お姉さんは色々なコトを知っていた。
僕の話もきちんと聞いてくれた。
青子お姉ちゃんというとお姉ちゃんは悩みながらも怒る。
何でも「萌えがまだ少ない」とか・・・
お姉ちゃんは呼び捨てで言うか名前の前に「マイハニー」を付けるように言われた。
けど、僕はお姉ちゃんのことをそんけいしているからそんなふざけた言い方はしたくなかった。
PANIC
僕は一生懸命お姉ちゃんの呼び方を考えた。
そして思いついたのは二つの呼び方。
それは「先生」と「ハカセ」だった。
どちらも色々なことを知っていそうだったから思いついたけど、「ハカセ」の方は何かとても嫌な予感がしたから言わないことにした。
「お姉ちゃん」
「何?」
「あのね、えっと・・・お姉ちゃんのこと『先生』って呼んでもいい?」
突然お姉ちゃんが揺れた。
「お姉ちゃんとの禁断のプレイから先生との・・・志貴・・君はどこまでも私好みね」
お姉ちゃんが何かブツブツと呟いている。
「先生って呼んでもOKよ志貴・・・っと、用事があるから私はもう行くわね」
先生はそう言うと立ち上がり、服に付いた草を払う。
「え・・・・・・」
僕は急に心細くなった。
僕には行くところがない。又、病院に戻って怖い目のお医者さん達から検査を受けるのかと思うととても不安になった。
「そんな捨てられた子犬のような顔をしない。また明日、ここにいらっしゃい」
先生の台詞に僕の顔が熱くなる感じがした。
「はいっ!」
僕は元気よく返事すると立ち上がり、病院に帰ることにした。
明日もまた先生に会えるんだから───
「さて・・・あの子の言っていることが真実だということは大体分かった。しかし、しまったなぁ・・・魔眼殺しは姉貴の所か・・・」
青子はため息を吐き、いかにして姉から魔眼殺しを奪うか思案していた。
「話して通じる仲じゃないだけに厄介ね・・・」
こめかみに指を強く押し当て再びため息を吐く。
「仕方ない・・・ちょっとした『貢ぎ物』と訳を話してみるか・・・」
そう呟くとトランクの中からアンティーク物のカメラを取りだし、ニヤリと笑う。
「志貴、これも君の為なのよ・・・決して私の趣味とか保存用にベストアングルからの盗撮とかじゃないから・・・」
とてつもなく言い訳にしか聞こえない台詞だったが、青子の中ではこの台詞は立派に正当性を持っているようだった。
「ふう・・・」
僕は少し熱めのシャワーを浴びて一息吐く。
「僕、これでも男の子だから一人で入れるのに・・・」
僕がシャワーを浴びると言って1時間。
その間お医者さんや看護婦さんが一緒に入ると言い張っていた。
お医者さんは「身体の変化について何かあるかもしれない」と言っていたし、看護婦さんは「何かあったら大変だから」と言っていた。
何よりも怖かったのはみんなの目が血走っていたことだった。
「僕のこと、実験体か何かだと思っているんだろうな・・・」
ちょっぴり、悲しくなった。
僕の体がこんなになって・・・僕の目も変になって・・・
このまま元に戻らなかったらどうしよう・・・
また、少し泣きたくなった。
「我慢よ・・・このハンターチャ・・・シャッターチャンスを逃さないためにも・・・」
どこかで先生の声が聞こえた気がした。
「せんせぇ・・・明日・・・会えるよね・・・」
「ぐっ!!・・・やるわね・・・志貴、自分の血を見るのは久しぶりだわ・・・でもなんか本望って感じよ・・・脳内に完全記憶完了したし・・・」
───先生に会いたいからこんな声が聞こえるんだろうな・・・
僕はそう納得してセッケンを泡立てた。