「にゃぁぁ・・・」

何とかバスから降りてベンチに座る。

運転手さんが心配してくれていたみたいだけど僕は言葉を返す余裕すらなかった。

頭がのぼせてどうしようもない。

暑い。熱い。あつい・・・

思い切り胸元をはだけさせても上昇する体温は止められなくて。

「ぅぅぅ・・・・・・」

それに比例して混濁していく意識はどうしようもなくて・・・

「先生・・・お姉ちゃん・・・」

僕はそのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

気がつくと車に乗っていた。

「―――あ」

まだ頭はクラクラするけど風が頭を冷やしてくれてとても気持ちが良かった。

運転も静かでとても安心でき・・・・・・

「?!」

僕は慌てて運転手を見た。

「や」

「・・・・・・・・・」

お姉ちゃんだった。

「え?・・・何で?」

「何故とは心外だな。意識レベルが標準より下回ったから慌てて保護しに来たというのに」

お姉ちゃんは少しふて腐れた顔でそう言って僕の頭を軽く小突いた。

「おねーちゃんいにゃい・・・」

「ほら、着いたぞ」

車が止まる。

そこは僕が行こうとしていた時南医院だった。

「・・・どうしてここって分かったの?」

「体調不良で私の所に来る志貴ではないだろ。学校に提出するものがあるのなら尚更だ」

お姉ちゃんは少し不機嫌そうにそう言った。

「ありがとう、お姉ちゃん」

チュッ

僕は感謝の気持ちを込めてお姉ちゃんの頬にキスをした。

「っ───ここで待っておくから早く行って来い」

お姉ちゃんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

どうしてだろう・・・いつもしているのに・・・

不思議に思いながら僕は時南医院の戸を叩いた。

 

 

「ううむ・・・むぅ・・・・・・」

宗じいちゃんが聴診器を当てながらうんうん唸っている。

「───」

ここまで唸りながら診察されたことがなかったので僕は凄く怖かった。

「しっかしなぁ・・・お前さん、こんな凶器をもってよく無事でいられるな」

「?」

宗じいちゃんの言っている意味が分からない。

「あの、病気はそんなに重いの?」

「───ああ、イヤ、むぅ・・・志貴、お前さんが体をこわした原因は体内の気の乱れじゃ」

「気の乱れ?」

「うむ・・・何故かは知らぬがもの凄い生命の力が内側から溢れだしているようじゃ」

「・・・・・・」

───七夜のことかな・・・

「まぁ、この手のものは普通の医者じゃ分からぬな」

宗じいちゃんは胸を張ってそう言った。

「じゃあ、さっきの凶器って何?」

「グッ、ゴフッッ!」

あ、咽せた。

宗じいちゃんは咽せながらクルリと椅子を回転させる。

「さ、さあ・・・とりあえず次来るときまでにそれの対処法を用意しておく。じゃからしばらくは解熱剤でも飲んで安静にしておれ」

宋じいちゃんにそう言われて僕は仕方なく服を着た。

 

 

「ほれ、今は応急措置的なモノしか用意できんがこの薬を飲めばだいぶ楽になるじゃろうて」

帰ろうとしたとき、宗じいちゃんはそう言って僕に紙袋をくれた。

「ありがとう」

僕は紙袋を受け取る。

「ところで───朱鷺恵には会わんのか?」

「うん・・・変に心配されたら困るから」

「それが妥当じゃな、近いうちにまた来い。その時にはちゃんとした薬を用意しておいてやる」

「ありがとう宗じいちゃん」

僕は礼を言ってお姉ちゃんの車へと走った。