あれから数日が経過した。

けれどもやっぱり原因不明らしい。

遺伝子検査というものまでするとお医者さんは言っていた。

僕も早く元に戻りたいから何も言わなかった。

一番不思議だったのは胸にガラスの破片が刺さったと教えてもらったのに傷がなかったこと───空色になってしまったこの目だった。

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

ある日僕は病院を抜け出した。

その日の検査は終わって暇だったし、お医者さん達の怖い目がいやだったから。

だから僕は病院から抜け出した。

走って

走って

途中息切れして歩いて

走って

走った

気が付くと僕は小高い丘の上に立っていた。

病院はまだ見える。

あんなに走ったのに

胸が痛くなった。

頭もズキズキと痛み始めた。

「く───あ・・・」

僕はその痛みに耐えきれずに踞った。

誰もいない草むらの中、

苦しくても助けを呼べなくて

僕はただ痛さと苦しさを必死に堪えることしかできなかった。

その時風が吹いて───

「危ないじゃないの。君、そんなところで寝ていると蹴られるわよ」

唐突に

僕の背後から女の人の声がした。

「ぅっく───ご、っ・・・ゴメン・・・なさい・・・」

僕は痛みに顔を顰めながら必死にその人の邪魔にならないように移動した。

「あらら・・・大丈夫・・・?」

その人は僕の肩を掴むと抱き起こして対面に姿勢を移動させる。

「?」

どうしてだろう。

抱き起こしてくれたお姉さんの

顔が

とても近く───

チュッ

「!!!!????」

ナニガオコッタンダロウ

頭が真っ白になってしまった。

「―――私にそんな趣味があるとは思え無かったのに・・・まさか少女に・・・」

女の人は僕にキスをしておきながらショックを受けたような顔をしている。

僕の方がショックだったのに・・・

「――――――まぁ、いいわ。」

女の人は暫く僕の顔を見ると、

また、僕にキスをした。

「!!!」

「ああもうっ!その潤んだ瞳を見るだけでお姉さんクラクラきちゃうじゃないの!」

いつの間にか痛みも苦しさも治まっていた。

やっぱり驚きすぎて忘れてしまったのかな・・・でもこのお姉さんに言わなきゃ

「あ、あの・・・」

「何?」

「僕、男の子なんですけど・・・」

「へ?・・・・・・冗談を言っちゃいけないわ。どこをどう見ても女の子よ?」

「よく分からないんですけど・・・僕、女の子になっちゃったらしいです」

―――どうして、このお姉さんはそんなに嬉しそうな顔をするんだろう・・・

「本当は男の子・・・よかった・・・イヤでもこの子はこねくり回したくなる程可愛いわ・・・」

―――何か、とても聞いてはいけない気がしてきた。

「しかも魔眼付き・・・これはもう私のモノにするしか!」

―――しかも逃げなきゃまずいみたい・・・

僕はそっと後ろ向きに歩き始める。

「ねえ君・・・どうして逃げるの?」

「考え事していたみたいだからじゃましないようにって・・・」

「良いのよ。それより君は何か特殊なモノが見えたり特殊なことが出来たりしない?」

「!!!???」

「当たりか・・・リーチね」

―――何がリーチなんだろう

でもこのお姉さんはどうしてこの目のことを知っているんだろう・・・

僕の頭の中はその疑問で一杯だった。

「そのキョトンとした顔もたまらないわね・・・」

―――なんか・・・すっごくこのお姉さん変・・・

それがその時の僕の先生に対する印象だった。