」

「兄さん!!食事中に新聞を読まないでください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

えーと、やっと終わりました「セイバーさんのバイト」どうだったでしょうか?

個人的にはそれなりに楽しんで書くことができました。

それではまた次の作品(があれば)で会いましょう。

2005年 8月15日 ルクス