「いい?ちょっと教えられないってのはまた変なモノに巻き込まれそうだからなの。分かった?」

・・・・本気で怒っているかも知れない。

「・・・・・ごめんなさい」

いつもからかわれているから今回もそうだと思っていたから・・・・

でも、先生が考えての回答だからやっぱり僕が軽率で馬鹿なことを言って怒らせたんだ。

「――――まぁ、私の言い方も悪かったと思うから・・・・ああもう!だからそんな顔しない!!」

「ぅぇ・・・?」

先生が吼えた。

 

 

 

 

 

 

 

────PA────

 

 

 

 

 

「そんな涙目で見られたら心臓に悪いの私は!私は志貴を泣かせるつもりはないし、志貴を泣かした奴を許しはしない。私が私を許せ無くなっちゃうから泣かないの。いい?」

───────え?

えっと、それは・・・・

「僕は先生のこと嫌いにならないよ」

「・・・・・・・」

先生が驚きの表情で固まった。

「僕が嫌いって言うのは形的なもので、僕を助けてくれた先生を嫌いになんてならないし、この先ずっと先生を嫌いになんてならないよ」

「・・・・・・・」

「あ、でも、酷い事したら今の先生を嫌いになっちゃうからね」

そう言ったら先生は小さく呻って渋々頷く。

――――これじゃあ、どっちが先生か分からないよ。

僕は心の中でため息を吐いた。

 

 

「これが落ちていたぞ」

僕の着替えていた部屋から式さんが四つ折りの紙を持ってきた。

それはA4用紙二枚で、ビッシリと文字が書かれていた。

「・・・・・・・・・・・」

橙子さんはその用紙を読んで顔を引きつらせた。

「なに?何かとんでもない・・・・・・なにこれ!?」

先生が横からその紙を取って内容を読むなり声を上げた。

「何ですか?そんなにとんでもないことが書かれているんですか?」

幹也さんが若干不安げな顔で橙子さんと先生を見る。

「魔術師と魔法使いをここまで驚かせるんだ。ロクな事ではないだろう」

当然だろうといった顔の式さんに鮮花さんが式さんの脇腹を突く。

「それ、あの箱の中に入っていたんでしょ?だったらあの服に関係してるんじゃ」

――――聞こえてます。けど、その心遣いは少し嬉しいです。

悪い意味で驚いている訳じゃないと思う。

だってゼルレッチさんがわざわざ僕に送ってくれたものだから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分。

先生から紙を受け取る。

それは説明書だった。

二枚あるうちの一枚は服について

そしてもう一枚は扇についてだった。

まず、服について

第一行目から突っ込みどころ満載だった。

『男女兼用』

――――――凄く嫌だ。

でも、そこから先はとんでもないことがずらっと書かれていた。

『防弾、防刃、防魔術、呪詛返し、防寒、耐熱及び廃熱機能付属。

被服箇所以外も同機能は有効』

・・・・パーフェクトバリアー?

『尚、それらの効力は被服者の魔力によって増減する』

いや、無茶苦茶すぎてどう突っ込んで良いのやら・・・

と言うよりも、あまり力を持っていない僕には意味のないものでは・・・

そう心の中で突っ込みながら二枚目を見る。

扇の説明書だ。

一応暗器だからきちんと説明書を読んでおかないといけないんだろうけど・・・

一行目は

『Made in Japan』

――――日本製なんだ。

突っ込む気力を根本から削がれた気がした。

『ナノカーボンを銀箔と鉄箔でコーティングし、様々な魔術効果を付加』

『要に宝石を用いることで魔力の蓄積も可能』

―――ナノカーボンをわざわざ金属でコーティングしなくても・・・要に宝石なんて危なくないかなぁ・・・

『個人認識機能付きでセキュリティーもバッチリ!』

―――だんだん説明が怪しくなってきたなぁ・・・

『詳しくは扇に付加されているガイダンス機能をお使い下さい』

―――ガイダンス機能って何!?って、説明を投げた!?

数行空いた後にビッシリと英語で色々書かれているけど、専門的なことばかりだったので理解出来ない。

「要は、恐ろしいほど多機能な武器と防具・・・って事だよね」

そう聞くと、

「そうだな。日本語の説明部分だけ読むとそうなる」

「そうね。6割が冗談で書かれている日本語の説明だとそれだけ分かれば充分ね」

二人してやれやれと言った感じでそう言った。

そして二人とも視線は何故か太股の部分ばかり見ている。

「・・・・・・・・」

「もうちょっと・・・ああっ、見えそうで見えないわね」

「・・・やはり見えそうで見えないのが良いな」

「・・・・・・・・・」

ちょっと、先生と橙子さんをこの扇で殴りたくなった。

危険なものだと言う事だけは分かるから行動には移さない。

でも・・・・これって色々な機能が付いているんだったら、機械みたいにスイッチが付いているのかな?

そんな事を思いながら扇を広げる。

ヴゥン

さっき開いた時とは違う音がした。

瞬間、

「「!!!!!」」

先生と橙子さんがもの凄い速さで跳び退いた。

「それを起動させたら洒落にならないわよ!?」

「志貴!それを本格起動させるんじゃない!!」

「?・・・・・・??」

よく分からないけど、二人の反応から途轍もなく物騒なものだと言う事だけは分かった。