「着替える前に所長に挨拶した方が良いんじゃないかな」

「イヤ、着替えた後の方が良いのでは・・・」

出来ることなら早く着替えたい七夜は突っ込みを入れた。が、

「私が何だって?・・・・・・・・・・!!」

もの凄いタイミングで橙子がカギを開けて入ってきた。

 

 

 

 

 

PAIC

 

 

 

 

 

部屋の時間が止まった。

実際は動いていたのだろうがそこにいた全員は少なくとも止まったと感じただろう。

「な、な・・・や?」

「―――意外に誰だと思いました?」

「いや、その・・・」

橙子は顔を真っ赤にして俯く。

「・・・ほら。気味悪がられてる」

「違うと思うぞ」

「同じく」

「あまりにも綺麗で・・・その、衝動を堪え切れそうになかったんだ」

多数決のうえ、その本人によるだめ押しが来た。

「・・・男が巫女服着けて褒められても嬉しくないです」

七夜はげんなりとした顔でそう言いながら着替えるために部屋を出る。

「待て」

部屋を出たと同時に式が待ったを掛けた。

「―――早く着替えたいのですが」

「それは初詣に行ってからでも構わないと思うが」

「だから、さっきも言いましたが・・・着替えてからでも良いと思う。と」

「わがままだな・・・」

「わがままという領域の話ではないと思いますけど・・・」

「仕方ない。幹也にも着せるということで」

「半年以上、口をきいてくれない挙げ句、無言の圧力を喰らいますよ?」

「・・・・・・・・・それは、勘弁して欲しいな」

ようやく着替えることが出来るとホッとした七夜だったが、

「・・・悪いが七夜。替えの服はこの前ボロボロになったあれで最後だ。まだ新しいものは買っていないぞ」

橙子の声がドアの向こうから聞こえた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

七夜は完全に固まった。

「・・・なら・・・橙子さんか先生のを貸して欲しいのですが・・・少し大きめのものはありますか?」

「それなら私のシャツとパンツがあるから好きにしてくれ」

「了解。着替えますので出て頂けますか?」

「・・・分かった」

少しふて腐れながら出て行く式に七夜は疲れ切ったように深いため息を吐き、クローゼットへと向かった。

 

 

ガチャッ

ドアが開き、七夜が出てきた。

「「「「「・・・・・・」」」」」

五人が五人ともその場に見入って動かない。

そこには橙子と同じ服を着た七夜が立っていた。

「綺麗だ・・・とっても綺麗だ」

「や、何故泣くんですか?」

ハラハラと泣く式に突っ込みを入れ、

「結婚して下さい」

「・・・男ですのでお断りします」

告白してきた幹也に断りを入れ、

「・・・ここまでくるとコメントのしようがないわ」

「そのアクションだけで充分に泣けてきます」

感心したように言う青子にブルーにさせられ、

「メイクしたら・・・違う。メイクさせて!」

「全力で否定させていただきます」

いつの間にか用意していたメイクセット片手ににじり寄ってくる鮮香を牽制し、

「モデル体型で助かった。私の見立てに狂い無いと改めて確信したぞ」

「―――サイズがピッタリなのはやはり確信犯だったのですね?」

満足気にそう言った橙子に対し、諦めたように肩を落とした。