「えっと・・・?」

目を覚まして食堂に入った僕が見たのは、朝から胃薬を飲みながら書類と格闘しているまともな秋葉だった。

「それが昨夜の戦闘なのね?」

「はい。志貴さまの寝所をのぞく使い魔を駆除し、外で待機していた人物と戦闘を行った結果です」

「はぁ・・・・どんな戦い方をしたらあんな事になるのよ・・・塀どころか道や周辺まで被害を及ぼすなんて、琥珀くらい厄介な相手じゃない」

「あは〜秋葉さま。なんだかわたしがとっても化け物のように聞こえちゃいますよ〜?」

「・・・打たれ強さは軋間が諦める位じゃないの」

うん。なんだかとんでもない光景を見て、なんだかとんでもない話を聞いた気がする。

僕はそのままバックして食堂から出た。

 

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

部屋に戻って4,5分経った頃に扉がノックされた。

「はい」

「志貴さま。朝食の用意が調いました」

僕が扉を開けるとそこには翡翠が立っていた。

「先ほどは失礼いたしました。秋葉さまへの報告の最中だったので挨拶をする事も」

深々と頭を下げる翡翠を僕は慌てて止める。

「話の最中に入ってきた僕が悪いから!」

「如何なる時であっても志貴さまに対しての奉仕を尽くす。わたしはそう誓いました」

いや、そんな事言われても・・・

「えっと、朝ご飯食べに行こう?」

とりあえず、よく分からない話は放っておく事にした。

 

 

「おはようございます志貴さん。朝ご飯は和食にしちゃいましたけど大丈夫でしたか?」

食堂に入るとさっきの書類の山はなく、秋葉が食後の紅茶を飲んでいた。

「おはよう、琥珀さん。うん、僕和食好きなんだ。ありがとう」

「おはよう秋葉。ご飯、もう食べ終わっちゃったの?」

「おはようございます兄さん。ええ、少し前に済ませました」

少し前って・・・書類と格闘していたんじゃあ・・・・

そう言おうと思ったけど、口には出さなかった。

だって秋葉の死角で琥珀さんが『黙っているように』ってジェスチャーをしているから。

「・・・そっか。じゃあ僕朝ご飯食べるね」

残念ですが私は学校へ行く時間なので・・・」

今残念の部分がやけに力強かった気が・・・よっぽどお腹空いているのかな?

「もうそんな時間?」

首を傾げる僕に秋葉は困ったような顔をする。

「私の通う学校は遠いので・・・」

「え?そうなの?」

「ええ。ですからもう行かなければ間に合わないのです」

「そっか・・・行ってらっしゃい」

「はい。兄さんもちゃんと学校に行ってくださいね」

秋葉はそう言って食堂を後にした。

 

 

朝食を済まし、学校に行く支度を整えて下に降りる。

と、琥珀さんが僕を見てとても残念そうな顔をした。

「志貴さん。どうして女の子らしい格好をしないんですか?」

「僕、男だもん」

「でも生物学的には女の子ですよね?」

「でも僕、男だもん」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「し、志貴さんは男の子ですね」

「うん」

「はぁ・・・分かりました。わたしもこれ以上言うのは諦めます」

良かった。理解してくれたようだ。

男装の美少女ってのもアリですし

何かボソッて呟いていたけど僕は聞かなかった事にした。

ちょっとだけ、本当にちょっとだけ不機嫌になったけど。

「行ってらっしゃいませ。志貴さま」

「うんっ。行って来ます」

翡翠に見送られながら学校に向かう。

そう言えばこの時間に学校に向かうのって・・・早すぎる気がする。

まあいっか。学校が閉まっている訳じゃないし。

のんびりと坂道を降りる。

いつもと違う道。いつもと違う登校風景。

この風景をのんびり見るために歩く速度をおとす。

お弁当がちょっと重い。

でもなんだかピクニック気分になれる。

「そう言えば・・・朝秋葉が戦闘がどうって・・・・何かあったのかな」

分かるわけがないけど、立ち止まって気になってお屋敷の方を向k

「うわ・・・・・」

僕は何も見なかった事にして学校へと急いだ。