一時間目の授業をサボっただけに入ったら冷やかされるだろうな・・・

そんなことを思いながらそっと教室に入る。

幸いみんなに気付かれることなく席へとたどり着いた

と思ったら

「いくらボランティア精神が旺盛でも授業中も修繕活動をしているのは先生感心しないな」

「え?」

休み時間だというのに一時間目の教科担任が生徒に混じってポーカーをしていた。

無茶苦茶違和感がなかったのが逆に怖かった。

 

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

「朝、お前が裏門から入った姿が目撃されていたから出席扱いしたぞ」

「え?」

「勝負!ストレート!」

「フルハウス」

「OHノーッ!?・・・弓塚、アレが掛かると容赦ないな・・・・」

賭け事してるし・・・・教師としてそれはどうかと思うんだけど、弓塚さん強いなぁ・・・

担任は席を立ち、財布から千円を出すとテーブルの上に置いてフラフラと教室を出ていく。

「あー、遠野。学級担任が呼んでいたぞ」

「え?」

何だろう・・・引っ越しのことかな?

今から行くのは流石に拙いので二時間目の休み時間に行くことにした。

 

 

二時間目の授業が終わり、僕は急いで職員室に行く。

呼び出された理由は、やっぱり引っ越しについてだった。

学校区は変わらないし、何も無いと思ったのに大騒ぎしていたとのこと。

ただ住所を変えるだけなのに大袈裟だなぁ・・・

転入、転出なんてよくある事なのに。

住所が変わるらしいって事だけを伝え、職員室を出る。

「ふぅ・・・・」

職員室は、どうも苦手だなぁ

教室まで少し早足で急ぐ。

教室に戻ると有彦が幽鬼のような表情で机に突っ伏していた。

「・・・・・恐い。つーか不気味」

「遠野〜俺の悲しみをその胸でいやしてくれ〜」

ガタンと立ち上がり僕に向かってくる有彦。

「迎撃、6割で」

一歩前に進み、踏み出した足と同じ右の手を突き出す。

形は掌打。

そして衝撃と共にピンと伸ばされた僕の腕に有彦がぶつかり、同時に

「フッ!」

手首に回転をかけ、押し出す。

ぶつかって発動まで一秒以下。

「ブフッ!!」

呼吸もまともに出来なかったのか吹き出したまま教室の端まで吹き飛んだ。

「まったく・・・」

倒れた有彦にクラスの人達が群がる。

いつも通りダンスの時間らしい。

有彦を囲んでみんなで楽しそうに踊っている。

普通の人があんな攻撃を受けた後にこんな一斉攻撃を受けたら死にかねない。

───まぁ、有彦だから死なないけど。

それがクラス全員の見解だからこそ出来る荒技だ。

「何でショックを受けてたんだろう」

有彦にしては少しテンションが低かったな・・・・

「乾くんならえっと、シエル先輩って人に昼食をキャンセルされたから拗ねてるんだよ」

弓塚さんがそう教えてくれた。

「シエル先輩?・・・・・???」

誰だろう。

転校生かな?

「弓塚さん、シエル先輩って、誰?」

「わたしも分からないけど、美人な先輩らしいよ」

そう言ってフニャッと微笑む弓塚さん。

なんだかとても機嫌がいい。

さっき賭に勝ったからかな?

席に着くとすぐに授業開始のベルが鳴った。