「今日はあの妹も来てるぞ」

「え?先生も?」

驚く志貴に式は溜め息混じりで頷く。

「ああ。かなりやさぐれていたから気をつけろよ」

「え〜?助けてくれないの?」

「う゛・・・」

顔を真っ赤にして呻く式に志貴はしなだれかかる。

「ね〜ぇ〜助けてくれないの〜?」

「あ、あぅ・・・しーちゃん・・・わざとでもそんな声を出さないでくれ・・・」

そう言いながらも式の手は志貴の頭を撫でていた。

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

「・・・お酒でも飲ませたの?」

出迎えた幹也は羨ましそうに二人を見る。

「いや、その・・・」

顔を真っ赤にしたまましどろもどろになっている式に志貴は更に抱きつく。

「ダブルシキだよ〜」

「分かったからあまりからかわないでくれ・・・あ、あうっ・・・」

式は志貴に抱き付かれたまま、今にもショートしそうな程顔を真っ赤にしてフラフラと事務所へ向かう。

「やるなぁ志貴。―――式も羨ましいなぁ」

にんまり笑う幹也と、

「式様・・・人並みに良い感情をお持ちになりましたね・・・」

車の前に立ちソッと目元をハンカチで押さえる秋隆がいた。

 

 

「わっ、こら・・・そんなにひっつかれるとはだける」

「少し前にはそんなこと気にしなかったのに・・・」

「うっ・・・しーちゃん。意地悪して楽しいか?」

ワイワイ言い合いながら事務所のドアを開けると、

「志貴〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

青子が志貴目掛けて跳んできた。

「チッ!」

式が素早くナイフを取り出し、跳んでくる青子を薙ぐ。

しかし、

「フッ!」

青子は空中で何か怪しげなボールを形成し、二段跳びすることによって薙ぎを避けた。

「―――」

本気でやり合っても勝てる気がしない相手だけに式は追撃をしない。

「先生。今日は式さんの日なんだよ」

「え?私の日は・・・・まさか時差で昨日?!」

「うん。時差って言うよりも先生の記憶違いかな」

「そんな・・・騙したなあの変態おさげジジイ・・・」

「いや、ゼルレッチさんはそんなキャラ違う気が・・・」

「見掛けに騙されては駄目よ!極悪非道冷酷無比で変態なんだから!」

一人憤慨する青子に橙子が書類を見ながら、

「見掛けからしてそれっぽいと思うが・・・まあ、一般人から見た魔術師は大概そう捉えられるだろうな」

詰まらなさそうにそう言った。

「じゃあ魔術師である橙子は極悪非道で冷酷無比で変態なのだな?」

式の台詞に、

「お姉ちゃんは優しくって格好良くって暖かいんだよ」

志貴が式の袖をキュッと握ってそう言った。

その目は『どうしてそんな酷い事を言うの?』と訴えていた。

「・・・・そうだな。志貴。ちょっとからかっただけだ」

志貴の視線に式は小さくため息を吐くとそう言って志貴の頭を撫でた。

「式さんも温かくて優しくって格好良くって好きだよ」

志貴は式に抱き付くとスリスリと胸元に顔を埋める。

「あうっ・・・・しーちゃんさっきからずっとそんな調子で・・・・」

「今日はあんなコトしたからずっとこんな風にしておくの」

悪戯っぽくクスリと志貴は笑い、式の首筋にキスをする。

「「うらやましい・・・・」」

その様子を見て青子と橙子がボソリとそう呟きゴクリと生唾を呑み込んだ。

そして、

「───まあ、それはいいとして志貴。これから夜間外出は控えて欲しいんだけど」

青子がそう話を切りだした。