「ところで志貴」

「ん?何?」

「学校ではないのか?」

うわ、流石式さん。いきなり直球来ましたよ?

此処で選択を誤ったら確実にアルクェイドさんは総攻撃を受ける。

だからといって下手に庇おうものならお姉ちゃん達が拗ねる。

どうしよう・・・

 

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

「アルクェイドさんとは昨日知り合って・・・ちゃんとお話しできないまま別れちゃって、今日朝早く学校に行こうとしたら―――」

「拉致されたんだな?」

「う゛っ・・・」

式さん。もの凄くズッパリ斬らないでください。

「まあ、まだ学校には間に合うから良いんですけどね」

と、一応言っておこう。

「まあ志貴が可愛くて拉致してしまった事は見逃そう」

「可愛い言わない!」

「だがな・・・志貴の皆勤賞を破られるのは我慢ならない」

や、皆勤賞無いから。

僕体調不良って言われて保健室に行ったり遅刻も――――――

あれ?

そう言えば高校に入ってから何故か無遅刻無欠席扱いされていたような・・・

「志貴、姉貴が車の用意しているから早く行きなさい」

「え?あ、うん。ありがとう先生――――」

僕はベッドから降りて玄関へと向かう。

「志貴、行っちゃうの?」

「うん。流石に学校には行かなくっちゃ」

「そうそう。志貴を遅刻させてたまるかってのよ」

先生がアルクェイドさんに吐き捨てるようにそう言って僕の肩に手を――――

「待って先生」

うん。おかしい。

「何?志貴」

「そういえば先生達がここに来た目的は?」

「「・・・・・・」」

あ、気まずそう。

でも式さんは僅かに考える素振りを見せた後、答えてくれた。

「志貴が学校に行った後に用事を済ませる」

「話し合い?」

「一応は。場合によっては強硬手段もあり得る」

「ちょっ!?式!?」

ああ、先生が少し慌ててる。

「滅する訳じゃないんだ」

「ああ。そいつを追って別の死徒どもが来ているのでな・・・帰れと」

「僕もその話聞いたよ?」

「何?」

「あのね、それで先生か式さんに護衛をお願いしようと思ってたんだけど・・・」

「こいつを城に帰せばいいだけの話だぞ?」

「そうね。そっちの方が効率的よ?」

とりあえずカードを一枚・・・

「ゼルレッチさんから七夜くんに護衛の依頼があるんだ」

「「・・・・・」」

それが何を意味するのか、分かっているから二人ともそんなに嫌そうな顔をしているんだよね。

つまりは強硬手段をしようものなら僕は学校にも行けず、七夜くんと先生達が闘うことになる。

「あの爺・・・既に手を打っていたのか」

「幹也さんが僕宛の手紙を全部管理していますから確認してください」

「―――確認するまでもない」

「そうね・・・七夜の依頼を妨害するわけにはいかないわ」

先生が諦めたようにため息を吐く。

本当は僕とアルクェイドさんを会わせたくなかったんだろうな。

「それとね、ゼルレッチさんは僕とアルクェイドさんを会わせることでアルクェイドさんを変えようとしたかったみたい」

「変えようと?・・・・・確かに」

なんだろう。今更ながら驚いた顔は。

「うん。分かったわ・・・・確かに変わっているようね」

うわぁ・・・凄いため息吐いたよ?

先生はため息を吐いた後、僕をギュッと抱きしめた。

「仕方ないから私達が志貴を護衛するわ。そのおまけでお姫さんを護衛する。OK?」

「えっと、うん。ありがとう先生」

「まあ今回は元々死徒狩りの予定――――志貴!」

「?」

先生が凄く真剣な顔してる。

「志貴。昨日と一昨日、家の外で何かあったらしいけど」

何かって・・・・あー・・・

「まあ、あったらしいけど、僕は知らないよ?翡翠ちゃんと琥珀さんが応対してたし」

「応対?」

式さんが僅かに顔をしかめた。

「うん。昨日は体を切り離して逃げたって言ってたけど・・・あ、有名らしいよ?すぐに資料持ってきてたし」

「―――どれだけ凄いのよ志貴の所は」

「ネロを個人の武力で撤退させるなんて・・・」

うあ?アルクェイドさんと先生が凹んでる。

「・・・志貴。さあ、早く学校に行くんだ」

え?もしかして時間的に拙い?

僕は式さんに急かされて部屋を出た。

 

 

「あ、遠野くん!」

教室に入るとすぐに弓塚さんが僕に声をかけてきた。

「おはよう。弓塚さん」

「大丈夫!?何ともない!?」

「え?何が?」

や、弓塚さんの顔色の方が悪いよ?

そう言いたいけど言わずに首を傾げる。

「・・・何もないなら良いんだけど・・・」

「???」

えっと、もしかして――――見られてた?

「うん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう弓塚さん」

「良かった。今日も遠野くんのお屋敷の側で何かあったみたいだし、女の人に攫われるし・・・

うあ、やっぱり見られてたっぽい・・・

どうしよう・・・

「遠野くん、本当に気を付けてね?」

「うん」

「さっちんは本当に心配性だなぁ」

出た。

「乾くん。遠野くんの場合は心配しすぎても足りないんだよ!?」

「まさかぁ・・・これがそう簡単に暴漢にあったり拉致とかされたりなんて想像がつかん」

「中学校の時・・・遠野くん、誘拐されかけたんだよ?」

「「「「「「はぁっ!?」」」」」」

半分以上来ていたクラスメイト達が一声に声をあげた。

ゆ、弓塚さん。よくご存じで・・・・・

「他にも多分何度かあるよね・・・・遠野くん」

「もしかして、千里眼持ち?」

うううっ・・・弓塚さんが苛める・・・

「大丈夫・・・うん。大丈夫だよ」

「遠野、お前家に言って車での送迎に切り替えてもらえ」

うわぁ・・・有彦にまで本気で心配されてしまった。

「や、あの・・・・あの誘拐の件はちょっと違うから・・・」

「でも誘拐されかけたんだろ?」

「まぁ・・・知り合いが人を雇って僕を連れてくるように言ったみたいで・・・」

鮮花さんの暴走は特に大変周りに迷惑が掛かったなぁ。

「おまっ、どんな知り合いだよそれ!」

「まあ後でおしおきしたから」

ふふふふ・・・無視が有効だって聞いたから暫く無視し続けたなぁ・・・

ずっと泣きそうな顔してたし。ああ、泣いてたなぁ。

「遠野、黒い笑みを浮かべてるぞ・・・」

「よっぽど頭に来たんだろうね」

今日もグダグダな学校生活が始まった。