「志貴!何もなかった!?」

まあ予想通りというか・・・アルクェイドさんが橙子さんの事務所を襲撃していた。

「どちらかというと・・・その台詞、アルクェイドさんに返したいな」

アルクェイドさんの相手をしていたのは先生、お姉ちゃん、式さん。

恐ろしいくらいのフルメンバーだけに・・・洋服、結構ボロボロだよ?

 

 

 

 

 

 

────PA────

 

 

 

 

 

「え?わたしにお客さん?」

アルクェイドさんはいつも用意している予備の服に着替えるとソファーの中央に座った。

お姉ちゃん舌打ちするし、先生は「やっぱり一度壊し尽くすしか」とか言ってるし・・・

式さんまで「本気で殺しきろうか」とか呟いてるよ。

「吸血鬼化の治療の方法を研究するためにアトラスから来たって」

「治療ね・・・」

「明日時間あったら会って欲しいんだけど」

スッとアルクェイドさんの目が細くなった。

「わたしにどんな協力が出来るというの?血液の採取?冗談じゃないわ」

「会って話をするだけでも・・・駄目?」

やっぱり駄目かな・・・急な話だし。

「〜〜〜〜〜!・・・・し、志貴・・・その、会って、話だけなら・・・」

「え!?いいの!?ありがとうアルクェイドさん!」

「――――その笑顔、反則・・・・・」

何故かアルクェイドさんがその場に崩れ込んだ。

「え?大丈夫!?」

やっぱり先生達との戦いはきつかった!?

あわててアルクェイドさんを介抱しようとした瞬間

「志貴〜〜〜っ!!」

「にゅ!?」

アルクェイドさんが抱きついてきた。

「可愛いよぉ・・・可愛い志貴の可愛いおねだりだから本当は嫌だけど話だけは聞いてあげるの」

「?うん。ありがと――――っ!アルクェイドさん!?」

何かお尻撫でられてますけど!?

「服の手触りと志貴のまろやかなお尻・・・・」

変態が!此処に変態がいるよ!?

僕はあわてて離れようとしたけど、アルクェイドさんにガッチリホールドされている。

拙い・・・早く離れないと・・・

『オートガード発動します』

「え?きゃあっ!?」

いきなり僕の服から衝撃波が発生してアルクェイドさんを吹き飛ばした。

「・・・・え?何今の・・・」

吹き飛ばされたアルクェイドさんも訳が分からないと言った顔で僕を見ている。

『志貴さまの拒否反応を確認。アルクェイドさまの引き剥がしを行いました』

「え?なに?」

「ありがとうサファイア・・・」

『これからはセンサーに邪な思考を関知した場合、速やかに対処いたします』

先生とお姉ちゃんが「うわぁ・・・それきっついわぁ」とかぼやいてる。

「えっと、臨機応変にお願いします」

『―――畏まりました。因みにあの程度であればその服を着用していなくても可能です』

サファイアの台詞に先生が苦い顔をした。

アルクェイドはサファイアに対して敵を見るような目で見ているし。

二人とも何か企んでいたんだ。

「志貴に抱きつけない・・・・わたし、志貴欠乏症になっちゃう!」

「なんで抱きつけないから欠乏症になる?」

式さんがアルクェイドさんに突っ込んだ!?

「志貴に触らないと禁断症状を起こすのよ。分かるでしょ?」

え?知らないの?って顔しているアルクェイドさん・・・まさか本気で言ってる?

「それは分かっている。何故志貴に抱きつけないのかだ。邪な思いがなければいいんだろ?」

「欠乏症についての突っ込みじゃなくて僕に抱きつくとかそんな話なの?」

「無の境地で志貴に抱きつけば・・・」

お姉ちゃん。そういいながら手をわきわき動かすのはどうかと思うんだ。

『志貴さま。この戦闘服を着ずともオートガード及びプロテクトスーツを形成する事は可能です』

「チッ」

・・・・・・お姉ちゃん。

「詳しく教えて?」

『この戦闘服は志貴さまの玉のような肌をお守りするために作られた作品ですが、防御手段が全くないと言うことではありません。プロテクトスーツの形成をわたしが行います』

「はじめに言ってくれれば・・・僕これ着ないのに」

本気で泣きそうだよ?

『ただし、わたしの形成するプロテクトスーツはこの戦闘服の10%の防御力しか発揮できないので・・・』

残念――――どうして先生とお姉ちゃんとアルクェイドさんがガッツポーズとってるのかな?

