朝の騒ぎの後とは思わないほど普通に授業が進んでお昼が終わって・・・

「気が付くと放課後に突入していました。と」

他人事のように言いながら僕はノートを閉じた。

まあ今日一日色々考えていたら放課後になってしまっただけなんだけど・・・

「今日は遠野、えらく淑女モードに入ってるな・・・」

「あの状態の時の遠野くんって色々考えている時だよ」

―――弓塚さん。僕の事よく分かってるね・・・

 

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

帰り支度を終えた僕は小さく息を吐いた。

放課後はどうしようかな・・・

1.遠野の屋敷に帰る

2.あの約束の場所に行く

3.学校にもう少し残る

「・・・・・・・」

4.乾有彦とデート

「2番のあの約束の場所ってのが分からないんだけど・・・あと4番は有彦死亡フラグだよ」

「マジ!?俺夕暮れの坂道で一通り昔話をしたあと決め台詞を残して消えていく運命!?」

「シリアス系が無理な乾くんにそれは酷だね。あ、ギャグキャラは死なないし」

「弓塚の突っ込みがいつもより痛烈に・・・・・痛い」

あの有彦が本気で落ち込んでる・・・

それ以上にビックリしたのは弓塚さんの目が笑っていない事だった。

どうして怒っているんだろう・・・

でも、もう少し学校にいても特にする事ないし。

「じゃあ一番にしようかなぁ・・・」

「えー!?帰るのかよ!」

「自分で選択肢を作っておいてそんな言い方は酷いと思うんだけど?」

「もう少し学校にいてだな・・・俺等とダベるだけ?」

弓塚さんとのんびりするのは良いけど、有彦とのんびり会話ってどう考えてもロクな方向に行きそうもないのでパス。

お姉ちゃん達の所に行こうか迷ったけど、今日もパスする事にした。

「・・・やっぱり今日は帰るよ」

「じゃあわたしも途中まで一緒だから・・・」

「――――夕暮れ前だから一通り昔話をした後での決め台詞は厳禁だぞ」

「乾くん・・・お笑いモードが終わった直後に致命傷を負わないように気をつけようね」

「ぜっ・・・全力で身を守るため、今日は早くお家に帰って布団の中でガタガタ震えておきますデス!」

有彦が凄い早さで教室を出ていってしまった。

 

 

結局僕は弓塚さんと帰る事にした。

「死亡フラグ・・・・」

さっきの有彦の台詞がまだ頭に残っているのか、弓塚さんはブツブツと呟いてるし。

「弓塚さん、どうしたの?」

「―――えっとね・・・遠野くん」

何か決心したような声と共に弓塚さんは僕を見て、

ニヘラ

うわ。すっごい嬉しそうに笑った。

「・・・・本当に、どうしたの?」

「や、えっと・・・遠野くんの顔を間近で見たら嬉しくなっちゃって・・・」

そんな事言われたの、先生合わせると二度目のような気がする。

「リテイク!――――遠野くん。あのね」

弓塚さんが気合いを入れ直してやり直すみたいだ。

「あの、えっと、ピンチの時は助けてあげるから!」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「えっと・・・・・・」

なんて言うか、お願いしますとは言いにくいなぁ・・・僕、こんな体だけど一応男だよ?

「―――あれ?・・・・!!!」

あ、なんか弓塚さん、台詞間違えただけっぽい。

凄くオロオロしてる。

何とかフォローしたいけど・・・・・

「えっと、じゃあ弓塚さんがピンチの時は僕が頑張って何とかするって事でOK?」

疑問系なのは自信がないから。でも弓塚さんの心意気には応えたい。

「――――うんっ!!」

「・・・でも、あまり期待しないでね?」

やっぱり消極的になってしまう。先生達なら自信たっぷりに「まーかせて!」とか言いそうだけど、僕はそんな事言えない。

「大丈夫!遠野くん頼りになるもん!だから遠野くんがピンチの時はわたしが全力で守るから!」

――――なんか、とても立場が違う気がする・・・弓塚さんの方が格好良いんじゃない?

ちょっぴり泣きそうになったのは内緒だ。