「毎年毎年大変じゃな、お前さんも」
「こんな時じゃないとお世話になった人にお礼できませんから」
「良いことを言ってくれる。今年は何じゃろうな」
「クッキーですよ」
「ふむ。朱鷺恵と一緒に食べるとするか」
「それだと大変じゃないですか?」
「あー・・・確かにそうじゃな。これはワシ一人で食べるとしよう」
「じゃ、これは朱鷺恵さんに」
「ふむ。確かに受け取った」
学校帰りに時南医院に行って宗じいちゃんに例年通り食べ物を。朱鷺恵さんの分のプレゼントにはスカーフを贈った。
因みにどうして宗じいちゃんに食べ物なのかというと、そう希望されたからとしか言いようがなかったりする。
PANIC
橙子さんと式さんと幹也さんと・・・・・・鮮花さんと先生には渡したくないなぁ。
先生はさっきのこともあるけど、鮮花さんの場合は・・・・最近先生に似てきてちょっと怖くなっているから。
胸揉むし、頬擦りするし・・・
胸とか揉まなかったら良いんだけど・・・近付くと目が血走ってハァハァ言い出すから危機感感じるし、暴走したら先生より危険だと思う。
だからってあげないって言ったらどんな反応するんだろう。
─────────怖い反応しそうだからやっぱり鮮花さんにもあげよう。
先生は保留かな。
そんなことを考えながら橙子さん達の元へと向かった。
「ありがとう、志貴」
橙子さんがプレゼントを受け取った後、僕をギュッと抱きしめた。
橙子さんはとても優しい。
「えーっと・・・」
「何だか毎年もらってばかりだなぁ」
「だからホワイトデーには志貴に何かあげるぞって話したじゃないか」
式さん、幹也さん・・・そう言う話は僕の聞こえないところで・・・
「そう言えば鮮花さんは?」
「あー・・・今日はどうしても早く来れないって」
「アレのために志貴を引く止めておくのも悪いしな・・・」
「志貴、私には〜?」
さっきから先生がウロウロしている。
そしてみんなそれを無視している辺り、僕が先生に対してちょっと怒っているって分かっているみたいだ。
橙子さん。僕を抱きしめたまま放そうとしないし。
「うにゅ。橙子さん恥ずかしい・・・」
「恥ずかしがる志貴も可愛いわ」
「私の側で志貴にいちゃつくの禁止〜〜〜〜!!」
「何だ。志貴から何ももらっていない奴がまだ居たのか」
うわ、橙子さんがいつになく挑発的だ。
「う゛・・・・・・志貴〜〜〜〜っ」
「先生にはあげません」
この科白と共に、もう今までにないくらいニッコリと笑って見せた。
あ、先生思い切り固まってる。
「何で!?」
「だって先生は昨日アルクェイドさんに「最近志貴からの愛を受け取っていない」って言ったんでしょ?」
「あ・・・・」
「僕が恥ずかしくても先生からの愛情表現を受けて返しているのに先生はそれでも受け取っていないって言っているみたいだから・・・」
ちょっぴり寂しそうな感じで言ってみる。
うん。大根役者にすらなれない下手すぎる程下手な演技だ。
「そうか。青子は志貴からの溢れんばかりの愛情を受けていなかったのか」
橙子さん。もの凄く怖い笑みですよ。特に眼鏡外しているせいで・・・
あ、あれ?みなさん・・・どうしてそんなに殺気立っているんですか?
「今なら魔法すら殺せる気がする」
うわ、どうしてそんなに怒っているんですか?
でも、一番凄いのは───先生だ。
この世の終わりみたいな顔して固まっている。
「し、き・・・」
何故そんなに声が震えているんでしょうか・・・
「はい?」
「あの、アレはあの、そんなつもりで言ったんじゃなくて・・・だから志貴、お願い。嫌いに・・・」
「戯け。志貴の愛情をまともに受け止めることすら出来ない貴様に志貴が構う必要はない」
「そうだな。いくら温厚な志貴でも今回は傷付いているようだ」
えーっと・・・何で?
先生は先生で橙子さんと式さんに言われて洒落にならないくらい項垂れているし。
仕掛けたのは僕だけど、何とかしないと・・・
「先生。はい」
僕は小さな箱を先生に渡した。
「─────え?」
「先生にのプレゼント」
「・・・・・・・・!!」
先生が凄い勢いで僕に抱き付いてきた。
「ゴメン、ゴメンね志貴・・・」
「先生も反省しているみたいだし、僕も別に怒ってないよ」
でも先生は暫くはなしてくれなかった。
あ、拙い。早くアルクェイドさんの所に行かないと・・・・
「し〜き〜〜〜」
あ、やっぱり・・・すぐって言ってすぐに行かなかったから・・・
「式、青子」
「分かっている」
「暫くご退場願いますか」
うわ、余計に収集つかなくなって─────
「何じゃ。面白そうなことになっておるようじゃな」
「元帥!」
うわ〜・・・何でこんな時にゼルレッチさんが来るのかな・・・
ますます収拾が着かなくなってきて、
「ガンナー。とりあえずアルクェイドを止めればよいんじゃな?」
「ええ」
「ならば・・・派手に行くとするか」
「あの、三人ともちょっと待っ・・・」
僕が止めるのも聞こえないのか恐ろしいくらい派手な。そして一方的なバトルが始まってしまった。