「ふわ・・・ぁ」
大きな欠伸をし、背伸びをした。
「昨日は何があったのかな・・・」
僕は机の上に置かれていたノートを手に取る。
丁寧な字で色々書かれていたけど・・・・・・
「う〜ん・・・・・・七夜格好いいから・・・」
そう言うしかなかった。
だって日誌にはストーカーが二人いると書かれていたから。
そして、
「やっぱり啓子さんは七夜でも相手にしたくないんだ・・・」
行動の締めくくりに『あの化け物に気を許すな』と書かれていた。
PANIC
「おはよ〜・・・・・・はぁ・・・」
「ウッス、遠野・・・何か疲れてないか?」
「ん〜・・・・・・うん。何か疲れがとれてないんだ。悪い夢でも見たのかな・・・」
「お前が悪夢?―――またツインテールの山姥に襲われる夢とかか?」
有彦の台詞に弓塚さんがビクリと反応した。
あ、そっか。弓塚さんもツインテールか・・・
そんなことを考えながら僕は席に着いた。
「夢は見てないんだけどね・・・昨日よりも調子が悪くて・・・」
「生理か?」
有彦の下らない台詞と同時に右のバックブロー左のバックブロー眉間への第二関節を折った突きを瞬時に繰り出す。
しかし有彦はそれをそれぞれブロックし、顔をしかめる。
「―――十分凶器だけどな・・・なんつーか・・・疲れているのか技に切れがないな」
そう言って両手をブラブラと振る。
結構痛かったようだ。
―――それにしても、すべて見切られるとは思わなかった・・・
ちょっぴり落ち込んでしまった。
「生理じゃないとすると・・・!!!」
突然有彦が劇画調になった。
「まさか・・・出来ちゃったとか?!」
「はぁ?」
「――――――外したか・・・まだそれを知る時期じゃなかったようだな」
きわめて怪しい言動を発しながら席に着く有彦。
よく分からないけど馬鹿にされている気がした。
そして・・・
「弓塚さん、速記の練習?」
「え?あ、うん・・・」
弓塚さんはノートにギッシリと衆議院式速記文字を書いていた。
「えぅぅ・・・調子悪いよぉ・・・」
午前最後の授業が終わり、僕は思いっきり机に突っ伏す。
途中それぞれの教科担任に「辛かったら休め」とか「出席にしておいてやるから」などとても暖かな言葉を受けた。
だからって甘えるわけにもいかないし・・・
しかし、どうしてこんなに調子が悪いんだろう・・・
七夜君に何かあったのかなぁ・・・
少し心配になってきた。
もしかしたら身体的に悪いのかも知れない。
―――仕方ないかな・・・
僕は仕方なく担任に断り、鞄を持って教室を出た。
「お?やっぱり帰るのか?」
帰る途中、パンをくわえたまま怠そうに歩く有彦に出くわしてしまった。
4時間目にいないと思ったら・・・買い食いしに出てたんだ・・・
「うん・・・かかりつけのお医者さんの所に行こうと思って・・・」
とりあえずそう答えて有彦の横を通り過ぎる。
「送っていこ「結構」―――あ、そ・・・」
場所も分からないのに送っていこうと言う阿呆を言葉で瞬殺し、僕は学校を後にした。
「―――流石アサシンの流れをくむ女ね・・・まさかここまで手こずるとは」
「最終的には話し合いで済んだのがせめてもの救いだが・・・しかし、正体不明の奴と言い、此奴と言い・・・志貴の周囲には強力なメンバーが集まるな・・・」
「言えてる。このまま行くと教会と協会が動いたり」
「仕舞には人外のモノまで呼び寄せたりしてな・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばし、時間が止まった。
「――――――じょ、冗談に聞こえなくなってきたわ」
「―――考えないでおこう・・・」
二人は引きつった笑いを浮かべ、自分たちのすべき仕事に戻った。