校門をくぐって校内に入る。

と、

カーン、カカーン、カッコン

妙なテンポのトンカチの音がした。

「?」

何だろう。

カカーン、コンコン、カッコン

「??」

中庭の方からする。

何か作業していると思うんだけど、なんだか不思議な音だ。

僕は音のする方へ足を向けた。

 

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

中庭へと向かう。

「?」

中庭の庭木のところで女生徒が蹲って何か作業をしていた。

その人は一生懸命作業をしている。

見ると添え木や柵の一部が腐ったり壊れていた。

この人はきっとそれを直しているのだろう。

「あの、おはようございます。朝からお疲れさまです」

僕が挨拶すると、

「!?」

ビクリと大きく震え、その人が振り返った。

もの凄い驚き方だったから、僕も釣られて驚いた。

美人さんだけど、僕の知らない人だ。

それにリボンの色から上級生だと分かった。

「なっ、な・・・・・・」

「なっちゃん?」

「違います!―――――えっと、遠野さん?」

アレ?僕の名前、知ってる・・・?

「はい、遠野です。けど・・・・どちら様でしょうか?」

「えっと、わたしのこと、忘・・・・・・・・う゛っ」

ジッと僕の目を見詰めていたのに、急に顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「?」

う゛う゛っ・・・そんな曇り無い目で見られたら・・・

「??・・・どうかしましたか?」

急に体調が悪くなったとか?

僕はその人の顔をのぞき込む。

「体調が悪いなら保健室に・・・」

「ただ少し眩暈がしただけですから、本当に気にしないでください。それに、これを修理しなければ・・・」

その人はチラリと修理していたところを見る。

「ここは僕が修理しますから本当に保健室に行った方が良いと思いますよ?」

「えっ?」

キョトンとした顔で僕を見る。

「―――何か、変なこと言ったかな・・・・」

「いっ、いえっ」

「YEAH?」

「違いますっ!あの・・・あ、その・・・そんなに見詰められると」

「?」

お話をする時は相手の目を見なきゃ駄目じゃなかったかな・・・?

「うううっ・・・そんな純粋な目で見ないで下さい」

「??」

「うっううっ・・・・・・うわぁぁんっ!!」

その人は泣きながらどこかに行ってしまった。

「業務放棄かな・・・・」

トンカチとペンチと針金。そして添え木がポツンと残されていた。

「―――――そのままってのも可哀想だし・・・・」

やるしか、無いよね。

僕はため息を吐いて作業を始めた。

 

 

「ふぅ・・・・」

一通り危険な箇所がないか再チェックして一息吐いた。

何とか全部終わらせる事ができた。

工作は得意だし、こういった補修作業も得意だ。

でも、結構数があったから終わったすぐ後でベルが鳴った。

「結局一時間目はサボっちゃったな・・・・」

サボリなんて悪い子だなぁ。

とりあえず、1時限目の教科担任に謝ってこよう。

道具をまとめて用務員さんに返して職員室に向かう。

「ッと・・・・まずはカバンを置かないと・・・・」

うっかり忘れていた。

最低限カバンをおいていないと次の授業に影響する。

遅刻ならまだしも、今来た扱いは非常に拙い。

居たことくらいはアピールしなきゃ・・・

僕は急いで方向を変え、教室へと向かった。