「―――どうしよう」

僕は気を失っているっぽい女の人を抱きしめたまま途方に暮れていた。

そのままってのは流石に・・・抱き合っている状態だし・・・

ちょっと迷って僕はその人をそのままベンチまで運ぶことにした。

抱き上げられる程腕力ないし、抱きしめたまま今で引っ張っていくのが精一杯。

あと、暫くして気付いたけど・・・この人、呼吸してない?

混乱しながら何とかベンチについて・・・どうして良いか分からずにとりあえずベンチに寝かせて、そのままだと可愛そうなので申し訳ないけど僕の膝を枕に―――

「・・・・・・・」

あ、目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

「・・・・・・・」

目を覚ましたらすぐ目の前に女の子の顔があった。

わたしの頭の中で基本情報を再構築していく。

そして更に世界から必要な情報を汲み上げ、分析。

それでもこの子が何者なのかわからない。

でも、これだけはわかる。敵ではない。

すごく、安心できる。

「あの、大丈夫・・・・ですか?」

何故わたしはこの子の膝を枕にしているのだろう。

ゆっくりと体を起こす。

そして

チュッ

「――――――え?」

その声はその子の声だったか。それともわたしの声だったのかは分からない。

でも、予想外のことだった。

どうしてわたしはこの子にキスをしようとしたのか。

ああ、頭がグラグラする。

女の子の方も固まって―――

「っ!!!!」

あ、すごく泣きそうな顔してる。

そんな顔しないで欲しい。

わたしはその子の頬にそっと手を添え、

再びキスをした。

「!!!!!」

さっきも今もどうしてそんなことをしたのか分からない。

ただ、体が勝手に動いt

ズドンッ

「!?」

わたし達の側に何かもの凄い殺気の固まりが降ってきた。

「志貴さまの危機を察知しましたのでお迎えにあがりました」

「ぁ・・・・翡翠ちゃんっ!!」

一瞬にして女の子はわたしから離れ、降ってきたメイド姿の女の背後へと逃げてしまった。

残念・・・・え?残念?

「申し訳ありませんでした。志貴さま・・・志貴さま?」

「あう・・・・あの、おねーさん・・・七夜くんは何もしてないから怪我とかはないと思いますけど・・・・大丈夫です、よね?」

「・・・・ええ」

「よかった・・・」

その子はホッとしたように息を吐き微笑んだ。

それはとても綺麗な――――

 

 

ステータスが更新されました

 

 

「「!?」」

どこからともなく声が聞こえた気がした。

「アレ?この声・・・」

「志貴さま。ご存じなのですか?」

「うん・・・・前に聞いたことのある声なんだけど・・・・声?」

首を傾げる彼女がかなり可愛い。

何だろうこの感情は。

「えっとね・・・確か世界って言ってたかな・・・数年前から『面白い子だから契約しない?』って定期的に声がね・・・」

「志貴さま。事実を述べましょう」

「・・・・『かぁいい君と契約して180%の守護を!そして最終的にはお持ち帰りぃ〜』って・・・・バルドル?」

「わたしが290%守護しているので問題ありません。志貴さまは常に安全確定です。それより問題は世界です。今なら・・・世界すら殺して」

「いや、二つの意味でそれは無理だから」

「!?」

どうしよう・・・彼女を見ていると・・・・ドキドキする。

確かに殺されもしなかった。ダメージを受けた様子もない。でも、変だ。

少し休んだ方が良いのかも知れない。

わたしは二人に気付かれないよう公園をあとにした。

 

 

何故か凄く凹んでしまった翡翠ちゃんを慰めていたら、いつの間にか女の人がいなくなっていた。

「えっと・・・」

「さあ、戻りましょう志貴さま」

「うん・・・」

翡翠ちゃんはまだ少し凹んでいるのかいつもの調子じゃない。

さっきの女の人がお姫さまなんだろうけど・・・

やっぱり外国の挨拶って全部キスなのかなぁ・・・

先生達もスキンシップがハグとキスが圧倒的に多いし・・・先生達日本人だけど。

でもゼルレッチさんは何もしないよね・・・それが紳士なのかな?

考えたら考えるだけドツボにはまりそうだ。

「志貴さま。お急ぎください」

「え?」

「夜は危険です。また昨夜のようなモノが来襲してくる可能性もあります」

「昨夜?・・・・・・あぁ」

登校する時に見てしまった塀辺りの惨状を思い出してしまった。

「―――帰ろう。うん」

やっぱり危険なことはしない方が良いよね?