貧しさに負けず 〜コンビ二編〜

 

 

 

 

貧しさに負けず 〜コンビ二編〜

書いた貧乏人 どーが

 

 

 キーンコーンカーンコーン

「今日もようやく授業が終わったぜ。もう肩がこりにこって仕方ないったらありゃしない」

「よく言うよ・・・重役出勤でしかも昼間の授業全部突っ伏してたくせに」

「仕方ないだろ。肩がこったんだから・・・さて遠野君」

「なんだい有彦君」

「たまには男同士でつるもうじゃないか!」

「どうした、男のお前が男に熱をあげる・・・ちょっとまて、俺はそんな事に興味なんてないぞ!?」

「違うわい! 親友としての親睦を深めようかと思ったんだよ! 第一お前、最近妙に女ばっかりとつるんでるからな」

「お前がそんな事言うなんて・・・何か裏があるな?」

「ひどいわ! 遠野君、親友の私を疑うのごヘァあ!?」

「気色悪い声をだすな」

「たまにはいいじゃんかよう・・・男同士じゃないと言えない愚痴の一つや二つあるだろ」

「まあ・・・な」

 あるにはあるが、一つ二つなんて数じゃない。

「ようし、そうと決まればさっさと出るぞ! こんな机だらけの建物なんてもうこりごりだい!」

「さっきからびっくりマークばかりで、やけにハイテンションだな・・・

 愚痴を聞くだけでどうしてそんなに・・・ちょっとまて有彦、俺にはそんな趣味はないとさっき言ったはずだ」

「だーかーらー違うっちゅうに」

 まぁ、いっか。

 昔と違って学校に残る理由もない訳だし。

「行くならさっさと行くぞ。ところで何処に行きたいんだ?」

「とりあえず校門前にレッツラゴーだ!」

「校門?」

 校門。

 正門。

 反対は裏門。

 かつて有間家にいた頃は、裏門から通っていた。

 今は正門を使っての登下校。

 下校。

 秋葉がいたり、シエル先輩がいたり。

 はたまた、アルクェイドが待ち構えていたり。

 ・・・ふむ、ようするに。

「お前の目当てはだれじゃーーー!」

「痛いっ、けどお兄さまの愛なら、私は全部受け止めて見せるわぶぉぉ」

「有彦、最近打たれ強くなってないか?」

「もうそりゃお兄様の・・・いえ、なんでもないです」

 要するに、有彦は女性陣が目当てだと。っと、靴を履き替えないと・・・

「待て有彦、上履きを履き替え・・・お前、土足かよ!?」

「当然だ! 一々履き替えて時間を消費するなんざ下の下の芸人がするものだ!

 ちなみに授業中に教師に見つかることはない。廊下でも何故か注意されない」

 まぁ、有彦のような風貌を持つ男に喋りかけるまともな奴はいないだろう。

「おいどうした遠野、涙なんか流したりして・・・

 ははぁん、秋葉ちゃんを送り出す際に、

『秋葉よ、きれいだぞ・・・有彦、秋葉を、よろしく頼む』とかいう台詞を喋る時に泣く練習だな!?」

「はぁ・・・」

 有彦を完全に沈黙させるなら、線を切るなり点を突くなりしなければいけない。

 でもそんなことしません。

 有彦のせいで前科を問われるのは、何故かシャクに触るからです。

 だから俺は人を殺しません。

 でも殴りはします。

「ごべらぁ!?」

 

「あら、遠野君と乾君じゃありませんか」

「あいかわらずお二人は男性同士なのに仲がいいのですね」 

「やっほー、志貴ー」

 フルコンボでした。

「やぁシエル先輩秋葉ちゃん巨乳のきれいなお姉さん」

 変態がいます。 ←自分のこと、たなに上げてます

「遠野、そんな顔するなって。むしろこんな女性に囲まれて暮らしている遠野にどれだけの殺意が芽生えてきたか・・・

 でもこうしてめぐり合えたのも遠野のおかげ、よーし、お義兄ちゃんにジュースおごっちゃうぞー」

「まじっすか!?」

「ちょっと痛いって遠野! そんなに強く引っ張ったら足がもつれて痛い痛い痛い痛い引きずってるっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがコンビニ、と言うところですか?」

