送られてきた小包には変な物が入っていた。

送り主は冬木という町の遠坂という人からだった。

琥珀さんが「お知り合いですか?」と聞いてきたけど、僕はそんな町もそんな人も知らなかった。

けど、何かトンデモナイモノが送られてきたというサイレンは頭の中で鳴っていた。

小包を開けると中には手紙とよく変身アニメとかで出てくるステッキが入っていた。

手紙にはこのステッキの危険性とどうしてここに送ったかがレポート用紙2枚に渡って書かれていた。

この住所を教えたのはどうやらゼルレッチさんらしい。

必死な説明を読んで送った人がどんな気持ちで送ったのか分かったから僕は「責任を持って保管します」という内容の手紙をこの住所に送った。

さて、これを橙子さんの事務所に持っていかなきゃならないけど・・・どうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

────NIC────

 

 

 

 

 

『即刻廃棄すべきです。これはわたしの前に作られた姉にあたる代物ですが、色々厄介な代物だったので魔道元帥自ら封印しようとしたと記録されています』

とりあえず似たもの同士・・・って言ったら失礼だけどよく知っていそうなサファイアに聞いてみたらもの凄い返答が帰ってきた。

「えっと、封印しようとした・・・って言い方だ封印はされていないんだよね。目の前にあるから勿論そうだと思うけど」

『はい。封印直前に何故か消え失せていたため、無かったモノとしてそのまま放っておかれたというのが事実ですが』

心なしか攻撃的な気が・・・

「うっかりさんだからね。でも、壊すとしてもこれをどうやって壊すの?」

『志貴さまのその力で破壊していただきたいのですが・・・志貴さまに負担を強いるのは問題があるので、わたしが直接手を下します』

「え、でも・・・」

「志貴さん、秋葉さまがお呼びです」

突然ドアをノックされた。

「え、あ、うん・・・」

『───この話は後ほど致しましょう』

「そうだね・・・じゃあまた後で」

僕はサファイアをそのステッキの側に置いて応接間へと向かった。

 

 

カチャッ

扉が開き、琥珀が部屋に入ってきた。

「なかなか面白い話でした。そんな愉快なモノ、是非とも一度手に取ってみてみたいものですね」

志貴が秋葉に呼ばれたのは、偶に志貴がしている夜間外出について琥珀がわざと口を滑らせたためだった。

「志貴さんは一時間は戻って来られないでしょうね・・・」

心の中で小さく謝りながら小走りで机の前まで来ると小包を見る。

「これですか・・・」

中のステッキを取り出し、しげしげと見回す。

「何の変哲もない代物ですが・・・・あ、こんな所に血痕が」

ステッキの一部を拭くと琥珀はステッキを振り回す。

「やはりここはマジカルアンバーで決まりですよね!」

『あはは〜分かってらっしゃいますねマイマスター』

「勿論です。この世を面白可笑しくするためには無くてはならない存在ですよ〜」

『わたしは愉快兵器であると自認していますから。前のマスターは堅物だったのでからかうだけでしたが・・・気が合いますね〜他人じゃない気がします』

「そうですね。わたしもあっさり受け入れてしまったことに何か大いなる意図を感じますがまぁ気にしないことにします」

琥珀はニヤリと笑うと大急ぎで部屋から出ていった。

 

 

『志貴さま!大変です!』

サファイアが屋敷の中に居るであろう志貴に思念を送るが、志貴からの返事が来ない。

『アレを持ち出された以上、ロクでもないことが起きるに決まっています。志貴さま、早く、早く来てください!』

サファイアは緊急事態であることを必死に思念で送った。

と、

「どなたかいらっしゃるのですか?」

カチャリと扉が開き、翡翠が部屋に入ってきた。

『まさか───わたしの思念が届いているのですか?』

思念が読みとられたことに対する驚きを隠しきれないサファイアだったが、またどこかで成る程と納得してもいた。

「貴方は確か───サファイアさまでしたか」

翡翠は机の前に立つと鉄扇をジッと見つめる。

『はい。志貴さまに至急伝えたいことがあるのですが・・・志貴さまは今どこに』

「秋葉さまからお説教を受けております。姉さんが何か密告したとのことでわたしは姉さんを捜していたのですが・・・・」

『貴方の姉ならつい先程までここにおりました。志貴さま宛の危険物を奪い取って逃走中です』

「─────殴っても分からない畜生以下の学習能力なので困ります」

翡翠はため息を吐くと、ギュッと拳を握る。

『心中お察し致します。じつはその持ち出された代物というのはわたしにの姉にあたりまして、

性能は良いのですが思考回路に欠陥があり、持ち主に迷惑を掛けてはそれを楽しむという厄介な代物だったため廃棄する所だったのです』

「・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・・』

二十秒弱の沈黙が部屋の中を包む。

「サファイアさまが他人とは思えません」

『奇遇ですね。わたしもそう思っていました』

「・・・・・では、参りましょう。アレを屠るために」

『そうですねアレを廃棄するのがわたし達の役目です』

翡翠は鉄扇を手に取ると部屋を出ていった。