ちょっとお話し合いが必要かな?

『因みに』

サファイアが言葉を続ける。

『瞬間最大防御はこの戦闘服の50%―――先程アルクェイドさまが受けた蒼崎さま方の攻撃をブロックする事が可能です』

「「は!?」」

「しーちゃんに攻撃なんて出来るか!」

「僕あんなの受けたくないよ!?」

うん。驚く前に式さんのその反応は凄くうれしい。後で式さんの肩を揉んであげよう。

「し〜き」

アルクェイドさんが無茶苦茶イイ笑顔だ。

「やだよ!?」

痛いのは嫌だから咄嗟に拒否したけど、

『志貴さま。戦闘訓練にもってこいではありませんか。それに今は戦闘服も着用しています』

うん。考えてみれば実験しようとしていたんだよね。忘れてた。

「えっと・・・・じゃあアルクェイドさん。お願いします」

とりあえずこの服の防御力を確認してみよう。

 

 

「ふぇぇぇ・・・・」

僕はフラフラになりながら遠野のお屋敷の玄関をくぐる。

結論は反則。

あの服さえ着ていれば安全は確定だとおもう。

サファイアのサポートによるオートガードとかも反則。

ゼルレッチさん達、何を考えて此処までの技術を詰め込んだんだろう・・・

とりあえず、あの服を着ていない場合の防御力についてまでは理解できた。

それだけでも十分に反則だと思った。

魔力を消費して防御しているとはいえ、やっぱりこれも反則だと思う。

それだけの防御力があった。

あの服は流石にお姉ちゃんの事務所に置いてきた。

畳んで箱に戻したら自動でロックが掛かった。

―――それを見たお姉ちゃん達が・・・式さんまでとても残念そうな顔をしていたのはどうしてだろう。

着たかったのかな?

でも、

「あの服も問題だけど、できれば・・・あのプロテクトスーツ・・・別の形にして欲しいんだ」

『何か落ち度でも?』

いや、なんだか・・・アレって、白衣っぽいと言うか、白のコートだし。

その下はジャケット無し、白のドレスシャツ―――ワイシャツに黒のベスト。

そして黒のスラックス。

ん?上下綺麗にあっているし、カスタムメイドっぽい高級感があるし、トラウザーズなのかな?

『志貴さまのためだけに形成したのでカスタムメイドなのは間違いありません』

ですよね〜

でも、ベストまであるのにジャケット・・・スーツがないよ?

『本来、あのプロテクトスーツは本来七夜さま用の代物で、志貴さまのための防具はホワイトコートのみなのです』

「コートのみって・・・・どうして?」

『あのコートだけでも七夜さま専用プロテクトスーツ全体と同等の防御力があります』

「どれだけ強力なのか分からないよ・・・でも、シャツとかも着られたって事は・・・重ね掛け?」

『はい。魔法使いを相手にするのですから念には念を入れました。ただ、先程も言いましたがコート以外は男性用なので志貴さまに合わせるため、若干出力が落ちました』

ふうん・・・

「今度は七夜くんがあの服来てなおかつプロテクトスーツを纏ってくれないかな」

そしたらかなり凄い事になりそうだ。

『―――志貴さま。あの戦闘服は女性用―――いえ、志貴さま専用です』

「アレ?でも男女共用って・・・」

『それはプロテクトスーツの説明かと』

あ、あれ?

今までかみ合っていたと思っていた会話は、ずれた状態でかみ合っていた?

「僕、あの戦闘服の事を言っているとばかり・・・」

『数行程同じ文の使い回し箇所がありました。説明書はすべて目を通されているかと思いましたが・・・』

そういえば、先生とお姉ちゃんがあの紙を読んだ後、何か言っていたような―――

もしかして・・・・・謀られた!?

「うぁ、気付かなかったよ・・・やられた」

『志貴さまに起動していただくまでわたしはスリープモードに入っていましたので・・・申し訳ありません。もう少し早く起動していたらこのようなことには』

サファイアが僕を謀るなんて無い事はよく分かっている。

それに僕のために色々と頑張ってくれているし。

「僕の勘違いと先生達の悪質な隠蔽が原因だから仕方ないよ。今日はもう休もう?」

『畏まりました』

とりあえずこの件は保留。

後は――――

「ッ!志貴!琥珀は兎も角、翡翠が言っている事は本当なのですか!?」

血相を変えてシオンさんが僕の元へと駆け込んできた。

一日が、終わらないよ・・・