放課後、とりあえず有彦に聞いたみたら
「はぁ?ここは元々進学校だったぞ」
「へぇ・・・そうだったんだ」
恐ろしい事に本当に進学校だった。
「・・・これだから天然で頭良い奴はよぉ・・・」
焼きそばパンをかじりながら有彦は僕に愚痴った。
「俺はどうでも良いんだけどよ、うちの姉貴がお前と同じクラスじゃないなら死んで詫びろなんて恐ろしいことヌカスんで俺は試験だけは必死にやっているんだぞ?」
「へぇ・・・でも何でだろ」
「・・・・・・・・・・・天然って怖いな。そう感じないか?弓塚」
「わっ、わたしはそんな遠野くんも好きだから」
「?」
今日も平和な学園生活でした。
PANIC
「うわぁ・・・これは濡れるよ・・・」
僕は教室の窓からのんびりと外を見る。
もう夕方前なだけに人の姿もまばらだった。
「う〜ん・・・お姉ちゃん来るって言っていたのに」
「え?遠野くんにお姉ちゃん居たの?」
弓塚さんが驚いたように聞いてきた。
「違うよ。僕がお姉ちゃんって呼んでいるだけ。少し変わった人だけどとても優しいんだ」
「うおっ・・・何かスッげぇ車が横付けしているぜ」
有彦がやたら驚いた声を出すので僕も弓塚さんも一緒にその方向を見た。
「・・・・・・・・・」
黒塗りの高級車。
そしてそこから降りてきたのは怖いくらいの無表情。着物にジャケットを羽織っている和洋折衷っぽい格好の人───式さんだった。
「あ、式さんが来たんだ」
「シキ?同じ名前か?」
「うん。じゃ、また明日」
僕はそう言ってカバンを取って走った。
「しかし・・・あの式って人、女性か?」
「多分そうだと思うけど・・・すっごい凛々しくって遠野くんとお似合い・・・」
ホウッと溜め息を吐く弓塚に食い入るように見詰める有彦。
そんな中校庭を志貴が走る。
と、
「なっ?!」
式が走ってきた志貴目掛けて傘を投げつけ、志貴の視界を奪った瞬間に自身はナイフを構えた。
「っ!!」
弓塚は慌ててカバンを取り出すと何かを組み立てた。
「やれ弓塚。俺は廊下で見張りをしているぞ」
有彦は弓塚の行動に驚いた様子もなくすぐに廊下へと走った。
「志貴君・・・志貴君がっ!」
僅か数アクションで組み立てを終えると窓を開けて式目掛けて数発放つ。
それは恐ろしいまでの正確さで式の額をマークしていた。
が、しかし式はそれを知っていたかのように避けると弓塚を見る。
「・・・・・・」
弓塚は発砲直後に体を伏せて姿が見えないようにしていたために式がその姿を見ることはなかった。
「やはり顔を見ることは出来なかったか・・しかし女性とは」
式は険しい表情でその教室を睨んでいたが、
「もぉ・・・式さんの意地悪」
すぐ側から志貴の少し怒ったような声を聞き慌てる。
「や、ああ・・・スマン・・・」
「もぉ・・・僕を助けてくれている人だったら心配しなくて良いと思うから。ね?」
「あ、うん。そうだな」
式をのぞき込むように見る志貴。
「・・・何で顔赤いの?」
「あ、いや、その・・・急ごう。あまり濡れると風邪を引く」
「待たせたら悪いもんね」
見当違いのことを言いながら志貴は式の手を引いて車へと向かった。