「あら、妹はここ初めてなの?」

「私は別にこういうところに来る必要はありませんから。

 ところで、そういった素振りを見せるあたり、アルクェイドさんはコンビニを利用するのですか?」

「そりゃもちろん。だって、夜中で開いてるのはコンビニしかないし」

 夜中コンビニを訪れる吸血鬼。

 むしろこの真っ昼間を堂々とコンビニに来店している吸血鬼。

 違和感を覚えない自分がいる辺り、まっとうな世界に戻れそうにありません。

「えっと、こういうところは初めてなので」

 むしろ戸惑っている妹がたまりません。

「シエルも、しょっちゅうコンビニのお世話になってるでしょ?」

「何で決め付けるんですか」

「だって、シエルって一人暮らしじゃない。だったらコンビニでさっさと買い物済ませちゃうでしょ」

「それはあなたのような面倒くさがり屋さんだけです。私はコンビニのお世話になる理由がありません」

「食べ物は?」

「自炊です」

「ジュースは? お菓子は? 雑誌は?」

「必要としません。日本は、水道の水はそのまま飲んでも大丈夫です」

「お金は?」

「ありません」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「なに言わせるんですかアルクェイド! ってあなた、いつのまにカゴをお菓子やらで満載してるんですか!」

「だってほら、おいしいじゃん」

「このブルジョワジーが!!」

「敵に塩を送るってやつで、少しくらいならおごってあげなくもないよ?」

「ぬぅぅぅ・・・」

「さて、シエルは私におごって欲しいかな?」

「これを、おねがいします」

「迷いがない!?」

「だっておごってくれるんでしょ?」

「まぁ、そうは言ったけど、私は真祖だし、シエルは教会の人間だし」

「あと、これとこれも」

「で、お幾ら?」

「どうにか300円以内に収めましたが、何か」

「・・・いや、少しくらいとは言ったけど。おごってもらう立場なんだから、いつもらしく図々しくいこうよ」

「いつもらしくってなんですか。図々しいのは貴女・・・」

「2、3000円くらい構わないわよ。ほら、私お金持ちだからー」

「でもほら、何か悪いですし」

「・・・ひょっとして、この金額でびびってる?」

「そ、そんな事はありませんっ」

「だったら・・・ほーれ、一万円札〜」

「それがどうかしましたか?」

「あれ? おかしいな。 並だ目になるとか、発狂するとか、何かしらの反応は?」

「そんな事ありません! いくら私でもそこまで落ちこぼれていません!

 私これでも、お給料を貰う身ですよ? 一万円札くらい、その、たまになら見ますっ」

「むう、つまんない。せめて倒れるくらいしてくれないと」

 

 

 バタンッ

「どうした遠野、コンビニで貧血か?

 コンビニでの貧血は初体験なのか?

 しかし残念だな、何でも揃っているコンビニとはいえ、医療品は精々ドリンク類しかないぞ・・・

 って、これは貧血というより気絶か? ・・・秋葉ちゃん、それは?」

「えっと、一万円札です」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「遠野はきっとお札アレルギーなんだろう。

 多分、札束でほっぺたを叩いたら血を吐くぞ」

 

 

「・・・・・・」

「・・・倒れたね、志貴」

「えぇ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遠野。放課後のテンションは何処に行った」

「兄さん。誰も取りませんから、そう胸に抱え込まないで下さい。

 一緒にいるこっちが恥ずかしいです」

「でも、せっかく有彦がペットボトル(1.5リットル)奢ってくれたし」

「兄さん、ひょっとして・・・ペットボトルは初めてなんですか?」

「悪いかよ、500mlのペットボトルすらないぞ・・・って、秋葉は体験済みなのか?」

「えぇ。浅上女学園の自動販売機にはペットボトルがおいてありますから。

 そういえば、こっちの学校にもペットボトルはありましたよね」

「あるにはあるけど、俺は買ったことないぞ。というより、同じ500mlなのにどうして紙パックよりもペットボトルの方が高いんだ?

 そして、それを買う理由が分からん」

「ペットボトルと紙の違いでしょう」

「むう、納得がいかない・・・」

「もうそんな事はいいでしょう」

「そんな事はない! 秋葉が小遣いをきちんとくれたら、俺もこんな惨めな生活せずにすんだんだ!」

「それとこれとは関係ないでしょう。欲しい物があるのでしたら、きちんと言って下さればそれで結構です」

「だったら、俺の部屋にテレビ」

「必要ありません却下です」

「・・・・・・」