ジグザグに走りながら峰打ちで全員仕留める。
襲いかかってきた秋葉、アルクェイド、シエル先輩、琥珀さんを叩き伏せた。
あれ?シオンちゃんがいない・・・?
そんなことにイヤな予感を感じながら僕は窓へと向かう。
そして―――
いつの間にか開け放たれていた窓から僕は外へと逃げた。
PANIC
「そこまでです。志貴」
少し逃げた辺りで背後から声がした。
「あう・・・逃がしてくれると思ったのに・・・」
「私は中立の立場にあるので・・・・・・・・・・・・志貴は卑怯です」
シオンちゃんは顔を真っ赤にして俯く。
「御願いシオンちゃん・・・今逃がしてくれたらあとで何でも言うこと聞くから」
「あとで・・・何でも?」
「うん。人体実験はイヤだけど僕が出来ることなら・・・」
―――前に琥珀さんに改造されそうになったからなぁ・・・『魔法少女系に強化させてください』とか言って・・・
「で、ではハグとか添い寝とかそんな関係もありと言うことですか?!」
「?それで良いの?」
「え?いやっ、あの、その・・・」
顔を真っ赤にして「あ〜う〜」と呻くシオンちゃんがとても珍しくて、
「シオンちゃん、可愛い♪」
僕はシオンちゃんを抱きしめて頬にキスをした。
「とりあえずお姉ちゃんの所に行って着替えてこないと・・・」
シオンちゃんが見逃してくれたので僕は安心して遠野の屋敷から逃げることができた。
僕は走りながら公衆電話を探す。
こんな時に公衆電話が少なくなっているご時世を恨まずにはいられなかった。
「巫女さんが・・・」
「オイ、あんな美人巫女なんて初めてだぜ」
「カメラカメラ!───あ!?壊れてる!」
「あれ、遠野のお屋敷の志貴さんじゃない?」
みんな奇異の目で僕を見てるし・・・
と言うよりもお年寄りに拝まれてるし・・・
ちょっと半泣きになってしまったその時だった。
「志貴!」
凄いスピードで一台の車が突っ込んできた。
「お姉ちゃん!」
僕は車に素早く乗り込むとお姉ちゃんはすぐに車を出す。
「良かった・・・お姉ちゃん、ありがとう」
「志貴、またなんて魅惑的な格好をしているんだ・・・」
とても機械的な声。
お姉ちゃんは前を見たまま僕に声をかける。
いつもはそんなコトないのに───呆れているのかな・・・
「無理矢理着けさせられたんですよ・・・」
「そうか」
お姉ちゃんの声はやっぱり機械的で冷たくって、
僕は恥ずかしくて泣きたくなって俯いた。
それからお姉ちゃんの事務所に着くまで言葉はなく。
声を出す雰囲気じゃなくって、
お姉ちゃんは僕を見るどころかこちら側を見る気配すらなかった。