「―――え?」

青子と橙子以外の全員が驚きの声をあげた。

「最近色々と面倒な事件が起きてい・・・・・どうしたの?!」

青子は突然俯いた志貴に驚く。

「・・・・・僕、もういらない?」

「「はぁっ?!」」

今度は橙子達が驚きの声をあげる番だった。

「僕、もう必要ない?邪魔?」

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

「誰もそんなことは言っていないぞ?!私は心から志貴のことを愛しているんだぞ!?」

「そうよ!志貴の首に鎖を付けて絶対に離さないようにしたいくらい大切なのに!」

志貴の台詞に狼狽した二人はトンデモナイことを口走る。

「でも・・・・」

「最近、色々と物騒でね。死徒がこの界隈にいると言う未確認情報も出ているくらいだからな」

「死徒?」

「所長、死徒とは・・・・」

「言ってしまえばヴァンパイアだ。そして、その中でも特に危険視されている奴等を27の階級に分け、死徒27祖と呼んでいる」

「因みに魔道元帥もその中に入っているのよ」

「じゃあ、吸血鬼?」

「ま、「気にくわない」と言う理由であちら側のトップとやり合った末の相討ちでそうなったって聞いたけど」

「何というか・・・豪快な人だったんだ」

「しかも志貴と居ると吸血衝動を忘れて溺愛するし」

「あう・・・だって、優しいお爺ちゃんって感じだから・・・」

「本気で良いお爺さんになっていたわね」

「あれ、月一単位で手紙を送ってきたりするからタチ悪いわよ」

大きくため息を吐く蒼崎姉妹。

そしてその横で幹也と式がボソリと

「「二人がかりでロンドンに押し戻したくせに」」

そう呟いた。

 

 

「あのぅ・・・・」

「ダメ。志貴が恐い事言ったから離さない」

青子は志貴をしっかりと抱きしめて離そうとしない。

「むにゅぅぅぅ・・・・」

志貴は小さく呻くが、青子はやはり離さない

「志貴。私は遠くに行っている時、いつも志貴は今何をしているのかなってずっと考えているのよ・・・」

「ご免なさい・・・」

「い・や。ご免なさいじゃ済まないくらい深く傷付いたんだから」

青子はごねる。

「あの・・・先生?」

「そうねぇ・・・キスしてくれたら許しちゃうかも」

そう言ってニンマリと笑った青子だったが、

「ンッ・・・・・・チュッ・・・・・・っ、先生。これで良い?」

志貴は青子の台詞と同時に青子の下唇を唇で啄み、軽く含むようなキスすると青子の耳元で囁いた。

「・・・・・・え?・・・・・・・・・あ・・・」

驚きのあまり声も出ない青子。

「駄目・・・・なの?」

青子にしなだれかかり、甘えた声をだす志貴。

その様子に青子は思考を停止させた。

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

そしてそれを見ていた三人も完全に固まっていた。

 

 

「あちゃぁ・・・もう、換えのタオル無いな」

いち早く回復した幹也が真っ赤に染まったタオルを見ながらそう呟く。

「妖艶なしーちゃんって・・・イイ」

「心臓が・・・・落ち着かない・・・・」

真っ赤に染まったタオルを口元にあてながら式と橙子がそう呟く。

青子に至っては口元を抑えたまま固まった状態が続いていた。

「どこでそんな事を覚えたのか分からないけど、人前でそんな事をしたらこんな流血騒ぎじゃ済まないからな?」

志貴に忠告する幹也だったが、

「幹也さん、鼻血鼻血」

鼻にティッシュを詰め込んだ状態の幹也だけに、お兄さんキャラとしての威厳は皆無だった。

 

 

─────この騒ぎが沈静化するまで、それから更に2時間を費やした────