「はぁぁぁ・・・志貴君は今日もラブリーだよぉ・・・」

今日もわたしは遠くから志貴君を見ていた。

男の子も女の子も関係なく引き寄せているのに本人は全く気付いていない。

そしてとても優しくて人を疑わないからきっと毒牙にかかっても志貴君はいつもと変わらない笑顔を周りに向けると思う。

志貴君はそんな人だから。

だから―――

わたしが志貴君に近付く悪い虫を粉砕するってあの時誓ったの。

 

 

 

 

 

PANIC

 

 

 

 

 

「うみぃ〜〜」

志貴君がため息を吐きながら下校する。

わたしはいつも通り影からそれを見守っていたけど・・・

「?!」

遠くから志貴君を見る気配をわたしは感じ取った。

志貴君を守ると決めて以来、目覚めた得意能力―――って言うべきなのかな・・・それがわたしに告げた。

―――奴らは志貴君を攫おうとしている―――

って。

だからわたしはその内なる声に従って志貴君より先回りしてそこへ向かった。

「いいか、絶対に傷付けるんじゃないぞ!!」

「「「了解!!」」」

いた。

わたしは破壊衝動を堪えずに真っ直ぐその男達に迫った。

 

 

「何だ?―――!?」

有無を言わせぬ速さで向かってくる女子中学生を目にした。

その瞬間、

ドグッッ

「ぐっ?!」

右脇腹を下から掌打で打ち上げられ、その場に崩れた。

「っ!!」

男達は素早く動く。

そこでようやく敵と判断したのだった。

しかしそれはあまりにも遅すぎた。

常に死角を取りながら移動するそれに残った男三人は死角を無くすべく固まって周囲を警戒する。

「志貴君の平穏を邪魔する奴は―――」

キィィンッ

「「「!!!」」」

車側からした音に男達は一斉にその方向を見た。

「ぐぉ・・・」

その隙をつくように一人倒され、驚いて振り返る前に

「おふっっ・・・がぁ・・・」

二人倒された。

「志貴君の平穏な日常を邪魔する奴はわたしに伐たれて死んじゃえ」

ギンッッ

「!!!」

距離、およそ二メートル。

男は一か八か相手が踏み込んだ際に足を払い、一撃を入れようと考えていた。

構える男に弓塚は軽い一歩を踏み出す。

ローキック

踏み込んできた弓塚の足目掛けて素早い蹴りが繰り出された。

だが、

ヒュンッ

そこには足はなかった。そして―――

ガッッ

ローキックを繰り出した足の脛目掛けて鋭い蹴りが繰り出された。

「がああああっっ!!」

「猫足立ちは相手の攻撃にあわせて動けるの・・・ばいばい・・・」

その言葉が男が意識を失う直前に聞いた台詞だった。

 

 

「ふぅ・・・梱包も上手くなっちゃった・・・」

わたしは車の後部座席に全員詰め込んで車を道の端に寄せた。

「これって・・・超法規的措置とか言うんだったよね・・・」

運転席のシートを倒す。

後ろで何か呻き声が聞こえているけど気にしない。

「ぁ、志貴君が来た」

わたしは身を倒して隠れる。

「うみぃ・・・帰ったら先生の所に行こう・・・」

志貴君が何かぼやいている・・・わぁぁ・・・こんな近くで見れるなんて凄く新鮮だよぉ・・・

わたしは思わず意識を失いかけた。

もし志貴君に見つめられたら・・・わたし死んじゃうかも・・・

志貴君の気配が消えたのを確認してわたしは車から降りる。

「ン、きっともう悪い奴はいない」

このまま行ったらすぐに志貴君のお家。

向うから先はわたしと同等かそれ以上の人がいる。

だからきっと大丈夫。

それに・・・

「―――お家までついていったらストーカーみたいだから・・・」

ちょっとため息。

そしてわたしもお家に帰る。

それがわたしの日常だから―――